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解決の道筋見えず 1年経過へ/青森・十和田市立新渡戸記念館の耐震性訴訟

デーリー東北新聞社 9月4日(日)11時30分配信

 耐震不足と診断され、2015年6月をもって廃館となった十和田市立新渡戸記念館。耐震性の有無を巡り提起された行政訴訟は、同年9月18日の第1回口頭弁論から1年が経過しようとしている。主な展示史料の所有者で原告の新渡戸家は、シンポジウムを計画するなど記念館の重要性について県外への情報発信を強める構え。一方、被告となっている市側は、博物館の機能を持つ展示施設の整備計画について検討を進めるものの、新渡戸家との協議は整っておらず、問題解決への道筋は見えていない。

 ■再調査を訴え
 行政訴訟では、これまで6回の口頭弁論が開かれた。記念館の建物自体にも文化的価値があるとする新渡戸家は、設計図を基にした構造計算などを踏まえ、診断結果に疑問を唱えている。

 青森地裁で8月5日に開かれた6回目の弁論では、原告の代理人が耐震診断に間違いがあれば、市議会による記念館廃止の議決も誤ったものになるとし、再調査が必要と訴えた。これに対し、裁判所は原告、被告双方に主張をまとめた書面の提出を求め、次回10月21日の弁論での結審もあり得る、との考えを示した。

 ■価値再考
 新渡戸家側は「新渡戸稲造の精神をどう活(い)かすか~新渡戸記念館の現状と未来への挑戦~」と題したシンポジウムを、4日に東京で開く。西洋美術の研究者で前文化庁長官の青柳正規氏、建築の専門家で芝浦工業大名誉教授の三井所清典氏らそうそうたる顔触れがそろい、地域博物館の在り方を考え、記念館の価値を改めて問う。

 記念館の館長を務めていた新渡戸常憲氏は7月下旬、カナダに招かれ、新渡戸稲造の名を冠した庭園があるブリティッシュ・コロンビア大で講演。記念館問題についても理解を求めた。

 取材に対し「世界から記念館の復活を応援したいという声を頂いている。記念館が次世代に引き継がれるべき存在であることを、青森県の方々にさらに知ってほしい」と話す。

 ■“別枠”
 市は公共施設の総合的な管理計画の中で、記念館の機能を持つ施設の整備を検討している。耐震不足で使えなくなった体育施設などが統廃合の対象となるが、記念館の後継施設については「整備しないことは考えていない」と、“別枠”との考えを示す。

 管理計画は年度内にも概要が公表される見通しだが、史料を所有する新渡戸家の理解が得られない限り中身が伴わず、新施設の整備には乗り出せない状況にある。

デーリー東北新聞社

最終更新:9月4日(日)11時30分

デーリー東北新聞社