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バレンシアニスタの希望はどこへ 今夏も“売るクラブ”からの脱却は叶わず

SOCCER KING 9/3(土) 11:57配信

 2014年10月5日、新たな筆頭株主であるピーター・リム氏が、バレンシアを買収してから初めて本拠地に姿を見せた。メスタージャは新たなチームオーナーのシンガポール人資産家を熱狂で迎えた。財政難で苦しむチームを救い、新たなプロジェクトを進め、かつてのようにチャンピオンズリーグ、リーガ・エスパニョーラでの優勝争いを期待した。

 バレンシアはスペインを代表する名門クラブの1つで、6度のリーガ制覇を誇る。2000年初頭には黄金期を迎え、2001-02、03-04シーズンにリーグ優勝。特にラファエル・ベニテス監督が率いた03-04シーズンには、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)との2冠を達成。チャンピオンズリーグでも2000年、2001年のファイナリストだった。だが、ベニテス監督がチームを離れてからは、かつてのような際立った戦績は残せず。国内の経済危機もあり、チームの財政も悪化。巨額の負債を抱え、ダビド・ビジャ、ダビド・シルバ、フアン・マタといった主軸を毎夏売却しなければならなかった。P・リム氏はそんな泥沼からチームを引き出す救世主に思えた。巨額の負債を解消し、再びタイトルを争えるチームへ。バレンシアニスタはそうなると期待したが、今夏突きつけられたのは、まさかの過去の繰り返しだった。

 P・リム氏のチームとなってから2度目の夏、各ポジションの軸が売却された。中盤ではポルトガル代表MFアンドレ・ゴメスが3500万ユーロ(約40億円)でバルセロナに、守備陣ではドイツ代表DFシュコドラン・ムスタフィが4100万ユーロ(約47億円)でアーセナルに、攻撃陣ではスペイン代表FWパコ・アルカセルが3000万ユーロ(約34億円)でバルセロナへの移籍が決定。各ポジションのベストプレーヤーを売却し、戦力ダウンは顕著だ。事実、開幕したリーガで、1部残留が目的のラス・パルマスとエイバルに連敗している。

 P・アルカセルの移籍はバレンシアニスタにとってショックだった。11歳の時に下部組織に入り、17歳でトップチームデビューした生粋のバレンシアニスタだ。地元紙『スーペル・デポルテ』のシーズン前のインターネットアンケートでは「誰がキャプテンになるべきか?」という問いに70パーセントという絶対的な支持を集めた。P・アルカセルはチームの象徴であり、1チームでキャリアを終える地元出身者カルラス・プジョルのような現代サッカーでは希少なバンディエラになると思えた。そんな23歳の伸び盛りの選手が、ベンチに座る可能性が高いのを理解しながらも、移籍を決断し、故郷を離れた。

 主力を引き抜かれ、シンボルも退団した。チームにやって来る選手はオーナーの友人である代理人ホルヘ・メンデス氏のクライアントばかり。その選手が活躍していればいいが、アメイン・アブデヌールらやって来た大半の選手は、移籍金が高いわりに期待どおりのパフォーマンスを示していない。ムスタフィの代役として今夏の移籍市場最終日に獲得したアルゼンチン代表DFエセキエル・ガライとフランス代表DFエリアカン・マンガラも例に漏れず、メンデス氏のクライアントだ。

 今になって地元メディアは、昨夏に退団させられた、元バレンシアの選手でスポーツディレクターだったフランシスコ・ルフェテ氏とロベルト・アジャラ氏の仕事を称える。なぜなら2014年夏にポルトからアルゼンチン代表DFニコラス・オタメンディを1200万ユーロ(約14億円)で(後に2015年夏にマンチェスター・Cに4500万ユーロ=約52億円で売却)、サンプドリアからムスタフィを800万ユーロ(約9億円)で獲得と、賢い買い物をしていたからだ。

 バレンシアニスタが2年前に見た希望は、今どこにあるのか。

文=座間健司

SOCCER KING

最終更新:9/3(土) 11:57

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