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リオパラ超人烈伝「ロンドンでの悔しさをバネに、いざ夢の舞台へ」 ~陸上・大西瞳~

カンパラプレス 9月4日(日)11時0分配信

 たとえどんなに悔しい思いをしても、その時の気持ちを長年持ち続けるのはたやすいことではないだろう。だが、大西瞳は4年前のロンドンパラリンピックで味わった「補欠選手」という屈辱を片時も忘れず、リオデジャネイロパラリンピックの切符をつかみ取った。
 ロンドンからの4年間は順風だったわけではない。右肩上がりに伸びていた100mのタイムが2014年にぴたりと止まり、スランプに陥った。「その時期が結構長かったので焦りました」と振り返る大西。ようやく浮上のきっかけをつかんだのは、今年の春だった。4月31日、5月2日の2日間で行われた「日本パラ陸上競技選手権大会兼リオパラリンピック日本代表選手選考会」(鳥取コカ・コーラウエストスポーツパーク)で、T42(ひざ上切断等のクラス)の女子100mに出場した大西はようやく自己ベストを更新。17秒32の日本記録をマークした前川楓に、わずか100分の1秒差で優勝を譲ったものの、復調に向けて確かな手応えを感じ取った。
 そして迎えた6月4日、「IPC公認2016ジャパンパラ陸上競技大会」(新潟デンカビッグスワンスタジアム)では16秒90のアジア新記録で優勝。日本人初となる17秒切りでリオデジャネイロパラリンピックの初代表入りをほぼ確実にした。「まさかあそこで16秒台が出るとは、自分でも驚きました」と大西。長いスランプのトンネルを抜け、光を見た瞬間だった。

孤独な練習では仲間の頑張りが刺激に

 大西にコーチはいない。驚かれる方もいるだろうが、たとえパラリンピックに出場するトップアスリートであっても、障害者スポーツでは独自に練習を行っている選手がまだ多い。また練習時間の確保も課題で、大西も平日は目黒区役所に勤めているため、夜や休日の時間を練習に当てている。
「それでも私は恵まれているほう」と言う大西。公務員は基本的に定時で就業するが、民間企業に勤めている選手は練習がままならないからだ。同じくリオデジャネイロパラリンピック出場を勝ち取ったT47(片側前腕部の障害等のクラス)男子100mの多川知希を大西は例に挙げる。
「多川選手は大手民間企業に勤めていて残業も多いので、何人かの選手で行っている平日の練習会にほとんど出てこられません。だから少しの時間も惜しんで自宅の周りを走ったり、坂道をダッシュしたりしています。私と同じコーチのいない境遇で、常に高いモチベーションで練習に励む多川選手を見ていると、『よし、自分も負けられないぞ!』と闘志が湧いてきます」
 そう話す大西の幅広いライフワークもまた、彼女を成長させた要因の一つだ。大西は障害者がテーマのバラエティ番組「バリバラ」(NHK Eテレ)のMCを務め、障害に関する見識を広げるとともに、自身が愛用する鮮やかなハイビスカス柄の生活用義足を惜しげもなく披露している。そうすることで義足に対する世間の認知・理解を広めたいと考える。
 また、自身が走るきっかけとなった義足ランナーの陸上クラブ「ヘルスエンジェルス」では、走り始めの初心者に親身になって走り方を教える。
「私の義足を見てくれた人が『あんな義足を履きたい』と、私の義足を作ってくれている技師装具師の臼井二美男さんを訪ねるケースが少なくないんですよ」と大西。義足づくりのエキスパートとして知られる臼井の生活用義足を履いたのを機に、走ることに興味を持ち、ヘルスエンジェルスに入会する人もいるそうだ。かつての大西がまさにそうだった。

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最終更新:9月4日(日)11時0分

カンパラプレス