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ロシアが検知したのは宇宙人のシグナル? SETIに聞いてみた

ギズモード・ジャパン 9/4(日) 23:40配信

ロシア連邦カラチャイ・チェルケス共和国ゼレンチュクスカヤ。

地名そのものが宇宙人のシグナルのような場所にある電波望遠鏡「RATAN-600」に、94光年の彼方から尋常ならざる強度のシグナルが届き、あまりの強さに「さては高度文明の宇宙人か!?」と興奮が広まっています。

初報を伝えたのはSF作家のポール・ギルスター。N. N. Brusilov率いるチームが電波をキャッチしたのは昨年5月15日で、発信源はヘルクレス座にある「HD164595」の方角とのことです。詳しい成果は今月27日に開かれる国際宇宙飛行学会 (IAA) の「地球外知的生命体探査(SETI)」分科会で発表し、永久的な監視を呼びかける意向です。

100光年未満というと、宇宙の尺度で隣の家ぐらいの感覚。もし誰かいるのなら、往復188年かけた生涯のメル友になれますね。

「HD164595」はサイズと化学組成が太陽そっくりな恒星でありまして、すこし太陽より起源が古いので文明が発達する時間はそのぶん長めということに。周りを海王星そっくりの温暖な惑星が回ってます。そこには(その周りを回る衛星が居住可能でもない限り)生命体はいそうもないのですが、未発見の惑星がほかにもあって岩石惑星だった場合には、見張りが要るチェックポイントとなります。

今回のシグナルにはSETI協会も関心を示し、電波干渉計「アレン・テレスコープ・アレイ」でスキャン中です。まだ成果は出ていないのですが、すべての電波周波数をカバーしたわけではありません。いちおう光ビームでのメッセージだった場合も考えて、パナマにある光学SETI天文台でも観測してみる予定です。

ジョディ・フォスターが演じた宇宙人ハンターはこう見る

映画「コンタクト」のジョディ・フォスターの実在モデルと多くの人に信じられているSETI協会創設者のジル・ターター博士に早速お話を伺ってみたら、これだけ騒がれたのはニュースの広まり方がSFだったからかもね、と案外冷静でした。チーム研究員が「SETI候補のシグナル検出)」というタイトルでメールを流し、それをSF作家のポール・ギルスターがサイト「Centauri Dreams」で公開した――これは相当稀なパターンらしいのです。このように話しています。

”「長年試して決めたプロトコルに全然従ってない。電波の再探知もなし。ほかの観測所からの確認もなし。それをやるよう指示を受ける前に、もう発表に踏み切ってしまったんです」”

まあ、それを言うなら探知から15ヶ月間も公開しないのも腑に落ちませんけどね。なるべく多くの人に広めて再探知と確認を急ぐ方が科学的なんじゃ…と、思わないでもありません。

そもそも、地球外からのシグナルでない確率の方が高いそうなんですね。似たような現象は太陽フレア、バックグラウンド源のマイクロレンズ現象、活発な銀河核なんかの自然現象から、下手すると衛星が通過するだけでも起こるので、この手の電波でいちいち騒いでたらキリがない、発表は再探知してからってことになっているのだとか。たとえば去年オーストラリアで謎の電波がキャッチされたときも、発生源はなんのことはない、屋内の電子レンジ2個でした。チーン。

今は電波が混雑していて、宇宙人ハンターも楽じゃないんだそうですよ? 「ポケモンGOで歩き回る人たち」が発する電波もあるので「高周波帯でも雑音だらけの世界だ」と、ターター博士はこぼしてました。ポケモンハンターでエイリアンハンターが迷惑していたとは知らなんだ…。

あとロシア人研究員たちが言ってる出元にしても100%正しいという保証はありません。「RATAN-600」はかなり異色な電波望遠鏡なので、正確な出元を特定するにはほかの観測所による再確認が必要。そうなると、またこの尋常ならざる強さのシグナルをキャッチしなければならなくて、それはもう2度と起こらない可能性もあります。

「開口部がすっきりクリアなオフセットパラボラアンテナと違って、Rattan-600はサイドローブがむちゃくちゃ変態なのよ。チームは点光源のビーム形状を再現できたって言ってるけど、シグナルはどの方角からでも入る可能性があると思いますね」

宇宙人のシグナルという点についても懐疑的で、それはたった1台の望遠鏡で特定できるようなものではなく、何台も並べたアレイで観測した方がずっと信頼度は高いと言ってました。

”「今は持続性と再現性のところで足踏み状態ですね。うちはWoW!シグナルとか今回のみたいな一過性のシグナルはあまり信じないようにしてるんです。テクノロジーの進歩で『全天空常時観測』システムの開発着手に向かってはいます。でもそこまでは到達できていないのが現状です」”

なるほど…。

ちなみにロシアが観測時に使ったディッシュの周波数は1GHzという、かなり強力なものでした。1GHzというと、その幅はSETIが通常使っている周波数の10億倍、テレビの電波の約200倍。SETI現所長のSeth Shostak博士によると、シグナルの強度は0.75 Janskysで、博士の感覚では「弱い」部類です。もしかしたらロシアの受信機の帯域幅があまりにも広いので強度が弱まっちまったのかもしれん、とのこと。

独自の検証を行ったSETI@HomeのDan Werthimerのチームからは以下のコメントが届いています。

”UCバークレーのチームが100メートルのグリーンバンク望遠鏡で恒星HD164595の方角を観測してみたが、10 milliJanskysでは何も観測されなかった。RATANの観測結果を否定するものではないが、裏付ける要素は特に得られなかった。”

ヘラクレス座は本日も平穏なり。異常なしってことっすね。

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最終更新:9/4(日) 23:40

ギズモード・ジャパン