ここから本文です

ロット・バルト・バロンがKORG歴代シンセを弾く! スペシャルイベント<KORG SESSION>レポ

BARKS 9/5(月) 11:50配信

ROTH BART BARON(ロット・バルト・バロン)とコルグによるスペシャルイベント<ROTH BART BARON oresents KORG SESSION>が開催された。

SF映画をテーマにカナダ・モントリオールでレコーディングされた2ndアルバム『ATOM』が高い評価を得ている三船雅也(Vo/Gt)と中原鉄也(Ds)から成るフォーク・ロック・バンドROTH BART BARON。そして、未来のヴィンテージ、新世代ポリフォニック・アナログ・シンセサイザー「minilogue」と発売したコルグ。出会うべくして出会った両者がシンセサイザー好きに送るスペシャルイベントが<KORG SESSION>だ。

イベントには1978年発表のMS-20をはじめ、Polysix、Mono/Poly、MS2000、?(デルタ)、POLY-61、M1、WAVESTATION、RADIAS、microKORG……、そして2016年発表の「minilogue 」まで往年の名機が集結。これらを使って、サポートメンバーを交えた5人編成のROTH BART BARONが演奏を披露。ライヴの模様は映像チームSLEEPER FILMによってシューティングされる。

開演前の約1時間は、ライヴ用にセッティングされたこれらのKORGシンセを観客が自由に触れるというのが、<KORG SESSION>ならではの趣向。普段は触ることも見ることもできないようなヴィンテージシンセの数々を、実際にツマミと回したり鍵盤を弾いたりと、自由に楽しむ観客。もちろんライヴ用に用意されたシンセだけあって、音もバッチリ。試奏だけでなく、写真を撮ったりとシンセ好きにはたまらない時間が流れる。

そしてROTH BART BARONのメンバーが登場し、いよいよライヴがスタート。と思いきや、5人のメンバーがまずシンセをいじりだす。プリセットがないアナログシンセ中心の構成なので、まずは音作りからスタートというわけだ。先ほどまで観客が自由に触っていたシンセを、楽曲に合わせてセッティングしていく。「普通のライヴと違って1曲1曲セッティングがすごいことになってる」(三船)と観客を笑わせつつも数分で準備を終えるところはさすが。

ハイトーンなボーカルとKORGシンセにより紡ぎ出されるサウンドスケープ。サポートメンバーの西池達也(Key)、竹内悠馬(Tp、Per、Key)、大田垣正信(Ba、Tb、Key)によるさまざまな楽器を交え、重層的な音空間が広がっていく。アナログシンセならではの時に太く温かいサウンドに、ギター、ベース、ドラムにトランペットやトロンボーンなども加えたオーガニックなサウンドに観客はうっとり。

■「minilogue」の開発秘話が語られたトーク・セッション

4曲の演奏を終え、三船から今回のイベントについて説明。昨年のカナダ・モントリオールのスタジオでのレコーディングでコルグのシンセサイザーを多用する機会に恵まれ、「?(デルタ)やPolysix、あまりにコルグコルグしていたレコーディングだった」ことから「コルグさんといっしょにセッションできるんじゃないか?」と思いつき、自身でコルグに乗り込んだことが今回のイベントにつながったと紹介。その際に発売されたばかりの「minilogue」と出会い、「作ってた人が同年代の人達だったので、ぜひお話を聞いてみたいなと思って、今日はここに来ていただきました」と呼びこまれたのが、コルグの高橋達也氏と山田嘉人氏の2人。三船を司会にトークセッションがスタートした。

2010年発売のmonotronからアナログシンセの開発をやっているという高橋氏。続くmonotribe、MS-20 miniの開発、ARP Odysseyのリイシューにより「アナログってやっぱいいよね、という提案をしつつ、かつ失っちゃいけない歴史を維持するっていうか、世代問わずシンセに触れてもらいたかった」「monotronもMS-20のフィルターが入ってたり、volcaにはminiKORGのフィルターが入ったりと、いろんな歴史的な名機から引用」してきたものの、やりたかったのは「今の技術を使って、今の解釈でアナログをやったらどうなんだろう?」ということ。「そろそろいいんじゃないかってことで、昔の名機から引用しない、スクラッチから作ってシンセを作りたいっていうのがminilogueなんですよね」と開発に至る経緯を紹介。おもに回路の開発を手がけた高橋氏に続き、アーティスト、ユーザーに届くまで具体的な形を作る実務を担当したという山田氏が発言。「鍵盤に携わる内容をやるのかなと思いきや、試作を繰り返すうちに回路が全部置き換わってしまったりとか。フルスクラッチで作るとなると、1回ではうまくいかないところもあるので、繰り返してようやっと発売にこぎつけたという感じです」とその苦労を語った。

