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【あの時・延長50回の死闘】(5)陰の軟式が目立つようになったかな

スポーツ報知 9月5日(月)15時9分配信

▽全国高校軟式野球選手権・準決勝 中京3―0崇徳=延長50回=(2014年8月28~31日・兵庫、明石トーカロ)

【写真】14年8月31日、崇徳・中京戦を観戦するため、たくさんの観客が球場に集まった

 大会後、地元の岐阜に戻った中京・松井は突如、高熱に襲われた。そのまま病院に直行すると「筋肉の使い過ぎとか、疲労からきていると診断されました」。崇徳・石岡は秋まで腰痛に悩まされた。見る者をしびれさせたドラマチックな戦いは、2人の体に大きな爪痕を残していた。

 延長50回の死闘は、高校球界を動かすことになる。日本高野連の竹中雅彦事務局長が当時、「サスペンデッドゲームの限界が見えた」と話したように、翌15年度の同大会では決勝戦を除いて延長13回以降は無死一、二塁から開始する「タイブレイク制度」が導入された。軟式にとどまらず、硬式でも昨年から甲子園に直結しない春季地区大会では同制度を全国規模で採用している。

 あれから2年。2人は現在、大学の準硬式野球部に在籍している。石岡は進学先の福岡大で1年秋からリーグ戦デビュー。最初こそボールの重さの違いなどに戸惑ったが、2年の春季リーグではチームの優勝に貢献しMVPにも輝いた。中京大に進んだ松井は肘の故障などに苦しんだが、今年の春から徐々に登板機会が増え始めた。

 中京大と福岡大は、8月に宮城県で開催された全日本選手権にそろって出場。ただ、松井はメンバーに入ることはできず、両大学が直接対戦することもなかった。リベンジの機会を逃した石岡だが、「再戦するのはちょっと照れくさいですけど…。今度は勝たないといけないですね」と意欲的だ。

 改めて振り返ろう。両チーム合計の安打数48、三振59、四死球32はいずれも参考記録ながら大会最多。両投手が完投した一方、審判は仕事の都合で日ごとに入れ替わり、1試合を通してジャッジした者は1人もいなかった。そうした4日間に及んだ延長50回の死闘。松井は勝ったこと以上に誇らしげに思っていることがある。

 「やっぱり高校野球といえば甲子園。軟式はどうしてもその陰になってますけど、この試合のおかげで少しは目立つようになったのかな。そうだったらうれしいですね」

 作新学院の54年ぶりの優勝に沸いた今夏の甲子園。同じ夏、全国449校9561人の軟式高校球児たちも懸命に白球を追っていた。(種村 亮)=敬称略、おわり=

 ◆硬式野球と軟式野球 日本高野連によると、16年5月末時点での加盟校の硬式野球部員は16万7635人。一方、軟式の野球部員は9561人と約17倍もの差がある。加盟校数も硬式の4014校に比べて、軟式は449校と1割強。硬式の全国大会は甲子園を舞台に春夏と開催されるが、軟式の場合は8月の全国高校軟式野球選手権のみ。球場は兵庫・明石市の明石トーカロ球場がメインとなる。

最終更新:9月5日(月)15時35分

スポーツ報知

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