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デジタル変革の先進企業、国内事例を紹介「Microsoft Foresight」

アスキー 9月7日(水)7時0分配信

日本マイクロソフトが企業ビジネスリーダーを対象に開催した「Microsoft Foresight」では、デジタルトランスフォーメーションに取り組む多数の国内企業事例が紹介された。
 9月6日、7日の2日間、日本マイクロソフト(日本MS)が東京・恵比寿において、経営者や役員、戦略立案や経営企画に携わるビジネスリーダーを対象にした「Microsoft Foresight」を開催している。企業のデジタルトランスフォーメーションを取り巻く最新動向を示すとともに、その実現に向けた具体的なビジネス事例や体験機会などを紹介する内容だ。
 

 昨年は「Microsoft Convergence」として開催された同イベントだが、今回は名称を変更し、今年4月に米国で開催された「Microsoft Envision」の内容をベースとしたものとなった。製品の紹介よりも、具体的な顧客企業の事例を通じてデジタルトランスフォーメーション推進を提案する内容になったと言える。
 
「86%のCEOが“デジタル”を経営の最重要項目にあげている」
 初日の6日午前には、日本マイクロソフトの平野拓也社長が、「ビジネスに新たな価値をもたらすデジタルトランスフォーメーション」をテーマに基調講演を行った。国内外の最新事例をもとに、デジタル変革の現状と今後の展望について紹介した。
 
 平野社長は、「いま、第4次産業革命を迎え、それがIoT、AIなどの新たなテクノロジーによって実現されている。86%のCEOが“デジタル”を経営の最重要項目にあげている。また、ソフトウェアの技術を使わない会社はなく、90%以上の企業が“ソフトウェアテクノロジーの会社”になっている」と切り出した。
 
 日本マイクロソフトでは、デジタルトランスフォーメーションを実現する「4つの軸」を掲げている。それは、顧客体験を向上する「お客様とつながる」、人材/スキル/生産性を追求する「社員にパワーを」、オペレーティングモデルの改革を進める「業務を最適化」、ビジネスモデル変革を促す「製品を改革」の4つだ。
 
 そして今回の基調講演でも、この「4つの軸」それぞれにおける多数の国内企業事例を示した。
 
顧客とつながる次世代小売店舗、ワークスタイル変革で社員のエンパワーメント
 まず「お客様とつながる」では、今年3月に発表したソフトバンクロボティクスとの協業を通じて提案している「次世代型の小売店舗」を紹介した。この次世代型の小売店舗では、人型ロボットの「Pepper」、Windows 10搭載の大画面端末「Surface Hub」、それに「Azure IoT Suite」クラウドを結んで、リアルタイムに顧客情報を収集。それを活用して、最高のおもてなしを提供する。
 
 具体的には、Pepperの内蔵カメラで来店客の顔を認識し、性別や年齢などを判断して「おすすめ商品」をSurface Hubにその情報を表示、紹介する。さらに、顧客の購入履歴や来店状況などもバックエンドシステムを介して把握しており、経営者はどこにいても、こうした情報をクラウドで確認できる仕組みだ。
 
 次に「社員にパワーを」では、富士通が全世界16万人の社員を対象に、標準のコラボレーション環境として「Office 365」を採用し、ワークスタイル変革に取り組んでいる事例を紹介した。富士通の田中達也社長は、ビデオメッセージを通じて「クラウド上で電話を含むコミュニケーション環境を構築し、この社内実践(の顧客展開)を通じて、2018年度には500億円のビジネスを目指す」と述べている。
 
 日本マイクロソフト社内におけるワークスタイル変革の実践例も紹介された。同社では、過去5年間の取り組みを通じて、ワークライフバランスが40%改善し、事業生産性も26%向上、そして女性の離職率は40%減少するという成果を生んでいる。今年5月には、就業規則を抜本的に変更した新たなテレワーク勤務制度もスタートした。
 
