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国内外名手集うWASJで高知競馬の永森大智が奮闘 活躍の場広がること願う

デイリースポーツ 9月6日(火)14時0分配信

 8月27、28日に札幌競馬場で開催された2016ワールドオールスタージョッキーズ。ミルコ・デムーロ騎手が2位武豊騎手に19ポイント差をつけて初優勝。チーム対抗戦はJRA選抜がWAS選抜を下した。

 場内から大声援を受け、3位の表彰台に立ったのが高知競馬の永森大智騎手=雑賀正光厩舎。ニューヒーローだ。

 レース前夜の金曜。札幌市内でウエルカムパーティーが開かれ、出場全騎手が出席した。カメラマンや記者たちが追い掛けるのは、昨年優勝のジョアン・モレイラ騎手、凱旋門賞で8戦全勝の無敗馬ラクレソニエールに騎乗するクリスチャン・デムーロ騎手、兄弟対決が注目されるミルコ・デムーロ、日本の至宝・武豊ら。そんな輪から離れた会場の端で、永森は家族と一緒にいた。“今は注目されていなくても、レースでアッと言わせてやろう”。真っすぐな目と、精かんな顔つきからは、そんなオーラが放たれていた。

 高知県高知市出身の29歳。高知競馬では赤い勝負服で騎乗することから“赤い彗星”の愛称で親しまれている。13、14年と福永洋一記念を連覇。昨年、780戦203勝の輝かしい成績を残し、初のリーディングに輝いた。「赤岡さんが2カ月いなかったので、(リーディングを)獲れたけど、自分の実力が伸びたとは思っていません。先生や馬主さんがいい馬に乗せてくれるおかげ。獲らせてもらったリーディングです」。3000勝ジョッキーの赤岡修次騎手が2カ月間、南関東で騎乗したことで得た栄冠だと、冷静に分析する。

 「正直、まだ実感がないんです」。豪華な顔ぶれに目をやると、やや緊張の表情を見せた。それでも、「高知の売り上げも上がっているので、PRできるような活躍ができれば。誰もが経験できることではないので、勉強して帰りたい」と意気込みを語った。テクニックを盗みたいジョッキーはいるのだろうか-。「どの騎手も勉強になるので」と前置きしたあと「川田(将雅)さん」と今年のダービージョッキーの名前を挙げた。「乗り方がかっこいい。地方のジョッキーに似た力強い追い方をする」。年齢もひとつ違いだから、刺激になるようだ。

 WASJの第1戦は7着、第2戦は11着と、初日は苦戦した。ただ、2日目の永森はちょっと違った。WASJ以外の騎乗依頼を受け、3R(7着)、5R(8着)、6R(11着)、9R(4着)と、JRAの競馬への適性を見せつつあった。そしてシリーズ第3戦は5着。実はここまでの7戦すべてが人気以上の着順。悲願のJRA初勝利は第4戦に託された。

 騎乗するのは単勝6人気に支持されたメイクアップ。好位の外で折り合うと、仕掛けを我慢してワンテンポ待った。直線は豪快なアクションで追い、見事な差し切りだった。JRAのゴール板を先頭で駆け抜ける。初めて味わう風だった。「うれしいです。厩舎から“しっかりと仕上げた”と聞いたので、あとは僕が馬の邪魔をしなけば、と思っていました。勝てて良かった。直線は気持ちが良かった」と満面の笑みを見せた。

 シリーズ4戦目Vの表彰式。同時にJRA初勝利の表彰も行われた。「高知の永森大智をアピールできたと思います。地元で精いっぱい頑張って、また戻ってきたい」。拍手と声援に包まれたウィナーズサークル。地元・高知から駆けつけたファンの中には感激のあまり泣く人もいた。

 初日とは何が違ったのか-。多くの馬の騎乗依頼があったこと。そして、気持ちの変化を口にする。「前日が全然いいレースができなかったので。自分らしさが出せなかった。前の日の晩、思ったんです。こんな言い方は変かもしれないけど、“もう来ることがないかもしれないんだから”って。自分のレースをしようって思いました」。初日とは違い、この日はどこか開き直ったような顔つきに。“赤い彗星”らしいレースだった。

 パーティーの席で話していた“勉強”はできたのだろうか。「皆さん、勝負どころで我慢ができる。追いだしを待てる。それが最後のもうひと伸びにつながる。息の入れ方が上手だなと思いました」。感じたことを、すぐさま実戦に結びつけたのが、仕掛けのタイミングを待った第4戦のVではなかったか。初日終了後、永森は40点と自己採点をした。2日目終了後、改めて尋ねると、「勝ったレースは100点に近いかもしれませんね」と、はにかんだ。

 この日、最も注目されたのは騎乗機会7連勝のタイ記録を達成したモレイラだった。WASJで優勝したのはM・デムーロだ。海外からは次々と短期免許を取得して外国人ジョッキーたちが来日する。海外のジョッキーは確かにうまいかもしれない。ただ、「外国人ジョッキーたちには負けてほしくない」。心のどこかに、そういう思いは持ち続けたい。ぜひ、永森にも積極的にJRAで騎乗してもらいたい。そして、JRAにもその場を増やしてほしい。腕の立つ日本人ジョッキーは地方競馬にもまだまだいる。海外だけじゃなく、地方の騎手にも短期免許を-。そう願うのは自分だけではないはずだ。(デイリースポーツ・井上達也)

最終更新:9月6日(火)15時54分

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