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フランスで人気の日本アニメ 「グレンラガン」の魅力とフランス人にとっての「日本」

ZUU online 9月3日(土)16時10分配信

フランスはおそらく東アジア以外の地域で最も日本のアニメを評価している国だ。否、もしかしたら日本の次にアニメファンが多いとさえいえるかもしれない。

日本のアニメの人気はインターネットの普及に呼応して徐々に世界中に広がっているが、フランスでは早くも80年代前後から日本アニメの流行がはじまっており、今でもヨーロッパではフランスの日本びいきは群を抜いている。

とはいえ、やはりフランスはあくまでヨーロッパの国。フランス人が一般的に日本人と同じあるいは類似した感性を持っているとは限らない。また翻訳にかかる時間などの製作上の都合によって、同時期で何が人気になるかは異なる。

よって当然フランスで人気の日本アニメは日本で人気のアニメとは違うのだが、その違いを比較してみることでフランス人が日本のアニメに何を求めているのかを探ってみたい。英国在住のライターによる分析。

■ネット上のランキングでは?

あるフランスのWebサイトウェブサイトによると、今フランス語圏で最も人気のある日本のアニメトップ100の頂点にあるのは「新世紀エヴァンゲリオン」だ。第2位は「天元突破グレンラガン」、第3位は「STEINS;GATEシュタインズ・ゲート」となっている。

日本人による日本アニメの評価としては、Google検索最上位のWebサイトのランキングによれば第1位は「コードギアス反逆のルルーシュ」、第2位は「銀河英雄伝説」、第3位は「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」で、フランス語圏でトップ3のものはシュタインズ・ゲートが第5位、エヴァンゲリオンは第10位、グレンラガンは第26位となっている。

こうしてみると、フランスで特に評価されているアニメが日本ではまったく人気がないというほどの違いはない。フランスのトップ3は日本でもある程度評価されているものばかりで、すべて日本のランキングでもトップ30位以内に入っている。

ただ日仏のアニメ観の違いという視点で見たとき、最も眼につくのは「グレンラガン」の評価の差異であろう。

日本でも高評価を受けてはいるが他の名作を圧倒するほど評価されているわけではない「グレンラガン」が、フランスでは最高評価の「エヴァンゲリオン」の次に評価されており、アニメファンであれば誰もが知る名作とされているのだ。実際筆者の知るフランス人の間でもグレンラガンの知名度は高い。

従って、ここではトップのエヴァンゲリオンや日本でも高い評価を受けているシュタインズ・ゲートではなく、グレンラガンに焦点をあてることでフランス人にとっての“animation japonaise ”(日本アニメ)が何であるかを探ることにしたい。

■「グレンラガン」とは?

まず、そもそも「天元突破グレンラガン」とはどういうアニメなのかを簡単に説明しよう。これはGAINAXにより製作され2007年に放送されたロボットアニメなのだが、フィクションというよりはSF的な設定となっている。

「グレンラガン」の世界では、人類は遠い過去に巨大ロボットを操縦する異性物に地上を奪われ、地下での生活を余儀なくされている。何世代もの間地下でのみ生活してきた人間はいつしか「地上」の実在性さえをも疑うようになってしまう。そこで主人公たちが地下へと侵入してきた巨大ロボットを偶然埋まっていたロボットを使って撃退し、地上へ出るところから物語がはじまる。

地上では空想的といえるほど高度なロボット技術が発達している「未来」において、地下の世界では「未来的」な技術どころか「ドリル」以外の技術がほとんど消失しており、人々は「野生の思考」で知られるレヴィ=ストロースの研究対象になりそうな未開的生活に甘んじている。

この悲観的未来予想は、人間の文化は環境に規定されるというマルクス主義的な図式に説得力を与えるような風刺的側面がある。だが、それはこのアニメの主眼ではない。むしろ、この「下部構造」の現実を強く意志で乗り越え、変えていこうとする熱い主人公達を描くことがこのアニメの醍醐味である。

■「グレンラガン」の魅力とフランス人にとっての「日本」

前述の通り、「グレンラガン」の魅力は何と言っても昭和期のアニメによく見られたような日本的な「熱さ」である。

どれほど絶望的な状態であろうと、可能性を理屈抜きで信じて前へ進んでいこうとする単純さ。それは時と場合によって愚かさにも強さにも見えるが、独特の魅力を持つ。

だが、これは明らかに「理性」に絶対の価値をおいてきた西欧の人々にとって極めて異質なものである。少なくとも「カミナ」のような「昭和のヒーロー」的な熱さを持つ人は西洋ではとても珍しい。アメリカのスーパーヒーローでさえどこかに冷静さや理性的判断を持っているのが普通だ。

それでも「昭和のヒーロー」をフランス人は「かっこいい」と思い、かつそこにヨーロッパにはない価値を持つ「日本」を見るのだ。

だが、現代の日本人にとっての「かっこよさ」が日本でのランキング1位であるコードギアスのルルーシュのような冷静さと秘められた熱情であるとしたら、「カミナ」型のかっこよさは古いと感じる人が多いかもしれない。

確かにルルーシュのような文字通りに「クール」な人というのも現代日本特有の文化背景が生み出す人物像には違いない。カミナ型が太陽でルルーシュ型は月であるとすれば、太陽よりも月に、光よりも影に感情移入するのは謙譲を美徳とする日本人としてむしろ自然であると思う。

だがフランス人が見たい「日本」とは「太陽」としての日本、すなわちle Soleil Levant (昇る太陽)なのではないか。日本のアニメに熱狂するフランス人は、理性に凝り固まってしまったヨーロッパを照らす光を「日本」に求めているのかもしれない。(ZUU online 編集部)

最終更新:9月3日(土)16時10分

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