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廃止まで3カ月足らず…留萌線廃止区間全駅を訪れてみた

レスポンス 9/6(火) 22:00配信

ローカル線問題に揺れるJR北海道にあって、収支が一番悪い区間が留萌線留萌(留萌市)~増毛(増毛町)間16.7kmだ。JR北海道は4月28日付けで国土交通省に同区間の鉄道事業廃止を申請しており、12月4日限りでの廃止が事実上決定している。

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JR北海道が発表している2014年度の線区別収支状況によると、留萌~増毛間の営業係数は4161(100円を稼ぐのに4161円かかる)。2番目に悪い札沼線(学園都市線)北海道医療大学~新十津川間の1909、3番目に悪い石勝線新夕張~夕張間の1247と比べても2倍以上の開きがある。まさに断トツのワースト1だ。

留萌~増毛間は、全線の大半が「日本海オロロンライン」の通称を持つ国道231号線と並行しており、ここに沿岸バスの留萌別刈(増毛)線が1日9往復運行されている。鉄道の場合、一部区間が集落の多い国道から離れていることに加えて、線路脇に斜面が多く、融雪期になると土砂崩壊や雪崩の危険性があるため長期運休になることがしばしばあった。その場合は代行輸送が行われたものの、タクシーで足りるほどの輸送量だったという。

鉄道が廃止される場合、早朝・夜間の輸送が問題となっていたが、JR北海道がこの点を含めた代替公共交通機関の整備を条件に、留萌市長と増毛町長が今年4月までに廃止に合意している。廃止打診の報道が流れてからおよそ10カ月での決着で、2年半の猶予が与えられている石勝線新夕張~夕張間とは対称的とも言える状況だ。そんな留萌~増毛間の全駅を、列車と徒歩を交えて訪れてみた。

深川から乗車した11時08分発増毛行き4925Dは、お名残乗車が集中する日曜日とあって3両編成。うち1両は回送扱いで、留萌到着後は深川行きの4928Dとなる。ふだんは1両だけの留萌線にあって3両はなかなかの長大編成だ。発車ぎりぎりに乗り込むと、キハ54形の座席はロングシートも含めてほぼ満席。JNRマークが付いた扇風機はぶんぶんと音をたてて回っているが、人いきれで車内はむんむんとした空気が充満していた。不思議なことに窓を開けている人はあまりいないが、なかには窓に吸盤を付けてそこにビデオカメラを固定して車窓風景を撮影している猛者もいた。廃止が近くなるとこうした人をよく見かけるようになるが、一種の流行のようにもなっているのだろうか。

留萌に到着すると、回送となっていた深川寄りの1両が切り離される。このため停車時間は13分と余裕があるが、筆者が乗車した日は深川で接続する特急が5分遅れた関係で、留萌にはその分延着。切離し作業はかなり慌ただしく行われていた。

留萌を発車しても、4925Dはますます混雑が激しくなり、立ち客まで出る状況に。筆者は終点・増毛のひとつ手前の箸別(増毛町)で下車したが、1両分にも満たないような短いホームだけの駅に4人が降り立ち、たちまち撮影大会に。この駅の1日あたりの平均乗降数は1人以下(限りなくゼロに等しい)だから、数人が降り立つと、もはや日常とは言えない光景になる。

増毛から折り返してきた上り列車に乗り次に訪れたのは、留萌のひとつ隣の駅である瀬越(留萌市)。この駅は高台の下に位置する、日本海を望むなかなか風光明媚な駅で、駅の背後からは日本海を入れて進入する列車を撮ることができる。ただしこの季節は夏草が生い茂っているため、坂道を相当高く上らないと、春先のようにすっきりと撮ることはできない。ここでは筆者を入れて2人が下車したが、すでに車で来た先客が3人ほどいて、平均乗降人員が10人以下に過ぎないこの駅にしては、またしても相当な賑わいとなった。

1時間ほどで留萌から折り返してきた下り列車を待って、隣の礼受(留萌市)へ。ここは「ヨ」と呼ばれる、貨物列車用の古い緩急車を待合室にした、いわゆる「貨車駅」だが、待合室はだだっ広いホームとは不釣り合いな感じがする。ここからも海は見えるものの、瀬越のようにすっきりとした眺めではなく、下り列車は次第に国道沿いから離れて行く。ここからは列車ダイヤの都合で朱文別駅まで徒歩。鉄道の営業距離は6.5kmだが、舎熊(しゃぐま)を除く駅は国道からやや離れているため、実際には8km近く歩いた計算になるだろうか。