「これまで出していたアナログシンセってプリセットがなかったんですよね。だから使っていた音色を呼び出すとか、そういうのができなかったんですけど。それが(minilogueでは)途端にできるようになったし、ポリフォニックだからいろんな曲に使えるし。便利になった分、失われるものがないんじゃないかな、というのがけっこう悩んだところで。やっぱり、やってるうちに『これいいじゃん!』みたいな、発見が予想できない感じになるようにすればいいんじゃないか。」(高橋氏)と、便利になりすぎることによる葛藤があったとも。それに対して三船は「(minilogueは)触ってるとアクシデントが起きるんですよ」とコンピューターのマウス操作では生まれない体験に言及。「ここいじってると予期しない音が発動するっていう直感感みたいなのがあって。インターフェイスがこういうのじゃないと出ない、アナログシンセじゃないと」「マウスだと数値の話になってきて。どのソフトでも同じ。絵をかいてる人もそうだけど、アクシデントが起きづらいと思うんです」と、フィジカルなアナログシンセと、画面で操作するコンピューターを比較。

また三船は、YouTubeをはじめインターネットにより古い音楽やシンセを知ることができた結果、最新の価値観で古いものを再解釈できるようになった一方で、「その分けっこう頭でっかちになっちゃって」と続ける。「実際の体験が伴わないコンプレックスが非常に僕個人が抱えていて。それゆえに自分が肉体的に音楽をやってみたりとか、いろんな国に行って音楽を演奏して、そこで帰ってフィードバックを実際に体験するっていうのが、すごく大事」「そのハングリーさとその頭でっかちを克服しようとして、体験と知恵と経験をなんとか両立させようとっていうか。知識ばっかりじゃなくて。それをすごく全体的に求めてるんだろうなっていうのがあって」「それにminilogueってのが出てくるのって、けっこう必然っていうか、そりゃそうだよな」とも。

これに答えたのが高橋氏。「ほんとにシンセ界って頭でっかちだったと思いますよ。10年前……5年前でも今とけっこう違ったと思うんですけど、かなりヴィンテージオタクみたいな人がいて、すごくお金持ってて、すごくいろんな機材を知ってて。シンセサイザー自体にも詳しくて、とか。そういう人たちに限られたクローズドなものであって、外から入るにはYouTubeで覗けるぐらいみたいな感じで……、ほんとに体験できないっていう状況だったと思うんですね。それを変えたかったっていうのがmonotronだったりとか。この流れの僕らの意図というか夢があって。ある意味これ(minilogue)が1つのゴールというか、1つの結果の……なんていうか塊にになったんじゃないかと思うんですけどね。だから価格も重要でしたし」と約5万円(税別)という価格を説明。「高校生が最初のシンセに買ってほしいんだよね」とは山田氏。

トークセッション後半ではゲストとして難波弘之も登場。今回のライヴに使われたminiKORG700が、実は氏の私物だったことが明かされ、シンセ以前のコルグ製品の歴史などトークはさらにディープな話題に突入。また、当日初めて触ったというminilogueについて「なかなかおしゃれですね。私たちの年代にはないおしゃれさ(笑)」と会場を笑わせつつも、波形を表示するオシロスコープやそのサウンドに「ただのアナログの再現じゃこうはいかない」と気に入った様子。

時間を大幅にオーバーするほど盛り上がったトークセッション後、ラストは今回のイベントのためにminiligueとKORGシンセだけで作ったという新曲を演奏。5人のメンバー全員がKORGシンセに向かい、会場内にしみわたるボーカルとともにゆったりとした音の空間を作り出した。


アーティストのすばらしい演奏を間近で見ることができ、さらにそのアーティストが演奏する楽器を実際に触って音が出せるという貴重かつ贅沢な体験ができた今回の<KORG SESSION>。終演後の「またできるといんですけど」という三船の発言を信じて、次回の開催も期待したい。

最終更新:9/5(月) 12:24

BARKS