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クミコ×松本隆 新曲秘話語る「直球ど真ん中、スーパー恋歌」

オリコン 9月7日(水)7時10分配信

 歌手・クミコ(61)がきょう7日、両A面シングル「さみしいときは恋を歌って/恋に落ちる」をリリースした。2曲ともに作詞は“名付け親”の松本 隆氏(67)が担当。作曲はそれぞれ、秦 基博(35)とハナレグミの永積 崇(41)が手がけた。来春には、全編松本氏作詞のアルバムのリリースも決定。『クミコ with 風街レビュー』プロジェクトの第一歩となるシングルの制作・レコーディング秘話を聞いた。

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──クミコさんが松本 隆さんの書き下ろしの詞を本格的に歌うのは16年ぶりとのことですね。
【クミコ】はい。2000年のアルバム『AURA』以来です。

──クミコ名義での1stアルバム『AURA』は松本さんが全曲作詞、プロデュースの作品でしたね。
【クミコ】そうです。そもそもクミコの名前で歌うようになったのも松本さんの提案でした。

──ということは、ある意味、生みの親?
【クミコ】松本さんが私を娘と思っていらっしゃるかどうかはわかりませんが(笑)、私は全幅の信頼を置いています。今回も松本さんには作詞だけではなく、製作総指揮みたいなポジションをお願いしたので、プロジェクトの名前は『クミコ with 風街レビュー』です。
【松本】昔から、「またアルバムを一緒に作ろうね」と約束していて、それがこのタイミングでめぐってきたということだね。
【クミコ】ええ。だから、今回のシングルはアルバムへの第一歩。
【松本】アンテナショップみたいなものだよね。

──ニューシングル収録の「さみしいときは恋歌を歌って」と「恋に落ちる」はともにラブソング。これは松本さんのアイデアですか?
【松本】そうです。このところの彼女を傍から見ていると、シリアスな歌が多かったので。
【クミコ】でも、まさかシングル収録の2曲とも、「恋」の字が入っているタイトルになるとは思いませんでしたよ(笑)。
【松本】「さみしいときは恋歌を歌って」を作曲してくれた秦 基博くんには、普遍的なラブソングを作りたい、とは伝えたけどね。例としてキャロル・キングの名前も挙げたと思うよ。今の時代、普通のものがないんですよ、全然。だから、普通のラブソングを作ってあげたいと思って。

──奇策ではなくて正攻法?
【松本】16年前に僕がプロデュースした『AURA』は、全編がサブカル的な、変化球の嵐のようなアルバムでした。
【クミコ】変化球どころじゃなくて魔球まで入っていました(笑)。
【松本】だから、16年ぶりに再会した今回は、直球ど真ん中。
【クミコ】確かに直球の恋歌。だから、私たちの世代の歌でもあるけれど、私たちの世代だけの歌ではないですよね。どの世代も気持ちを重ねることができる恋歌です。
【松本】10代が聴くと、10代の恋に聴こえ、20代が聴くと、20代の恋に聴こえるし、40代にも50代にも60代にも同じことが言えるだろうし。去年、僕は作詞活動45周年を迎え、クミコもそれと同じくらいのキャリアがあって、そういう2人が作った恋歌だから、濃さというか重さにしても、僕たち以外の人たちには作れない。いわばスーパー恋歌だね。
【クミコ】私と松本さんに比べ、秦さんや「恋に落ちる」を作曲してくれた永積 崇さん、アレンジの冨田恵一さんが若い世代なのも、このシングルのポイント。
【松本】そうだね。ネクスト・ディケイドというか、大滝詠一・細野晴臣の次の世代と組みたかったから。

──「恋に落ちる」は松本さんが先に詞を書かれたそうですね。
【松本】勇気あるよね、ハナレグミは(笑)。
【クミコ】いや、松本さんが言ったんですよ、「永積くんなら、僕の詞に曲をつけられるから、先に詞を書く」って。
【松本】そうだっけ? でも、さすがだよね。秦くんもできそうだね。彼らみたいな優秀な若手が育ってくれているのはうれしいし、希望が持てる。詞が先、曲が先、どっちが先かにはあまりこだわらないけど、どちらか片方しかできないのは一流ではないね。
【クミコ】ちなみに「恋に落ちる」のボーカル・レコーディングには、重い腰を上げて松本さんが立ちあってくださいました。実は、松本さんがスタジオにいてくれて、何だかんだ言ってもらうのが好きなんです。すごくシビアなジャッジをされる方なので、アレンジの冨田さんやエンジニアとか音作りのスタッフは、松本さんがいると緊張してしまうところがあるみたいだけど。私は言葉が好きな人間なので、詞を書いた松本さんのディレクションを信頼しています。
【松本】本当に?
【クミコ】本当ですよ(笑)。でも、ご本人としては、あまりスタジオに来たくないんですよね?
【松本】そんなこともないけど…。
【クミコ】松本さんのひと言ふた言で目の前が開けるというか…。そうね、そうよねって(笑)。それが楽しい。
【松本】僕がスタジオにいようがいまいが、Aクラスの歌が録れているんだけどね。それを特Aにするためのアドバイスをしたいと思っていますね。他の作詞家やプロデューサーはどうしているの?
【クミコ】たいてい、「歌はクミコさんにお任せします」ってなりがち(笑)。

──さすがにそこにはなかなか口を挟めませんよね。
【松本】カリスマシンガーだから(笑)。
【クミコ】いやいや(笑)。最後の一押しみたいな一言を、松本さんがボソッと言ってくれると、私のチャレンジャー精神に火がつきます。「恋に落ちる」のときも、もう終わりかなと思っていたら、突然ブースに入ってきて、「少し風景見せて」と。あれにはグサッときました。“そうね、そこよね”と、すぐにわかってしまったところがうれしいような、悲しいような。自分のなかでも、歌いながら少し音楽寄りというか、音符寄りになっているかもしれない、と思っていたところに、そういう言葉寄りのサジェスチョンをもらったので、松本さんがいるレコーディングはやっぱり好きだな、と思えました。
【松本】あのレコーディングのドキュメントを撮っていたら、すごい瞬間が撮れたと思うよ。一瞬にして歌の表情が変わるところを記録できたわけだから。あれはオリンピック級のピンポンだった。

──しかし、僕らには、お二人が打ち合っている球すら見えない(笑)。
【松本】スタジオで聴きながら、ディオンヌ・ワーウィックだと思っていたんですよ。実は、僕がそれを言う前から、冨田くんも同じことを思っていたみたいだから、まさに以心伝心だった。
【クミコ】まだこれからアルバムに向けてのレコーディングもあるので、ぜひ毎回スタジオに。
【松本】今、都内に住んでいないから、スタジオに行くたび新幹線に乗らなきゃいけないから、できるなら行きたくないんだけどね(笑)。
【クミコ】そんなこと言わず、これからも『クミコ with 風街レビュー』をよろしくお願いします。

(取材・文/藤井徹貫)

最終更新:9月7日(水)7時10分

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