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クルマ離れする若者は、なぜトヨタ「ハチロク」を買うのか

ニュースイッチ 9/5(月) 7:50配信

開発責任者が語る“後期86” 予想をはるかに上回る深化を体験できる

<スポーツ車両統括部長・多田哲哉氏>

 単なるマイナーチェンジではなく違うクルマだと思っている。だから新型86を後期、旧型を前期と呼んでいる。86の名前の由来となった「AE86」もそうだった。前期、後期それぞれにファンがいる。

 スポーツカーの一番のポイントはドライバーの操作にいかにクルマが素直に応え、期待通り動くか。86は発売した2012年から14年の3年間「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」に参戦した。

 毎年アップデートを続け、実戦の中でクルマを鍛え、その部分が研ぎ澄まされていった。

 特に14年にクラス優勝を果たしたクルマの完成度は高く、まさにドライバーが意のままにあやつれる、理想のFR(後輪駆動)車と呼べる仕上がりとなった。その(クラス優勝した)クルマの特性を市販化すれば必ずユーザーに喜んでもらえると確信し、新型86に落とし込んだ。

 ニュルの過酷なコースに対応した成果を生かしてサスペンションを改良し操舵(そうだ)応答性を向上した。フロント・リアバンパーなど外形デザインを変更したのもすべて空力性能を上げハンドリングを向上するため。フェンダー上の86マークの位置を変えたのも、そのためだ。86の走りの半分近くは空力が支えている。

 レーシングドライバーからのフィードバックが特に生かされたのがステアリングとメーター。それぞれ新規開発した。ステアリングは前期型でもトヨタ車最小径だったが、さらに小径化した。握っただけで脇が締まり、より正確なハンドル操作ができる。

 メーターはタコメーターの配置を見直した。回転数ゼロを真下に、最高出力付近の7000回転を真上に配置し視認性を高めた。後期86は走りだした瞬間に予想をはるかに上回る深化を体験できる。

 86は12年の発売当初は40―50代が購入者の中心だった。若い頃スポーツカーがほしかったけど買えなかったという人だ。ただ、そこからどんどん年齢が下がっていき最近では月によっては20代が購買層のトップになる時もある。女性ユーザーも増えている。

 後期86では、さらに顧客層を広げるため前期では一切しなかったテレビCMも始めた。後期86の投入で前期の中古車も増える。「86カルチャー」の仲間がもっと広がると期待している。

【記者の目・ニュル参戦10年の集大成】
 若者にとって決して安いとはいえない86が「スマホ世代」の20代に多く購入されている。若者のクルマ離れという問題の本質は、やはりメーカーの若者離れだったと実感する。後期86はニュルブルクリンク参戦10年間の集大成とも言えるクルマ。さらにファンを拡大し「スポーツカーカルチャー」を復興できるか。
(文=名古屋・伊藤研二)

最終更新:9/5(月) 7:50

ニュースイッチ