ここから本文です

無敵ヘッジファンドも諸行無常の響き 夢のファンド“LTCM”はなぜ敗れたのか

THE PAGE 9/7(水) 17:00配信 (有料記事)

 現在の金融市場で圧倒的な存在感を誇るのがヘッジファンドである。日本の巨大機関投資家も彼らに振り回される側だし、銀行のディーラーも、相場に与える影響という点で、ヘッジファンドマネージャーからすれば子どものようなものだ。

 また、ヘッジファンドマネージャーは、一つの職業としては、ほかに比肩するものがないほどの高報酬で知られる。米国の大企業トップには、年収数十億円を得るものがごろごろしている。これでも、わが国の基準に照らせば信じがたいような金額だが、トップクラスのヘッジファンドマネージャーになると、さらに桁が一つか二つ上がる。

 では、これらヘッジファンドは無敵の存在なのだろうか。何が起きるかわからない市場の中では、彼らとて絶対の存在ではない。もちろん、ヘッジファンドは全体として市場でのシェアを伸ばし続けている。それは、彼らがほかの投資家たちよりも、どうすれば投資で利益が出るのかについて深く理解していることを示唆している。しかし、強みが弱みに代わることもある。(解説:ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役・田渕直也)


  夢のファンドLTCMとは?

 ロングターム・キャピタル・マネジメント、略してLTCM。1994年に設立されたヘッジファンドだ。名門投資銀行ソロモン・ブラザーズ(現シティグループ)の伝説的トレーダー、ジョン・メリウエザーが立ち上げたファンドで、当時最先端のテクノロジーを装備し、マイロン・ショールズ、ロバート・マートンという金融工学の世界的権威をボードメンバーに加えたまさに“ドリーム・ファンド”だ(ショールズとマートンは、1997年にノーベル経済学賞を受賞している)。

 その投資戦略は、「リラティブバリュー」と呼ばれるものである。簡単にいってしまえば、単純な上げ下げといった相場の方向性にかけるのではなく、割安な証券の買いと割高な証券の売り(空売り)を組み合わせるのである。それぞれの割安さ、割高さが解消されるときに利益が生まれる。

 そうした割安さ、割高さを判定するために、金融工学や統計的手法が駆使される。いわばハイテクファンドだ。ソロスやポールソンのように、相場の方向性にかけて一世一代の大勝負を仕掛けるのとはずいぶんイメージが違うが、これもヘッジファンドの主要戦略の一つであり、むしろ、こちらの方が王道といっていいかもしれない。


  コピー続出の世界一洗練されたファンドに突如として訪れた危機

LTCMは設立以来、前評判にたがわぬ成績を上げ続け、世界中から投資資金を集めるようになった。それだけではない。彼らの運用をまねたコピーファンドがいくつも設立されるなど、世界で最も洗練されたファンドとみなされたのである。

 そんな中、1997年にはアジア危機が、1998年にはロシア危機が発生した。こうした危機が起きると、投資家たちは、価格変動が少なく、かつ、取引量が多くていつでも現金化できる商品に殺到する。国債はその典型だ。その一方で、投資価値は高くても、そうした条件を満たしていない商品は叩き売られる。いわゆるリスクオフである。

 そうすると、国債は本来のあるべき価値よりも割高になり、それ以外の商品は本来の価値よりも割安になる。それがLTCMにとっては絶好の投資機会になる。そう考えた彼らはポジションを大きく積み上げた。

 ところが、1998年8月にロシアが債務不履行(デフォルト)を宣言すると、市場は混乱に陥り、割高なものがさらに買われ、割安なものがさらに売られるようになった。この展開がLTCMに巨額の損失を生じさせ、今度はそのニュースが市場に一層の大混乱を生じさせることになったのである。

 LTCMは、破たんするに任せるには大きすぎる存在であったため、その後救済措置を受けつつ、時間をかけて清算される結果となった。“夢のファンド”は、いったいなぜ、このような大失態を演ずることになったのだろうか。



  本文:6,326文字 この記事の続きをお読みいただくには、THE PAGE プラスの購入が必要です。

  • 通常価格:
    648円/月(初月無料)
  • 会員価格会員価格:
    540円/月(初月無料)

サービスの概要を必ずお読みいただき、同意の上、ご購入ください。

Yahoo!プレミアム会員登録はこちら(月額498円)

最終更新:9/7(水) 17:00

THE PAGE

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。