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レジェンドが語るTOP14の魅力。~廣瀬俊朗編~

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン) 9/3(土) 9:31配信

日本で初めてWOWOWがフルシーズンでの放送を始めたラグビーフランスリーグ「TOP14」。第2節の注目カード、モンペリエvsクレルモン・オーヴェルニュを、野澤武史さんと一緒に解説したのが、大躍進を遂げた昨年のラグビーワールドカップ日本代表で「陰のキャプテン」と呼ばれた廣瀬俊朗さんです。大阪の進学校として知られる北野高から慶大に進み、理工学部で学びながらラグビー部で主将も務め、東芝に進み、2012年からは日本代表の主将を拝命。カリスマ的なキャプテンシーでエディー・ジャパンの背骨を作り、昨季で現役を退いた廣瀬さんですが、大阪でラグビースクールに通っていた小学生時代からフランスのラグビーには心を奪われていたそうです。初めて解説する「TOP14」、そして現在のフランスラグビーを、廣瀬さんはどのように見たのでしょうか?

レジェンドが語るTOP14の魅力。~大畑大介編~

――モンペリエ対クレルモン・オーヴェルニュを解説した感想を聞かせてください。フランスリーグ TOP14の試合はご覧になったことがありましたか?
ヨーロッパのカップ戦は見たことがありますが、この時期のTOP14の試合を見た記憶はありませんね。正直、この時期は予想していた以上に成熟していないんだなあ、と改めて感じました。ただ、やっぱりフランスだな、と感じたのはスクラムへのこだわり。そして1対1のコンタクト。そして、時折見せる個人のスピードには「さすがだなあ」と思わされました。
やっぱり、コーチングで締め付けすぎるのはフランスには合わないのかな、色々な国から選手が来ているから合わせるのは簡単じゃないのかな、と思いながら見ていました。

――フランスのアタックというと、深い位置からスピードに乗って個人技で勝負するというイメージがありましたが、今日は両チームとも浅いラインを引いてフラットなパスで勝負する場面が目立ちました。
そうですね。モンペリエのヘッドコーチは南アフリカ出身のジェイク・ホワイトだし、クレルモンもNZ出身でスコットランド代表ヘッドコーチのヴァーン・コッターが長い間ヘッドコーチを務めていたし、伝統的なフランス流のコーチングがどれだけ行われているか。いまのラグビーはボールを下げないで、ゲインラインに仕掛けていくのが主流で、フランスでもそれは変わらないのかな、と思います。ただ、その中にも遊びがあるというか、大きな枠組みの中で、選手それぞれの発想でプレーしているな、日本やニュージーランドのように、ゲームのストラクチャー(構造)を完璧に作ったりはしていないんだなとは感じましたね。今日の試合では、ものすごく美しいトライがたくさんあったわけじゃないけれど、ところどころに凄いヒラメキを感じるプレーはありましたね。後半のクレルモンのトライは、途中出場したフランカーのペゼリ・ヤトがものすごいスピードで抜けて、最後はモンペリエのウイングのネマニ・ナドロを1対1で、ものすごいステップで抜いて決めたものでしたが、フランカーがあんなステップを踏むなんて日本では考えられない。そういう、予想外のプレーにたくさん出会えるのがフランスのラグビーですね。これはフィジー代表選手同士の対決でしたが(笑)。

――廣瀬さんにとって、フランスラグビーの最初の印象はどういうものでしたか?
もともとフランスのラグビーは好きだったんですよ。シャンパンラグビーっていいますけど、テキトーに見えて、実はサポートがすごくて、ストラクチャーで動いているチームにはゼッタイにできないようなトライを取りますからね。シックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗戦)の前身であるファイブ・ネーションズは、僕が小学生の頃からずっと見ていました。センターのフィリップ・セラやウイングのフィリップ・サンタンドレ、エミール・ヌタマック、好きでしね。ロックのアブドラフ・ベナジも好きだったな。1995年のワールドカップのとき、決勝は南アフリカとニュージーランドの対戦でしたが、14歳の僕はフランスに独特なものを感じました。

――廣瀬さん自身がフランスラグビーと直接接点を持ったのはいつからですか?
高校日本代表の遠征先が、ウェールズとフランスだったんです。ウェールズには勝てそうな感じだった(30-34)けど、フランス高校代表にはボロ負けでした。FWの強さ、フィジカルの激しさが桁違いで、BKには、翌年には19歳や20歳でフランス代表入りしたSOフレデリック・ミシャラクやFBのクレモン・ポワトルノーがいて、すごかった(笑)。その後、日本代表ではフレンチ・バーバリアンズやバスク選抜と対戦したりしたし、元フランス代表監督のピエール・ヴィルプルーがスポットコーチに来てくれたりしたこともありましたが、そのたびに「フランスはちゃうなあ」と感じましたね。指導に当たって、やることを決めすぎない、そのときの状況によって柔軟に対応しよう、臨機応変にプレーしよう、ヒラメキを大切にしようという考え方が根幹にあるんだと思います。

