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焦点:日米中銀会合の「前哨戦」、強弱材料交錯し円安・株高は一服

ロイター 9月5日(月)18時37分配信

[東京 5日 ロイター] - 8月米雇用統計と日銀総裁講演という日米金融政策の先行きを占う2つの重要な材料は、ともに判断が難しい内容となった。米雇用統計は内容が強弱まちまち。日銀総裁会見も9月の追加緩和を強く示唆する内容ではなかった。

米利上げと日銀緩和を材料に進んできた足元の円安・株高は一服。「本番」までレンジ感が強まる可能性も大きい。

<各市場で雇用統計を都合よく解釈>

8月米雇用統計後の市場反応は、整合的とは言えない動きだった。2日の米市場では、早期の米利上げを織り込む形でドル/円<JPY=EBS>は104円前半までドル高が進んだが、米株市場では反対に利上げ後退と受け止めて株価は上昇。米金利市場では各年限でまちまちの動きとなった。

確かに雇用統計の結果は、早期の米利上げを判断するには、悩ましい。非農業部門雇用者数の伸びが15万1000人と、市場予想の18万人に届かなかった。しかし、3カ月平均でみれば、23万人強と順調なペース。また、8月の雇用者数は当初弱めに出て、その後、大幅に上方修正される傾向が強い。

一方、米雇用市場が完全雇用に近づいているために、雇用者数が伸びにくくなっているとするなら、賃金は徐々に上がっていく可能性が高い。だが、8月の時間当たり賃金は前月比0.1%増と、7月の0.3%増から伸びが鈍化してしまった。

「9月に利上げを無理にしなければならない内容ではなかったが、その可能性が消える内容でもなかった」と、三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏はみる。各市場が都合よく8月雇用統計の内容を解釈したために、統一感が乏しい市場反応になったようだ。

<まちまちな黒田講演の受け止め>

5日の黒田東彦日銀総裁の講演も悩ましい内容だった。

今回の黒田講演から導き出される「検証」の内容は、簡単に言えば、量的・質的金融緩和は効果があったが、原油と消費増税のせいで2%には到達しなかった。マイナス金利は金融機関の収益圧迫など副作用があるけれど、2%の物価達成には、それを上回るベネフィットがあり、3次元の追加緩和も必要であればちゅうちょしないというものだ。

しかし、検証と合わせて追加緩和があるかどうかのヒントはなかった。このため黒田講演を受けて、日経平均<.N225>は1万7000円台、ドル高/円安は104円でいったん失速。それだけであれば、市場は講演内容を緩和後退と受け止めたようにみえるが、銀行株が軟化したように、マイナス金利を含めた追加緩和の可能性は高いとの見方も根強い。

シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏は、9月会合は「検証」だけで、追加緩和は見送られる可能性があるとみる。「もし追加緩和があれば、検証の印象は格段に低くなる。それは日銀も望まないだろう。市場とのコミュニケーションの場として、ともに議論できる土俵を作ることが重要であるからだ」という。

一方、今回の講演で、黒田総裁が金融機関の収益圧迫というマイナス金利の副作用(コスト)に言及したことから、追加緩和の際にはそうした副作用を抑える政策フレームに変更されるとの見方も浮上している。「マイナス金利を深堀りする一方で、量の緩和を調整し、長期金利を上昇させれば、長短金利差は拡大する。金融機関は利ザヤを稼げることになる」(外資系証券エコノミスト)という。

ただ、長期国債の購入額を(非明示的にせよ)減らす一方で、新しい資産買い入れを行う可能性もあり、追加緩和の内容は依然として不透明だ。

<市場の利上げ織り込み度が重要>

今回の日米2つの「前哨戦」で、相場の方向性は決まらなかった。9月20─21日に行われる日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)の「本番」まで、様子見商状が強まり、レンジ取引になる可能性もある。

だが、9月米利上げが実施されるとすれば、市場の織り込みは不十分だ。CMEフェドウォッチによると、金融市場が織り込む9月利上げの確率は約21%に過ぎない。「もし、この状態で9月利上げが実施されれば、市場や経済へのショックが大きくなる」とマネックス証券チーフ・アナリストの大槻奈那氏は指摘する。

市場に9月米利上げを織り込ませようとするなら、今後のFRB(米連邦準備理事会)幹部の講演などで、タカ派的なトーンが強まるはずだ。一方、市場が9月利上げを織り込み、円安が進むなら、日銀追加緩和の可能性は低くなるとみることもできる。

ただ、もしそうでなければ、市場の織り込みが進むことは危険だ。市場の織り込みが進まなければ、9月の米利上げが見送られても、反動(失望)の円高は小さくて済むが、織り込みが進めば、円高の幅が大きくなる可能性がある。

米利上げの影響力は、昨年12月の米利上げ後のグローバルマーケットが大きく荒れたことで証明済み。マーケットがショックを受けないためにも、「本番」までのこれからの期間が、重要になってくるといえそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

最終更新:9月5日(月)18時46分

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