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【あの時・延長50回の死闘】(1)4日間10時間18分両投手1398球

スポーツ報知 9月5日(月)15時2分配信

▽全国高校軟式野球選手権・準決勝 中京3―0崇徳=延長50回=(2014年8月28~31日・兵庫、明石トーカロ)

【写真】試合会場だった明石トーカロ球場には、試合のスコアシートが記されたプレートが設置されている

 2014年8月、高校野球史に残る激闘が生まれた。全国高校軟式野球選手権の準決勝(明石トーカロ球場)。中京(岐阜)と崇徳(広島)の一戦は延長15回でも決着がつかずサスペンデッドゲーム(特別継続試合)に突入し、世界最長記録となる延長50回までもつれ込んだ。4日間、誰にもマウンドを譲ることなく投げ続けた中京・松井大河、崇徳・石岡樹輝弥(じゅきや)の両投手は、どんな思いで戦っていたのか。長い長い夏の日の記憶を追った。

 ◆14年全国高校軟式選手権準決勝

 0、0、0…。得点欄に並んだ数字を、中京の松井は苦笑いを浮かべつつ見つめた。「自分たちがやったことではあるんですけど、改めて見ると…」

 スコアシートは1枚につき延長12回まで記入できるが、残されたそれは何と5枚つづり。試合時間は4日間で計10時間18分、投球数は両投手合わせて1398球。通常の野球の試合では考えられない記録が刻まれていた。

 毎年8月に開催される全国高校軟式野球選手権。中京はこの大会で過去6度の優勝を誇る名門だったが、前年の2013年は全国大会まで進むことができなかった。「自分たちの代は、全国に行けなかった悔しさからスタートしました」と松井。雪辱の思いを胸に、目指す7度目の全国制覇へ順調に勝ち進んでいた。

 そこに立ちはだかったのが、12年ぶりの出場となった崇徳の石岡だった。下馬評では圧倒的に中京有利。「相手が強いことは知っていたので、こちらとしては番狂わせ狙い。ただ、試合に入ると真っすぐとスライダーがすごく良かったんです」

 8月28日午前9時59分にプレーボールがかかった一戦。中京打線は、石岡が自信を持っていたスライダーに手を焼き凡打の山を築いた。一方の崇徳も制球力に優れた松井を打ち崩せず、互いに膠着(こうちゃく)状態が続いた。

 好投を続けた石岡は、背番号6の2番手投手。エースの189センチ右腕・重松勝実(3年)が夏の県大会に入った頃から調子を崩したため、急きょ主戦を任されたのだった。実は、初戦の上田西(長野)戦で右手人さし指に血マメができ、7回を投げ終えたところで降板。この先の登板は厳しいと見られていたが…。

 「(血マメの)皮がめくれずに血だけが抜けて、そこにまた皮が張り付いていい感じになったんです。ラッキーでした。もし皮がめくれていたら、次の試合からは投げられなかったと思います」

 石岡は2日後の2回戦には無事間に合い、何と完封勝利。松井との投手戦は、偶然から生まれたものだった。

(種村 亮)=敬称略=

 ◆サスペンデッドゲーム 一般に「一時停止試合」といい、天災や日没、照明設備の故障などで試合続行が不可能と判断された場合に試合を一時停止し、後日、中断した時点から再開すること。全国高校軟式野球選手権では健康への配慮から延長15回ごとに試合を止め、翌日再開する。プロ野球ではパ・リーグのみ採用されていたが、2012年1月の同理事会でアグリーメント(申し合わせ事項)から条項が削除された。ほかにゴルフやテニス、サッカーなどが採用している。

最終更新:9月5日(月)15時29分

スポーツ報知

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