ここから本文です

新海誠監督が最新作『君の名は。』で新たに紡ぎ出した物語と世界、その生み出された背景

SENSORS 9/5(月) 17:00配信

最新作『君の名は。』が8月26日に公開となった新海誠監督。まだフルデジタルアニメーションが珍しかった2002年に『ほしのこえ』をたった一人で作り上げ、ネットを中心に広まり話題となった。その後もデジタル制作の強みを生かした演出や表現を広げ、『言の葉の庭』では一部ムービーも取り入れたビデオコンテの制作を行うなど、常にテクノロジーと共にあるアニメーション監督である。そんな監督の3年ぶりの新作、現在公開中の『君の名は。』について伺った。

【画像6枚】SENSORS:「『新海誠監督が最新作『君の名は。』で新たに紡ぎ出した物語と世界、その生み出された背景」画像一覧

8月25日、最新作『君の名は。』の公開を翌日に控えたこの日、都内にある新海誠監督の仕事場でインタビューをする機会を得た。

■物語や映画を紡ぐ手つきみたいなものが、今までに比べてだいぶ余裕が出てきたような感覚があった

--まず最初に『君の名は。』をこれから観る人へ込めた想いを聞かせてください。

新海: 僕の今までの作品を好きだと言ってくださる方々は、ずっと居てくださるわけですけど、僕の名前を知らずに「面白そうな映画やっているな」とCMで見たり、劇場で予告編を見たりして、それで映画を観てみて「ああ、楽しかった!」「すごく良かった!」と。できればそんな風に思ってもらって劇場を出てもらえるような、本当に普通の映画として、監督名で観るとかではなくてシンプルに映画として劇場で楽しんでもらえるような体験を特に若いお客さんたちに提供できればという気持ちが一番最初に立っていました。

--小説版『君の名は。』の解説にプロデューサーである川村元気さんが「新海監督のベスト盤」にして欲しいとおっしゃったというお話がありますが、実際に映画を拝見すると、ピアニストのベスト盤がバンドサウンドになって帰ってきたかのような変化を感じました。

新海: 前作が『言の葉の庭』という中編の作品だったので、それを観た上で『君の名は。』を見ると、もしかしたら何かジャンプがあるかのように驚かれるかもしれませんが、僕の中ではずっと連続感があるんです。『言の葉の庭』は3年前の公開でしたが、『君の名は。』の制作にとりかかる前の1年間に大成建設の30秒のCMが2本あったり、通信教育のZ会の2分間のCM『クロスロード』であったり、なによりも本の雑誌のダ・ヴィンチで『言の葉の庭』のノベライズを8ヶ月間連載していたんです。それは僕自身にとっては物語を一話一話紡ぐ経験でもあったし、鍛錬でもあったし、その1年間の延長線上に『君の名は。』があるんです。

--ということは、『君の名は。』のようなエンターテインメントをずっと目指していたという気持ちがあったのでしょうか?

新海: そうですね。僕は『言の葉の庭』もエンターテインメントのつもりで作っていたし、その前の作品も力が及ぶ範囲でエンタメにしたいという気持ちで作ってはいたんですけど、でも何か足りないという感覚はもちろんあったんですね。個人制作から入ってきたというのもありますし、特に初期の頃はスタッフもあまり多くなかったので、意図的に話というか登場人物の数も少なくして、自分自身の能力と手持ちの環境も限定している中でベストなものを作ろうとやってきたんですけど、「やりたいこと」に追いついていないという感覚はずっとありました。
スタッフについては前作、前々作から力のある人たちがたくさん来てくれていたので、後は自分の問題だと思っていました。『君の名は。』を作り始める2年前、企画書を書き始めた時点で物語や映画を紡ぐ手つきみたいなものが、今までに比べてだいぶ余裕が出てきたような感覚があったんです。
例えば今回コメディ要素などもありますが、今ならば喜怒哀楽も、感情の全方位に向けて刺激できるようなそういう映画ができるかなという実感はありました。なので『言の葉の庭』を見た人が今作を見て何かジャンプがあると感じるのは当然だとは思うのですけど、自分のなかではそういう連続性が進んできたことではあります。

1/3ページ

最終更新:9/5(月) 17:00

SENSORS

なぜ今? 首相主導の働き方改革