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差し入れ「書籍」閲覧制限の違法判決…「死刑囚」の人権の制限はどうあるべきか?

弁護士ドットコム 9月4日(日)10時41分配信

差し入れの書籍や雑誌について、拘置所が一部閲覧できないようにしたのは違法だとして、死刑囚の男性(40)が国を相手取って慰謝料100万円を求めた訴訟で、名古屋地裁は8月下旬、国に6万5千円の支払いを命じる判決を言い渡した。

共同通信の報道などによると、差し入れの書籍や雑誌に死刑執行の具体的描写があったため、名古屋拘置所は2010年から2013年にかけて、原告の男性が読めば精神不安定になって自殺や逃走につながるおそれがあるとして、一部を閲覧できないように抹消処分していたという。

名古屋地裁の倉田慎也裁判長は判決で「抹消部分の閲覧で、原告が自殺や逃走する相当程度の確実性があったといえない。裁量権を逸脱している」と判断した。

この死刑囚の男性はこれまでも、弁護士などとの手紙のやりとりを禁止されたのは違法だとして国を相手取った訴訟を起こし、今年2月に勝訴している。死刑囚の人権はどう考えられているのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。

●「必要最小限度の制限でなければならない」

「死刑囚であっても、憲法が保障する人権があります。しかし、受刑者でない一般人とまったく同じかといえば、そうではありません。死刑囚については、国が刑事施設に収容する必要がありますから、その関係で必要な人権の制限をすることが許されています。

ただし、その制限は、国がその人を収容している目的を達成するために必要最小限度のものでなければなりません」

村上弁護士はこのように述べる。どのような制限が問題になるのだろうか。

「とくに、手紙の差し入れや新聞・図書の閲読を制限するなど、個人の精神的自由を規制するものについては、『必要最小限度を超えていないか』ということが厳しく問われることになります。

この点については、『よど号ハイジャック記事抹消事件』の判決(1983年・最高裁)が参考になります。

最高裁はこの判決のなかで、監獄長がおこなった新聞記事の抹消処分について、監獄内における紀律・秩序が放置できない程度に害される『相当の具体的蓋然性(確実性)』があると認められる場合に限って、禁止または制限できるという基準を示しています」

●「具体的に特別な状況でもないかぎり、最小限度を越える」

今回の名古屋地裁の判決はどうだろうか。

「この判決も、死刑囚の人権に対する『規制のしすぎ』、つまり必要最小限度の規制を超えているとして、違法であるという結論に至ったわけです。

私は、死刑囚をふくむ被収容者の人権について、裁判所のとる基本的な考え方は正しいと思っています。死刑囚の男性が犯した罪が重大であったとしても、拘置所に留置されることや刑の執行を受けることなどは別として、基本的人権はできるかぎり保障されるべきです」

一般論として、死刑に関する描写を見た死刑囚が、精神不安定になることは考えられないだろうか。

「そういう可能性はあるかもしれませんが、具体的にその人の精神状態が非常に悪く、そのような描写を見せることが自殺などの事態を直接引き起こす可能性が相当大きいという特別な状況でもないかぎり、一般論的なおそれだけで制限することは最小限度を超えるといえるでしょう。憲法違反になる可能性が高いと思います」

村上弁護士はこのように話していた。

【取材協力弁護士】
村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。

事務所名:神戸シーサイド法律事務所
事務所URL:http://www.kobeseaside-lawoffice.com

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:9月4日(日)10時41分

弁護士ドットコム

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