ここから本文です

「新社長インタビュー」〈フジクラ・伊藤雅彦氏〉=産業・医療用などで新事業創出

鉄鋼新聞 9月5日(月)6時0分配信

――まずは抱負から。
 「これまでの経営方針をしっかり引き継ぐ。内需が成熟化し海外競争が激化する中でも我々は高収益企業になるという強固な意志で歩んできた。特に11年度からの前中期計画では長浜前社長のもと収益強化に向けた取り組みが加速。そのバトンを受け取ったので20年度までの現中計の目標を100%以上達成したい。事業規模は追わず現在4・8%の営業利益率を7%以上に高める」

――収益強化のために重視することは。
 「差別化できる製品を伸ばす。エレクトロニクス関連ではICチップ埋め込み型などのFPCを新たな事業領域である医療関連で展開して高評価を受けている。ここは売上規模は大きくはないが、収益率が高い。また情報通信関連では特徴的な光ケーブルを有している。ほかにも付加価値の高いものを増やし、コストで勝負する部分の比率を減らしていくことが重要だろう」
――電線関連の事業では今後どのような取り組みを。
 「国内市場では4月から三菱電線工業との協業をさらに拡大。建設用電線の合弁販社だったフジクラ・ダイヤケーブル(FDC)を、産業用電線の製造・販売を行う体制にした。対象製品の製造拠点を両社ともFDCに寄せて、全国を網羅できる体制になった。さらに互いに顧客が重なっていない部分があり、先方が強い三菱グループへのアプローチなどで拡大が狙える。併せて我々が持っていなかった製品群を先方が持っていることも利点。今後は互いの強みを生かす構造改革が必要になると思う。リストラだけでなく生産性向上も重視。自動化やIoT(モノのインターネット化)を生かした新たな製造技術に迅速に投資したい」
――海外についてはいかがですか。
 「新興国では電気が通って明かりを灯すことがまずは求められる。電線しか供給しない事業ではなく電力網の設計や施工、メンテナンスを含めて提供するビジネスで付加価値を高めたい。用いる電線はフジクラ製が使えれば我々にとってはベストだが、価格を含め顧客の要望を満足する物を調達して提供するケースもあるだろう」
――情報通信関連の戦略は。
 「伸びとしては海外に期待。特に北米と欧州が狙うべき市場だ。データセンター関連に加えて、建物向けの光回線網であるFTTx向けのビジネスを強化する。そこに差別化が可能な戦略製品として細径で軽量の新型光ケーブルを持ち込みたい。国内の通信キャリアからはお墨付きを得ているので、海外でも安心して使ってもらえると思う」
――自動車関連の事業についてはどのような展望を。
 「ハーネスではこれまでの得意先に加え新たに良好な関係を構築できた大規模顧客がグローバル展開を進めている。当社が持つアジアと米州、欧州の3極の製造拠点でその動きにしっかり対応したい。また現在は労働集約型の製品だが、低コストの自動化設備を導入するなどして利益を高める。ハーネス以外の車載電子部品などではシートベルトリマインダやアンテナに加え、今後はFPCを本格展開したい。自動車の市場はいずれ中国の民族系メーカーが台頭してくると思うので、そのフォローも重視する」
――新規事業の創出に関する考え方は。
 「現有技術を組み合わせ産業や医療などの分野を開拓する。産業分野では加工用のファイバレーザーに期待。グループ内にある光ファイバやレーザー素子など自前の要素技術で、顧客の要求に柔軟かつ迅速に対応できることが我々の強みになる。また医療分野ではICチップ内蔵のFPCのほか画像伝送用のイメージファイバがある。併せて電気自動車や燃料電池車関連でエレクトロニクスや情報通信関連製品のチャンスが見込める。新規事業では2割程度の営業利益率を期待している」(古瀬 唯)
プロフィール
 強いリーダーシップで社内外から人望が厚い。市場の変化が大きいエネルギー・情報通信カンパニーで構造改革に取り組み、成果を上げてきた。座右の銘は「和を以て貴しとなす」。趣味はゴルフとスポーツ観戦。
略歴
 伊藤 雅彦氏(いとう・まさひこ)82年(昭57)静岡大学大学院工学研究科修了、藤倉電線(現・フジクラ)入社、11年フジクラ新規事業推進センター超電導事業推進室長、13年執行役員就任、14年常務執行役員新規事業推進センター超電導事業推進室長、エネルギー・情報通信カンパニー副統括、15年取締役常務執行役員エネルギー・情報通信カンパニー副統括、エネルギー・情報通信カンパニー長。16年4月から社長。福井県出身。

最終更新:9月5日(月)6時0分

鉄鋼新聞