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普及進む小規模多機能ホーム 岡山県内160超、在宅介護支える

山陽新聞デジタル 9月5日(月)9時57分配信

 通い(デイサービス)、宿泊(ショートステイ)、訪問介護を組み合わせて提供する「小規模多機能型居宅介護事業所」(小規模多機能ホーム)が、介護保険サービスとして創設されて10年。国が在宅医療・介護を推進する中、超高齢社会の在宅を支える施設として岡山県内でも普及が進んでいる。一方で、社会的にはそのメリットや機能がまだ十分には理解されておらず、必要な人にサービスが届いていない懸念もある。

 「通いも宿泊も使いたい時に使えるのが助かる」。小規模多機能ホーム「たんぽぽ」(岡山市南区豊浜町)で利用者家族の50代女性が笑顔を見せる。

 2人で暮らす父親(87)が昨秋、肺炎で入院したのを機に寝たきりとなった。会社勤めの女性が父親の在宅復帰を諦めかけた時、かかりつけ医に偶然教えられたのが同施設だった。

 父親は退院直後から宿泊サービスを活用し、リハビリで歩けるまで回復。現在は通いに切り替え、時に宿泊も使う。「利用形態を変えても職員が同じなので父も安心感があるみたい」と女性は言う。

 担当ケアマネジャーで女性看護師(46)は「ここでは終末期でもケアが可能。最期まで在宅で過ごせるよう本人と家族を支援したい」と話す。

柔軟にプラン変更

 小規模多機能ホームは2006年に導入された24時間無休の地域密着型サービス。介護保険制度導入前から民家などで高齢者に介護や支援を提供していた「宅老所」をモデルに事業化したとされる。

 少人数登録制による家庭的な雰囲気で、専任のケアマネがプランを柔軟に変更できるのが強みだ。利用料は食費や宿泊費を除き、要介護度に応じた毎月の定額制となる。

 県によると、4月1日現在の県内事業所数は165施設で年間10~20施設のペースで増加。利用者は同日現在で2763人おり、25年には約5千人と2倍近くに増えると想定している。

半数が赤字経営

 課題は社会的な認知度の低さだ。

 福祉施設の経営サポートなどを行う独立行政法人・福祉医療機構(東京)によると、小規模多機能ホームの半数は利用者が少ないために赤字経営といい、「市民だけでなく、ケアマネやソーシャルワーカーら連携機関の中でさえ、役割やメリットが十分に知られていない」と指摘する。

 デイサービスなど他サービスに比べ、「複合型」のため、仕組みが分かりづらい上、事業所ごとにサービス提供の方針が異なるのも複雑さに拍車を掛ける。認知症や医療的なケアの程度による受け入れ態勢、看(み)取りまで対応できるかなどは施設ごとに確認が必要だ。

 12年には訪問看護にも対応した看護小規模多機能ホームも登場しており、高齢者福祉に詳しい県立大保健福祉学部の山本浩史准教授は「在宅支援の中核を担うと期待される利便性の高いサービスだが、患者や家族がその内容を熟知するのは難しい。まず地域の関係機関が正しく理解し、必要とする人に提案できる体制づくりが急務だ」と話している。

最終更新:9月5日(月)9時57分

山陽新聞デジタル