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リオ五輪=ラファエラを世界の頂点に=寄り添った指導者・藤井裕子=(上)=第一印象は「練習嫌い、異端」

ニッケイ新聞 9月2日(金)2時21分配信

<ブラジル邦字紙「ニッケイ新聞」1日付け>

 【リオ発】リオ五輪の柔道女子57キロ級で、ブラジルに大会初の金メダルをもたらしたラファエラ・シルバ(24)には、強力な助っ人日本人コーチの存在があった。3年前から代表チームに帯同していた藤井裕子さん(33、愛知、旧姓・中野)が共に寄り添い歩んできたのだ。ファベーラ出身という異色の彼女とどのように接し、どうやって世界の頂点に導いたのだろうか。(小倉祐貴記者)

 幼少期から柔道を始めた藤井さんは、若くして指導者に転向した。日本の大学院を卒業後、英国のバース大学へ語学留学。同校では指導者補佐として活動を始めた。その指導が目に留まり、2010年から英国代表チームの指導者に招聘された。

 地元開催となるロンドン五輪を、2年後に控えた中での大役就任だ。本番で英国代表選手は、実に12年ぶりのメダル(銀)を獲得した。

 「現実は厳しく獲れるとは思わなかった。だから達成感があった」。ブラジルからは、そんな快挙を達成する以前から関心が寄せられていたという。五輪を引き継ぐ英ブラジル両国という縁もあって、両地での合宿などを通じ当地から声が掛かった。

 要請したのはブラジル男子代表の篠原ルイス準一監督。その理由は五輪直前になって明かされたのだが、「力任せの守備ではなく、相手の力を上手く受け流し、いなすような守り方の伝授」を期待されたという。そんな思いはつゆ知らず、依頼に快諾し、本番3年前からチームに帯同することになった。

 今回金メダルを獲得したラファエラは、藤井さんの愛弟子とも言える存在。ともにリオを拠点としたことから、代表チームの活動期間以外も一緒にいる機会が多く、彼女への思い入れは強かったようだ。

 12年末、二人は初めて顔を合わせる。本格帯同を前に設けられた1カ月間のお試し指導期間でのことだった。第一印象は「練習が嫌いなんだな」というもの。道場の隅にいたり、逃げ出すことも度々。先鋭が集る代表チームでは異端な存在だったという。ファベーラ出身という出生も影響してか、自由気ままな行動が目立ったようだ。

 学生に例えれば先生が扱いに困るような、いわゆる問題児的側面があった。「押し付けては反抗心が芽生える」。そう思った藤井さんは、「彼女には隣に寄り添うようなコーチが必要かも」と直感した。そうして彼女と二人三脚の日々が始まる。

 ラファエラへの注視を続けると、「隅に隠れながらもコーチの話をコソッと聞いたりする。ただ単に練習が嫌いなわけじゃない。本当は柔道が大好きな選手なんだな」と気付いた。その瞬間から、藤井さんも彼女に特別な関心を抱くようになった。(つづく)

□関連コラム□大耳小耳

 ブラジル柔道代表に、リオ五輪までの臨時コーチとして加わった藤井裕子さん。主に生活面を支えるのは亭主の陽樹さんだ(1月21日付既報)。なんでも日本製のヨーグルトメーカーを活用し、味噌や納豆などを手作りしているそう。移住者顔負けの自炊能力を持つことに驚きだ。裕子さんもきっと、その日本食パワーで頑張れたに違いない!?

最終更新:9月2日(金)2時21分

ニッケイ新聞