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「リオ2016パラリンピック」世界が注目するトップアスリートは?

TOKYO FM+ 9月3日(土)12時0分配信

オリンピックの興奮もまだ冷めやらぬ今日この頃ですが、9月7日(日本時間9月8日)には同じリオデジャネイロで「パラリンピック」が開幕。今回のリオ大会は全22競技528種目が行われ、およそ170の国と地域が参加します。今回は、「リオ2016パラリンピック」の大会の見どころを、TOKYO FMの番組の中で詳しい方々に教えてもらいました。


◆「パラリンピアンはトップアスリートです」
~スポーツライター 金子達仁さん

ジャパンパラ競技大会を初めて取材したのは3年前でした。当時はまだ村の運動会みたいな雰囲気で、僕は正直「この人たちをアスリートと呼べるのか」と悩んだものです。しかしわずか3年で状況はガラリと変わりました。この6月に開催されたジャパラには大勢の報道陣が押し寄せ、選手もプロっぽくなっていたんです。

そもそも3年前に取材したのも『Number』の編集部に依頼されたからで、僕自身はまったく興味がありませんでした。でもその取材で義足のアスリート、中西麻耶さんを追いかける中で「この人たちも、ほかのアスリートと何ら変わらない」ということを知ったんです。

それまでは僕の中に「可哀想な人たちが頑張っているから応援しなきゃ」「パラリンピアンは頑張っているだけで美しい」みたいな発想がどこかにあったと思います。でも取材する中で見えてきたのは、飢えるような勝利への想いや、ドロドロした嫉妬や足の引っ張り合いなど、どこでも繰り広げられるアスリートらしい人間模様でした。それで僕はある種のマイナー競技を取材しているのだと感じたんです。

中西選手は陸上の選手で、100mと幅跳びを得意としています。「義足のアスリート」と呼ばれますが、競技で使うのは義足ではなくブレードで、カーボンのブレードをたわませてバネのように使いながら走るんです。選手によって体格も切断した箇所も違うので、ブレードはひとりひとりオーダーメイド。ブレードの硬さ、形状、切断面との接合など、ものすごくデリケートな作業なのだそうです。

もちろん中西選手も普段は義足を使います。ブレードは全力疾走する時だけの専用の道具です。ブレードで走るのも大変ですが、止まるのも大変。さらに走幅跳ではブレードで踏み切る選手もいます。健常者の走幅跳だってあれだけ踏み切りが合わないのですから、ブレードを使って踏み切りを合わせる難しさは想像を絶します。

中西選手は今回のリオにも出場しますが、走り幅跳びは十分にメダルを狙える実力があります。ただしいつも踏み切りが合わなくてハラハラさせられるのですが(笑)。野球で言えば三振かホームランかみたいな感じで、踏み切りさえ合えば大ジャンプが期待できるので楽しみです。


◆「世界にはすごいアスリートがいます」
~WOWOW「WHO I AM」チーフプロデューサー 太田慎也さん

「WHO I AM」は今年から5年間かけて世界中にいるパラリンピックのトップアスリートを描くドキュメンタリーシリーズです。年内に登場するのは8人で、日本からは車いすテニスの国枝慎吾さんが登場します。国枝さんはパラリンピックで2連覇中の世界的なスーパースター。陸上や水泳の競技会場で我々が「日本から来た」と挨拶すると「シンゴ・クニエダ!」と言われるほどです。

ブラジルからはブラインドサッカーの代表キャプテンで10番を背負うリカルディーニョと、水泳のダニエル・ディアス。ダニエル・ディアスはすでに金メダルを10枚も獲得していて、今回のリオでも「メダルをいくつ獲って、世界記録をどれだけ更新するか」が注目されています。

エリー・コールはオーストラリアの女性スイマー。24歳と若い選手ですが、すでに2008年の北京大会や2012年のロンドン大会で活躍しているので、リオでも活躍が期待されています。オランダのマールー・ファンラインは両足義足の女性ランナー。100mと200mと400mの世界記録を持つので「史上最速ブレード女王」と呼んでいます。

