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インタビュー:ネット配信契約でファン拡大=Jリーグチェアマン

ロイター 9月2日(金)19時11分配信

[東京 2日 ロイター] - サッカーファン固定化などで収益が伸び悩んでいるJリーグが、ネット事業を軸にした新たなマーケティング戦略に取り組み始めた。

国際的なスポーツ配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」を展開する英パフォーム・グループと大型放映権契約を締結、スマホなどで安くサッカーを観戦できるようにすることで新たなファンの獲得を目指す。また、アジア展開をにらみ、現地でのサッカー人材育成も強化する。

Jリーグの村井満チェアマンはロイターとのインタビューで、ネットを通じて気軽に試合を楽しめる環境を作る必要性を強調、ダ・ゾーンとの提携について「スポーツを愛する人にJリーグを見てもらう機会を劇的に増やせる」との期待を示した。

インタビューの要旨は以下の通り。

――Jリーグへの関心低下は何が原因なのか。

「スポーツ界共通の問題では、2008年のリーマン危機が挙げられる。所得が伸び悩み、消費が停滞。エンターテインメントの多様化も進む中で、入場者数が足踏みした。サッカー固有の問題では富を持つクラブはヨーロッパ選抜のようなチームを持てるようになり、それが巨額の放映権につながり、日本人選手も流れていくという構造が生まれた。その結果、Jリーグで活躍するスター選手が減ってしまった」

――どう打開するのか。

「新規にファンとなる人たちが少ないため、ファン層が高齢化している。もっと手軽に見てもらえる機会を作るというのがパフォームとの提携の背景にある。ダ・ゾーンはJリーグだけではなく、さまざまなスポーツコンテンツが非常に安い値段で視聴できる。スポーツを愛する人にJリーグを見てもらう機会を劇的に増やせる」

「今回の契約では、無料のテレビ放送にどれだけ露出するかを重視した。そのため初めて著作権をJリーグが持った。現在、Jクラブは38都道府県にあるが、これによりローカルテレビ局などに安価で素材を提供できるようになる。テレビでJリーグの試合を見て、こんなに面白いのであればダ・ゾーンを契約しようという好循環を作りたい。いま20代ではテレビとスマホの視聴時間が逆転している。さまざまなメディアにわれわれの素材が流れていくことは極めて大事だ」

――10年2100億円の放映権は高いとの声も聞かれるが。

「そうは思わない。パフォームはJリーグ以外のスポーツを愛する人の視聴機会を増やすという戦略もあり、Jリーグの過去の取引価格と比較するのは正しくない。プレミアリーグに入る年間放映権は3000億円と言われており、中国も5年で1200─1300億円だ。今回の契約が突出して高いわけではない」

――営業収益を増やすには海外、とりわけアジアとの連携強化が不可欠だ。

「パフォームに売ったのは日本国内の放映権で、海外の放映権は19年まで販売しており、20年に契約更新となる。次の契約更新までにさらにJリーグの価値を高めていく」

「アジアで観てもらうには、自国の選手が活躍することが重要だ。たとえば水戸ホーリーホックにはグエン・コン・フオンというベトナムのメッシと言われる選手がいて、ベトナムでは国を挙げての大騒ぎになっている。ベトナムから茨城空港にチャーター便が就航して、スタジアムに人が来るようになった」

「そういう選手は突然出てくるわけではない。たとえばセレッソ大阪はアジアでヤンマーサッカー教室を開いている。農業国が多いアジアでヤンマーの認知度を上げながら、良い選手を発掘したりしている。こうした地道な活動がJリーグに対するマインドシェアの上昇にもつながる」

――2100億円の使い方は。

「基本的にクラブに還元していく。どう使うかはクラブの置かれている状況や戦略で違ってくるので、そこはクラブの判断に委ねたい」

――スタジアム観戦は敷居が高い。

「プレミアリーグでは、高所得者層向けのホスピタリティゾーンが用意されていて、そこでは試合前にカクテルやワインを楽しむことができる。一方で若い人やサポーター向けの席もあり、その間のセキュリティはしっかりしている。チケット単価を上げて、ホスピタリティゾーンを用意して、最高のサービスを提供している。1日サッカーを楽しめるゾーンができたおかげで、ずいぶんと環境が変わった」

――2020年東京オリンピックに向けて。

「オリンピックはアンダー23。2020年で23歳ということは来年20歳だ。若手の出場機会をどう増やしていくか、いまJリーグも試行錯誤している。そういう世代に国際試合を経験させることは非常に大事。協会と協力しながらやっていく」

*インタビューは8月31日に行いました。

(志田義寧 編集:北松克朗)

最終更新:9月2日(金)19時11分

ロイター