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黒沢清と浅野忠信が明かす、ハリウッドやフランスの映画制作舞台裏

映画ナタリー 9月3日(土)15時7分配信

本日9月3日、黒沢清と浅野忠信登壇のトークイベントが東京・アップル銀座にて行われた。

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監督作「ダゲレオタイプの女」が10月15日に公開を控える黒沢と、主演を務めた「淵に立つ」が10月8日に封切られる浅野。本イベントでは「世界を舞台に活躍する表現者になろう」をテーマに、「アカルイミライ」「岸辺の旅」でタッグを組んできた彼らのトークが展開された。

イベントは両作の予告編上映からスタート。黒沢は、自身の監督最新作を「予告編があんまりホラーっぽくないのが若干気になるんですけど、思いっきりホラー映画なので怖いです」と説明し、「淵に立つ」に関しては「これはホラーですよね。画面に映っていてもいなくても、全編を浅野忠信が支配している感じがしました。これまでも浅野さんは恐ろしげで底知れない感じのする役を何度もやっていますが、これはその決定打だなと思います」とコメント。浅野は「この役をやるのは僕しかないだろうと思いましたね(笑)。こういう役が多かったので追求したいと思いましたし、今まで得てきたものをこの役できちんと出してみたいとも考えていました」とはにかみながら出演の経緯を語る。

MCから「原作ものを映画にする場合は、オリジナル作品とアプローチの方法に違いはありますか?」と質問が飛ぶと、浅野は「台本が面白かったら原作は読まないようにしています。やっぱりそっちに引っ張られることが多いので……。役を見つけるためのガイドとして原作を読むことはあります」と回答。一方、近年原作ものの映像化を数多く手がけてきた黒沢は「原作には僕では思いつかない斬新なアイデアがあるので、とてもありがたい。でも過去にこんなことがあったと描いておかなきゃなあと思うと、その要素を切れないんですよ。原作ものをやり出してから僕の作品は長くなりましたね(笑)。それを宿命として受け止めて、これが原作の味わいなんですという気持ちでやっています」と明かした。

監督作や出演作を携えて、海外の映画祭に参加する機会の多い2人。浅野は「日本では笑いが生まれないようなシーンで笑うことがたくさんありますよね」と映画祭での観客の反応に言及する。黒沢は「カンヌは映画祭の中でもとりわけ特殊で、笑い声や歓声が上がる一方で、途中で人がバタバタと会場を出て行ったり、ブーイングが起こったりする。怖い映画祭でもあるし、エキサイティングな場ですね」とにこやかに語った。

話題は日本と海外の映画制作現場の違いに。「マイティ・ソー」「47RONIN」などのハリウッド映画に出演した浅野は「取り組み方が全然違う。俳優への要求もすごいし、アメリカは厳しいなって感じます。いい緊張感がずっとありますね」と振り返る。また「ダゲレオタイプの女」が海外進出作となった黒沢は「ハリウッドではなくフランスだからかもしれませんが、スタッフは監督のやりたいことを実現しようと一生懸命取り組んでくれました」と前置きをして「もちろん文化的な違いはあります。俳優と初めて会ったときに『質問があるか?』と尋ねたら『山のようにある』と言われて、セリフや行動の意図をいっぱい聞かれて戸惑いました(笑)。でもプロデューサーには『俳優はやる気があるから質問するんだ』と言われましたね」と述べた。その言葉を受けて浅野は「主張しないといけないというのは学びました。日本の現場では若い頃に意見をして怒られたこともあるから、言ってはいけないんだなと思っていたんです」としみじみとした表情で話す。

さらに世界で活躍したい人へのアドバイスを求められると、黒沢は「自分はこんな映画を作りたいんだと試行錯誤しながら欲望を磨いていけば、絶対に世界で通用すると思います。不安や気遣いはいらないし、日本人だからこう見られるんじゃないかという先入観も捨てたほうがいいですね」と、浅野は「言語はできたほうが楽。全然違う考え方をした人たちがいるから刺激になるので、行ってみるのは面白いと思います。そのときに『なんで自分はこれに魅力を感じているんだ?』と自分の好きなことを掘り下げていったほうが、いろんな人と出会ったときに盛り上がれます」とそれぞれ答えた。

最終更新:9月3日(土)23時9分

映画ナタリー