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【コンピューターゲームの20世紀 69】かつて『Wiz』と共に青春時代を送った親父ゲーマーに贈る 『Wizardry #1 Proving Grounds of the Mad Overlord』 <前編>

リアルライブ 9月4日(日)12時56分配信

 『Wizardry』(『ウィザードリィ』)は『Ultima』(『ウルティマ』)と並ぶコンピューターRPG黎明期の傑作。この2作品によって同ジャンルのゲーム性が確立され、広まっていくことになる。ただ、特に日本においてはこれらの作品の影響があまりに多大であり、RPGというゲームは以降20年以上にわたってその呪縛から逃れられずにいた。

 RPG(テーブルトークRPG)というゲームは、1970年代前半から存在し、元々はコンピューターを使用せずにゲームマスターと呼ばれるシナリオ&ルールを把握した人間によりゲームが仕切られていた。ゲーム自体はこのゲームマスターとプレイヤーの会話によって進められ、戦闘や罠などの判定にはダイスが用いられる。コンピューターRPGはそのゲームマスターの役目をコンピューターに任せることによって、プレイヤーが1人でRPGをプレイできるようにしたもの。その気軽さ(当時のPCは恐ろしく高価であったが)により、RPGというゲームを一気にメジャーな存在に押し上げた。そのきっかけとなったのが前述の2作であるのだが、今回は初代『Wizardry』(『Wiz』)に絞って話を進めさせていただく。

 『Wiz』シリーズの初代(『Wizardry #1 Proving Grounds of the Mad Overlord』)は81年9月にApple II用のゲームとして発売された。その制作者はロバート・ウッドヘッドとアンドリュー・グリーンバーグの2人。彼らは大学在学中に本作を作り上げたのだが、基本的なコンセプトは前述のとおりテーブルトークRPGのコンピューター化である。ただし、当時のコンピューターは性能が低く、容量にもかなり制限があった。そのため、開発にはかなりの試行錯誤があったようだが、学生ながらゲーム史に名を残す偉大な作品を作り上げたのは見事しか言いようがない。

 ちなみにゲームのシステムやシナリオはロバートが、プログラミングはアンドリューが担当している。また、余談だが本作のキャラの職業・アイテム・敵などに和風のものが多いのはロバートの趣味で、彼は後に日本の映像ソフトの輸入会社を設立。日本人と結婚し6年間ほど滞在していた。

 本作はシナリオ面は限りなく薄い代わりに、戦闘やアイテム面には相当な力が入れられている。これには理由があり、シナリオは単に容量の問題から削ぎ落とされたのだが、戦闘に関しては度重なるテストプレイから神がかったバランスになったという経緯がある。当時、制作者2人は大学の寮に住んでおり、そこで友人達が夜な夜な彼らの部屋にやってきては『Wiz』のベータ版をプレイ。これにより細かなバランス修正がなされ、発売から35年が経過した現在プレイしても面白いと感じさせる作品が出来上がったのである。ちなみにそのテストプレイヤー(というか大学の友人)の中には、序盤の経験値稼ぎのお供としてお世話になるモンスター「MURPHY’S GHOST」の元ネタであるポール・マーフィーもいた。

 本作には武器防具を含め101種類ものアイテムが存在する。中には「MURAMASA BLADE」(Apple II版ではMURASAMA BLADE)や「LORDS GARB」「SHURIKEN」など本作を代表するアイテム(日本ではこの3つを三種の神器と呼んだりもする)も存在し、当時のマニアにとってこれらは垂涎の的であった。アメリカでは本作は主にクリア優先でプレイされていたが、日本ではアイテムの収集を目的とするプレイヤーが多数存在し、とっくにクリア可能になったキャラを引き連れ、夜な夜なアイテムを漁る姿が多数見受けられたのだ。この日米のプレイスタイルの違いは続編で大きな問題となり、初代のキャラをレベルごと持ち越せるというシステムが波紋を呼んだ。というのも制作者は初代でのプレイヤーのクリア平均レベルをマスターレベルと呼ばれるレベル13に想定しており、続編をそのレベルから始まるバランスで制作した。アメリカではそれで良かったのだが、日本では前述のようにアイテム探しを続けた熱心なプレイヤーのキャラのレベルが想定外に高くなっており、そのレベルを引き継いで始めた続編はバランスが崩壊してしまっていたのだ。

 アイテムに関してもう少し話を続けさせていただく。当時はレアアイテムの入手法則は明らかにされておらず、ひたすら最深部である10階に潜ってはワープゾーンで1階に帰還することが繰り返されていた。特に前述の3種の神器や「RING OF HEALING」などが特に入手しにくく、またその効果が優れていることから、プレイヤーはその入手に躍起になっていた。しかし、近年になってそのシステムが解析されると、意外なほど単純であることが判明した。

 アイテムには0~100までの番号が振られており、このうち80~93のアイテムがいわゆるレアアイテムに相当し、それを落とす可能性のある敵が16種類存在する。詳しくはドロップ率5%の敵が10種、10%の敵が6種存在し、これらの敵を倒した場合のみレアアイテムのドロップ判定があり、14種類のレアアイテムのうちどれがドロップされるかはランダムかつ同率である。実は「RING PRO UNDEAD」や「BREAST PLATE +3」も「MURAMASA BLADE」と同格のアイテムだったのだ。また、もしも宝箱を開けた際に3個目のアイテムが表示されたら、それはレアアイテム確定である(筆者の経験上)。

 これらのシステムは知らなくてもかまわないものだが、もしもこの記事を見て久しぶりに初代『Wiz』と戯れてみようかと思い立った方がいたならば是非参考にしてほしい。かつてアイテム入手時に「WEAPON」と表示された時の興奮がよみがえるかもしれない。

(須藤浩章)

次回へ続く

■DATA
発売日…1981年
メーカー…Sir-Tech
ハード…PC他多数
ジャンル…ロールプレイング

※アイテム名などは基本的にApple II版に準拠しています。

(C) 1979-1985 BY ANDREW GREENBERG, INC., AND ROBERT WOODHEAD, INC.

最終更新:9月5日(月)15時17分

リアルライブ