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苦悩する日銀

日刊工業新聞電子版 9/4(日) 15:07配信

自ら行った政策変更を任期中に元に戻そうとするのがあるべき姿

 日銀の苦悩が伝わってくる。いくら追加の金融緩和を行っても、消費者物価指数2%の目標に近付くどころか遠のくばかりで、達成時期が見通せない。

 ついに9月の金融政策決定会合では異次元緩和の“総括的な検証”を実施する。これまで、現在の金融政策を貫けば物価の押し上げは可能だ、としてきた日銀が、いかにしたら物価を上昇させることができるか、立ち止まって考え直そうということらしい。

 日銀が黒田東彦総裁のもと、2013年4月に導入したのが質的・量的金融緩和、いわゆる「異次元緩和」(通称=黒田バズーカ)だ。デフレ脱却に向けて、2%の消費者物価指数をおよそ2年の間に実現するため、マネタリーベース(通貨の供給量)を2倍にするという大胆な金融政策である。当初、市場はこれを好感して円安・株高となり、産業界からも高い評価を得た。

 しかし、原油価格の下落や消費増税の影響の長期化による個人消費の低迷といった想定外の事態が災いして、物価指数は0%近辺での推移に終始。一向に上向く気配がなかった。このため日銀は14年10月に追加緩和策・黒田バズーカ2を放つ。

 だが、それでも物価は上昇しない。そこで16年2月には初めてのマイナス金利を導入するに至った。こうした追加緩和やマイナス金利は金融市場や産業界の意表を突く「サプライズ型」の金融政策だった。

 当初は2年後としていた2%の物価目標の達成時期は、度重なる先延ばしの末、今では17年度後半となる見通し。黒田総裁の任期は18年3月までとあって、目標達成を果たせずに、その職から離れる可能性も小さくない。

 最後のカードともいうべきマイナス金利は、金利全般を低下させたため、日銀は「効果があった」と胸を張る。しかし、マイナス金利の真の狙いである企業の設備投資や個人消費の増加には結びついておらず、本当の意味で効果があったとは言い難い。

 総括的な検証では、過去3年半の異次元緩和策が経済活動にどのような影響を与え、どのような効果をもたらしたのかを分析するだろう。サプライズ型の政策運営から予見可能性を重視する姿勢に転換するかもしれない。追加緩和のアプローチが間違っていなかったかを虚心坦懐に点検してほしい。

 2%の物価目標は政府と日銀が共同で掲げたもの。政府は先の経済対策に「日銀が目標を実現することを期待する」と書き込んだ。このため、質・量・金利の3次元による金融緩和政策の枠組みは維持されよう。

 しかし、金融政策のトップは、自ら行った政策変更を任期中に元に戻そうとするのがあるべき姿。緩みきった金融政策をそのまま後任にバトンタッチするのは無責任のそしりを免れない。黒田総裁にはそうした点も肝に銘じてもらいたい。

日刊工業新聞論説委員・川崎一

最終更新:9/4(日) 15:07

日刊工業新聞電子版

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