――廣瀬さんがよく知っているエディー・ジョーンズさんとはタイプが違う。
ちゃいますね(笑)。エディーさんは、やらなきゃならないことを明確に決めて、それを実行するための方法を示して、それを選手に妥協なく要求し続けるのが持ち味ですから。ただ、フランス代表のラグビーも、最近はシャンパンラグビーが影を潜めて、オーソドックスなスタイルになってきているし、その分、フィジカル面で優位性を作っていくことにより重きを置くスタイルになってきていると思いますね。

――そういうフランスに、五郎丸歩選手が挑戦します。この決断を聞いたとき、どう思いましたか?
まず「よう行ったなあ、決断したなあ」という思いでしたね。RCトゥーロンはあれだけのスター軍団だし、試合に出るのは簡単ではない、おそらくレッズよりも厳しいということも本人が分かった上でチャレンジするんですから、本当にすごいと思う。でも、スーパーラグビーよりもフランスの方が合っているだろうなとは思いますね。ヨーロッパの方がキックは多いし、五郎丸のキック力だけでなく、キャッチングの強さも活きてくる。もちろん、スーパーラグビーよりもペナルティゴールを狙うことも多いから、プレースキックも重要になる。日本のファンから見たら、レッズのコーチ陣は五郎丸の良さを引き出そうとしてくれなかったな、という思いはありましたよね。開幕直後に、五郎丸を採ったヘッドコーチが解任されたこともあって、なかなかチャンスをもらえなくなった面もあったと思う。だけど五郎丸の場合は、もともとの適性として、スーパーラグビーよりもフランス、ヨーロッパの方が合っていると思います。スーパーラグビーはやっぱりランプレーが中心。ヨーロッパではキックが多くて、FBにはフィジカルの強さも求められますからね。

――五郎丸選手がTOP14に行ったことで、フランスラグビーが日本のファンにとって身近になりましたね。
いいことですよね。ゴローが行ってくれたことで、こうしてWOWOWが全節放送してくれるようになったわけだし、僕らもこうしてTOP14の試合をシーズンの早い時期から見ることができる。とはいえ、これで彼が試合に出られなければ、来年どうなるか分からないし、本人も相当の覚悟を持って行っていると思う。それを分かった上で、最後はどんな結果になろうとも、僕は彼のチャレンジをたたえたいと思います。このチャレンジは本当に素晴らしいこと。どんな結果であれ、彼のチャレンジが次の世代に繋がっていくんだと思う。

――廣瀬さんは現役を引退して、今は各地でラグビーの普及や2019年ワールドカップに向けたイベントなどに大忙しですが、ラグビーが次の世代にどのように受け容れられていると感じますか?
日本代表のジャージを着てる子どもたちがすごく増えましたね。それも、すごく嬉しそうに着てくれている。親に無理やり着せられているんじゃなく(笑)。あんな姿、1年前には全然見られなかったですからね。ああいうのを見ると、改めて、ワールドカップで勝ってよかったなと思いますね。その分、これからが大事だし、ラグビーだけでなく、パラリンピックのウィルチェアーラグビーや、これはパラリンピックの種目じゃないけれど、聴覚障害者のデフラグビーも応援していきたい。

――最後に、これからのフランスリーグ TOP14に期待していることを聞かせてください。
いまは開幕直後で、想像以上に熟成されてないなというのが正直な感想でしたが、それがこれから10カ月かけて、どこまで醸成されていくのかな、というのが楽しみですね。TOP14はほとんどのチームが5月いっぱいリーグ戦をやって、決勝を戦うチームは6月の末まで戦って、8月には次のシーズンが始まってしまう。新しいシーズンに向けた準備期間が2カ月しかない。日本のトップリーグは、1-2カ月のオフをとった上で4月に始めて、7月までまるまる4カ月かけて準備できるけど、フランスでは全然違うんですね。そのぶん試合数も多いし、公式戦を戦いながらチームが仕上がっていくんでしょうね。TOP14の戦いをシーズン通して見られるのは今年が初めてなので、その変化、成熟していく過程を見るのがとても楽しみです。そして、そこに五郎丸がどう絡んでくるかを楽しみにしています。


廣瀬俊朗

1981年10月17日生まれ、大阪府出身。吹田ラグビースクールでラグビーを始め、北野高校、慶應義塾大学を経て、東芝ブレイブルーパスに入団。2007年に日本代表に初選出され、同年の香港戦で初キャップを獲得する。2012年、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチから主将に任命され、ウェールズとのテストマッチで金星を挙げるなど貢献。2015年のワールドカップメンバーにも選出される。173センチ、82キロ。キャップ数28。ポジションはスタンドオフ、ウイング。

■詳しくは、WOWOWラグビーオフィシャルサイトをチェック!
http://wowow.bs/rugby

最終更新:9/3(土) 9:31

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