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燃えにくく、重さも半分の太陽電池モジュール

EE Times Japan 9月6日(火)13時44分配信

■電気自動車への搭載に向く新モジュール

 産業技術総合研究所太陽光発電研究センターの上級主任研究員である原浩二郎氏らは信越化学工業と共同で、シリコーンゴムでできたシート状の封止材を用いた結晶シリコン太陽電池モジュールを開発したと発表した。軽量で燃えにくいなどの特長を持ち、自動車への搭載などに適しているという。

【従来型モジュールと開発した新モジュールの模式図】

 開発した新しい太陽電池モジュールは、重量の大きいガラス基板や可燃性の有機部材を用いず、シリコーンゴム封止材を用いた。産総研によると、シリコーンゴム封止材の太陽電池への応用は1980年代に製造された実績があり、「設置から現在まで約30年の屋外設置においても安定して発電量を維持している報告例もある」という。さらに信越化学は、従来のモジュール製造装置や工程が利用できる太陽電池用のシリコーンゴムシート封止材を開発。その上で、信越化学は産総研と共同で太陽電池モジュールを作製し、信頼性評価を行い、屋内環境試験において優れた信頼性を示すことを既に明らかにしている。

 しかし、シリコーン封止材は一般的に用いられるエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)封止材よりも比較的高コストでありEVA封止材の代替とするとモジュールコストの増加を伴うため、シリコーン封止材の導入が難しかった。

■コストを抑制したモジュール

 そうした中で産総研と信越化学は、シリコーン封止材の使用によるモジュールコストの増加を抑制しつつ、難燃性などのシリコーンの特長を生かした新しい太陽電池モジュールを開発するに至った。

 開発したモジュールは、厚さ約500μmのシリコーンゴムシート封止材と、厚さ約50μmの難燃性の高分子フィルム表面材、裏面材に絶縁処理をしたアルミ合金板で構成され、ガラス表面材を用いない「サブストレート構造」とした。

 なお、一般的な従来型のモジュールは、結晶シリコン太陽電池を厚さ約3mmの白板強化ガラスでできた表面材、EVA封止材、バックシート(裏面材)で封入した「スーパーストレート構造」を採用。加えて、反り防止や架台への設置、固定などのためにアルミフレームが取り付けられている。

 サブストレート構造の新モジュールではアルミフレームを用いず、アルミ合金の裏面材により直接かつ簡単にモジュールを固定できる。従来モジュールに用いられるガラスやバックシート、アルミフレームなどの部材を削減することで、比較的に高コストのシリコーン封止材を利用した場合のモジュール全体のコストの増加を抑制した。

 難燃材料であるシリコーン封止材や高分子フィルム表面材と、金属のアルミ合金裏面材を用いることで、モジュール全体を難燃化することができ、さらには、アルミ合金板の厚さを抑えることで軽量化することもできる。産総研によると今回、試作したモジュールは「同じサイズの従来型モジュールの約半分の重量」としている。

■長期信頼性評価試験もクリア

 試作モジュールによる長期信頼性評価も実施。耐衝撃強度を評価する鋼球落下試験*1)では、従来型モジュールではセル割れが見られ出力が初期値の87%に低下したが、試作モジュールでは「鋼球落下の衝撃により局所的にわずかな暗所部が見られるが、出力の低下はほぼ見られなかった」(産総研)。

*1)鋼球(直径38mm、重さ約225g)を高さ1mからモジュールの表面に合計3回落下させる内容

 40cm角のモジュールを用いた荷重試験では、モジュール表面へ約88kgの荷重(圧力で約5400Paに相当)をかけても試験後にセル割れによる出力の低下が見られなかったとする。さらに、高温・高湿条件下での長期信頼性を評価するために、温度85℃、湿度85%の条件下で高温・高湿(DH)試験も実施。3000時間のDH試験終了時点でも出力を維持したという。

■太陽電池の新たな用途を開拓か

 これらの評価結果から「試作した太陽電池モジュールは太陽電池の新たな用途での利用や、設置・利用法の多様化の可能性を示すものと考えられる」(産総研)と結論付ける。

 産総研は「電気自動車などの車載用太陽電池モジュールや、住宅の屋根材・建材一体型、外壁面へ設置できる太陽電池モジュールとしての用途を想定し、モジュールサイズや構造、部材の最適化、必要な信頼性試験などを、製造企業などとも協力して実施していく予定」とコメントしている。

最終更新:9月6日(火)13時44分

EE Times Japan