アメリカからはタティアナ・マクファデン。彼女は車いす陸上のチャンピオンで、リオでは100mからマラソンまで7種目制覇を狙うというすごい選手です。イランのザーラ・ネマティは車いすでリオ五輪にも出場したアーチェリーの女性選手。一緒に練習している健常の選手が「自分が挫けそうになったときは彼女がずっと練習に打ち込む姿を見るようにしている」と言っていました。

ボスニア・ヘルツェゴビナのサフェト・アリバシッチはシッティングバレーボールの選手。この競技は下半身に障がいのある人がコートにお尻をついて座りながらやるバレーボールです。ボスニア・ヘルツェゴビナは20年前までの紛争で障がいを負った人がたくさんいて、アリバシッチ選手も幼少期に地雷を踏んでかかとを失いました。そういう人たちがスポーツを通じて人生を取り戻す場として国がこの競技を支援しています。

エリー・コールは「片足を失ったことは人生において最高の出来事」と語りました。「物事はポジティブな見方もネガティブな見方もできる。どちらを選ぶかによって後に大きな差が生まれるので、私はすべてをポジティブに見る。それが私が障がいから学んだことです」と。自分の活躍する意味もちゃんと考えているクレバーなスイマーなので、ぜひ注目してください。


◆「パラリンピックで水泳のクラス分けは」
~日本パラリンピアンズ協会 会長 河合純一さん

パラリンピックにおける水泳が、ほかの競技と大きく違うのは、義足や車いすのような特別な道具を一切使わないことです。水によって得られる浮力を利用しながら、地上の何十倍と言われる水の抵抗と戦い、自分の体ひとつで泳ぎ切るのが一番の魅力と言えるでしょう。

そんなシンプルな競技である一方で、いろんな障がいが混在してレースをするのがわかりにくい部分でもあります。肢体不自由については障がいの重さや種類でS1からS10まで10段階にクラス分けされているのですが、障がいのない人の能力を300点として、右手が切断されていたら何%みたいな評価をして、筋力、可動域、左右のバランス、脳性麻痺なども考慮してクラス分けしています。

S11~13までは私のような視覚障がいのクラスです。S11はまったく目が見えない人のクラスで、ブラックゴーグルと呼ばれる光を通さないゴーグルを付けて泳ぎます。もともと目が見えないことはわかっている選手たちなのですが、あえてそういうハードルを課して平等性を高めているんです。このルールはレース後にプールサイドへ上がったところで判定員がゴーグルを確認するくらい厳格に行われています。

そしてS14が知的障がいのある選手のクラス。この14クラスが男女で行われるので計28クラスです。さらに自由形や平泳ぎ、泳ぐ距離などもいろいろあるので、今回のリオパラリンピックでは水泳競技だけで150種目を超えます。規模の小さい大会ではクラスの違う選手が同時に泳いでタイムで順位を決めることもありますが、パラリンピックともなるとクラスごとにレースが行われます。

オリンピックだと参加する国や地域は200を超えますが、パラリンピックはまだ170を超えるくらいでしょう。その点は障がいがあってもスポーツを楽しめる状態ではない、あるいは国際大会に出られる状況にない国々も地球の上にはまだまだたくさんあるということも感じていただければと思います。でもオリンピックもパラリンピックも世界最高峰のスポーツの祭典です。

ちなみにS11クラスの水泳でも、クロールなら手をかいた回数でターンのタイミングをだいたい計れます。でもレースでは安全を確保するため、コーチが2~3mある棒で選手の頭や肩に触れて壁が近いことを選手に伝える「タッピング」をするんです。叩き忘れたり空振りしたりすると失格ですが、一流選手のスピードに合わせるのは大変ですし、それで1/100秒を競うタイムに影響が出ます。その技術にも注目してみてください。

(TOKYO FMの番組「ピートのふしぎなガレージ」2016年8月27日放送より)

最終更新:9月3日(土)12時0分

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