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空自、なぜ遅いプロペラ輸送機をアフリカへ? 所要3日、背景に「最悪のケース」か

乗りものニュース 9月3日(土)11時39分配信

プロペラ輸送機、邦人保護のためアフリカへ

 2016年7月11日、日本政府は東アフリカの内陸国、南スーダンでの情勢悪化を受け、現地からの日本人の退避に対応するため航空自衛隊に輸送機の派遣を指示。同日夕方、C-130H「ハーキュリーズ」3機が愛知県の小牧基地を出発し、日本時間の同14日朝、拠点である南スーダンからおよそ1000km離れたジブチへ到着しました。

【写真】機体から突き出た砲。重武装、大火力のガンシップ版C-130

 南スーダンは2011(平成23)年に独立を果たした“世界で最も新しい国”ですが、同時に“世界で最も不安定な国”のひとつでもあります。現在、同国の首都ジュバには在南スーダン日本大使館が設置されており、またPKF(国連平和維持軍)として自衛隊が派遣されています。

 今回、ジブチが拠点となった理由は、同国首都にあるジブチ国際空港の一角に、自衛隊唯一の海外基地が存在するためです。ソマリア沖の海賊対策として、海上自衛隊の哨戒機P-3C「オライオン」が常駐し、同機の駐機場や整備格納庫も建設されています。

 今回、空自が派遣したC-130Hは、「ターボプロップ」と呼ばれる一般的なプロペラ飛行機です。そのため速度は遅く航続距離も短いことから、前述のように、駐留する小牧基地からおよそ1万km離れたジブチまでの飛行は、経由地での給油をはさみ実に約3日を要しました。

 航空自衛隊には、C-130Hよりも高速な輸送機がほかにもあります。にもかかわらずなぜあえて、遅くて現地に赴くだけで゛ひと仕事”になってしまうC-130Hを派遣したのでしょうか。ほかの選択肢はありえなかったのでしょうか。

より近くにいた空自機 にもかかわらず3日かけC-130Hを現地へ飛ばしたワケ

 たとえば、旅客機や貨物機として使われるいわゆる「ジャンボジェット」の同型機で、天皇陛下や首相も利用する「政府専用機」ボーイング747。2016年7月初旬、バングラデシュのダッカで発生したテロを受け、ご遺体や被害者の家族を運ぶために現地へ派遣されています。航空自衛隊に所属するKC-767空中給油機もまた、旅客機、貨物機として活躍するジェット機ボーイング767が原型で、およそ200人の搭乗が可能です。

 政府専用機、KC-767どちらもプロペラ機C-130Hとは比較にならないほどの速さと航続距離を持っています。空自の資料によれば、C-130Hの最大速度は約589km/h(318ノット)なのに対し、政府専用機の巡航速度は約1020km/h(マッハ0.85)、KC-767の巡航速度は約1008km/h(マッハ約0.84)となっています。特にKC-767はジブチ基地支援のため頻繁に派遣されている実績があるほか、このとき偶然にも、国際エアショーに展示されるため1機がジブチへより近い(約5000km)イギリスに派遣中でした。そして南スーダンのジュバ空港、ジブチ国際空港ともに3000m級の滑走路を備え、巨大な政府専用機でも十分に離発着できます。

 そうしたなか今回、なぜC-130Hが派遣されたのでしょうか。防衛省に問い合わせたところ、プロペラ機で離着陸速度が抑えられるため、そのぶん短い滑走路や不整地でも離発着が可能な点から、C-130Hが最も適しているという結論に至ったとの回答を得ました。

 以下はあくまで筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)の推測ですが、さらなる情勢悪化により滑走路が破壊されるような最悪のケースをも想定し、劣悪な条件や短い滑走路でも運用できる軍用輸送機ならではの“タフさ”をもつC-130Hが最適であると判断されたのでしょう。

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最終更新:9月5日(月)12時29分

乗りものニュース

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