徒歩で最初に訪れた阿分(増毛町)駅は、国道からやや離れて位置している。箸別と同じく短い板張りのホームと待合室があるだけの無人駅だ。最初に訪れた箸別駅や阿分駅から先の信砂駅、朱文別駅は、国鉄時代、仮乗降場と呼ばれていたところで、全国版の時刻表には記載されない、管理局権限で設置されたものだった。これらは、1987年にJR北海道が発足するのに際して、一斉に駅に格上げされたものの、阿分駅の平均乗降数もやはり1人以下。背後には阿分小学校の建物があって、登下校の小学生のために設置された駅のようだが、同校はすでに昨年3月に閉校となっており、最大の使命が失われたようだ。

次の信砂(増毛町)までは、線路を跨いだところにある稲荷神社や阿分トンネル、信砂橋など、留萌線廃止区間を撮影するには絶好の撮影地が多い。徒歩で移動していないとなかなかわかりにくいポイントだ。ちょうど信砂駅近くの信砂橋に着いたところで、タイミングよく上り列車が差しかかった。ここになぜか北海道放送のテレビクルーが突然現れた。尋ねると廃止に関連した取材ということで、思わぬところで筆者はコメントを求められてしまった。これも非日常化した留萌線のひと駒といったところだろうか。

信砂駅は、国道からかなり離れているものの、住宅もそこそこある集落に位置する。そのため、同じ無人駅でも箸別や阿分に比べると格段にホームが長く、立派な造りに見える。営業距離にしてわずか800m先にある舎熊(増毛町)は、国鉄時代は正式に認知されていた駅で、礼受駅とほとんど同じ構造の貨車駅。この駅はほぼ国道沿いにあり、若干遠いながら、久し振りに海に面した駅という感じだった。

信砂~舎熊間の営業距離が極端に短いのが気になったが、舎熊駅の開業は大正時代の1921年、信砂駅は1963年だから、戦後になってこの付近に住宅が増えだしたのだろう。実際、信砂駅から舎熊駅の間は、海岸地方というイメージにはほど遠い、札幌でもよく見かけるような住宅が点在していた。鉄道が廃止されると、公共交通機関は少し離れた国道から利用することになるから、これまでの鉄道利用者は、暴風雪が吹き荒れる冬場にやや辛い思いをすることになるのかもしれない。

そんなことを思いながら、舎熊駅を出るとさすがに疲労が溜まってきたが、次の朱文別(増毛町)で留萌線廃止区間の途中駅完訪となるので、頑張って先を急ぐ。朱文別駅は国道からやや離れた駅。ここも出自が仮乗降場とあって、短い板張りのホームがあるだけだ。留萌方からは線路が外側にカーブしているので、入ってくる下り列車を撮るとよい絵になるだろう。

朱文別で徒歩移動が終わり、留萌からやってきた増毛行き4929Dに乗り込む。この列車はなんと旭川からの直通で、そのせいか、2両編成の車内は超満員。深川から通して乗ってきた4925Dよりも混雑していた。デッキ付近には前面展望を撮ろうというマニアたちが立ち塞がっていて乗り込むのに少々難渋。留萌線の日常が失われつつある象徴的な光景かもしれない。

旭川からの直通列車であるせいか、一般の観光客も多く、増毛に着くとその大半は折返しの深川行き4934Dへ消えてしまう。その間の8分間、増毛駅構内は慌ただしい大撮影大会に。構内はロープまで張られるほどの物々しさで、ホームで撮影に夢中になっていた人が、いきなり乗ろうとしていた列車が発車しそうになって、あわてて静止するひと幕もあった。

4934Dの次発はおよそ2時間後の19時48分に発車する4936D。その後に舎熊と礼受だけに停車する5922Dという留萌止まりの列車があるが、日曜日は運休なので、4936Dが最終列車となる。並行する沿岸バスは、増毛駅前を18時53分に発車する便が最終となるので、夜が遅くなるとJRだけが頼りになる。今回の廃止容認では、この深夜と早朝の足をどう確保するのかということが焦点になったのだろうが、すでに並行する路線バスが充実しており、その始発と終発を延長するだけで、代替手段は足りると実感した。

《レスポンス 佐藤正樹(キハユニ工房)》

最終更新:9/6(火) 22:00

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