 平野社長は、こうしたワークスタイル変革の実践により「個人が持つポテンシャルを最大限に発揮できる環境構築を目指す。企業の生産性を上げ、社員の満足度を高め、日本の労働生産性を高めることができる」と述べた。
 
JALのHoloLens活用、トヨタやパナソニックのプロダクト改革を紹介
 「業務を最適化」では、日本航空(JAL)がARデバイスの「HoloLens」を採用し、ミックスドリアリティ(Mixed Reality)の特徴を生かして、エンジン整備や操縦のトレーニングに応用している例が紹介された。
 
 ゲスト登壇した日本航空 商品・サービス企画本部 業務部業務グループ グループ長の速水孝治氏は、HoloLensの採用によって「三次元環境において、安全な環境で、いつでもパイロットや整備士向けのトレーニングに活用できるようになった」と語った。「社内の各部門が、HoloLensの技術のすごさに驚いている。今後はカスタマーエクスペリエンスを高める分野においてHoloLensを活用し、世間をあっと驚かせるようなものを提供したい」(速水氏)。
 
 最後の「製品を改革」では、トヨタ自動車とパナソニックの事例を挙げた。
 
 トヨタ自動車は今年4月、マイクロソフトとの合弁会社である「トヨタコネクテッド(Toyota Connected)」を米国に設立しており、クルマから取得した情報をAzureクラウドに集約して顧客サービスを向上させたり、新たなクルマの開発につなげる取り組みを開始している。
 
 また、パナソニックでは「パナソニック クラウド サービス プラットフォーム(PCPF)」をAzure上に構築。150万台以上の家電製品がクラウドにつながっており、たとえば外出先からテレビやエアコンを操作するようなことを可能にしているという。
 
日本MSが注力する「コグニティブサービス」のデモも披露
 続いて平野社長が紹介したのは、Azureで提供している「Microsoft Cognitive Services」だ。現在、視覚認識サービス、音声認識サービス、言語理解サービス、知識サービス、検索サービスなど、22のサービスAPIを提供。あらかじめ用意されたAPIを使うことで「誰でもAIのパワーを活用することができる」と平野社長は説明する。
 
 このコグニティブサービスの活用例を、日本マイクロソフト 業務執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏がデモストレーションした。視覚認識サービスを使ったアプリでは、スマホのカメラで来店客の顔を撮影すると、年齢や性別を推測するだけでなく、現在の感情まで分析してくれる。ショップ店員のウェアラブル端末に組み込むことで、その客の来店回数、プロフィールなどをリアルタイムに把握できるようになる。ロイヤルカスタマー(お得意様)であれば、すぐさま手厚い対応に切り替えられる、というわけだ。
 
 導入顧客として、東京サマーランドの事例が紹介された。東京サマーランドでは、コグニティブサービスを活用してスタッフの接客数を把握。さらに「笑顔の客」の比率がどれだけ高いかを分析しているという。
 
「コア事業におけるイノベーションが重要」JR東日本が語るデジタル変革
 デジタルトランスフォーメーションに取り組む顧客企業として、東日本旅客鉄道(JR東日本)の小縣方樹取締役副会長もゲスト登壇した。JR東日本では、歴史ある鉄道事業だけでなく、さらにその先の“Mobility as a Service”を念頭に、ビジネスイノベーションを推進しているという。
 
 「JR東日本では鉄道事業が3分の2を占め、ビジネスモデルは144年間、変わっていない」「我々自らのイノベーションに続いて、他の交通機関全体との連携、あるいはカーシェアリングなどとの連携によって、出発点から目的地にまで心地よく、できるだけ早く到達できるようにすることに取り組んでいる。これからは“Mobility as a Service”が重要になる」(JR東日本 小縣氏)
 
 さらに、「イノベーションとグローバリゼーションは必ず連携する」「イノベーションとデジタルトランスフォーメーションは表裏一体である」といったメッセージを聴衆に訴えた。
 
 「事業のコアとなる部分で常にイノベーションを続けておかないと、ほかのイノベーションにつながらない。新幹線のスピードを275kmから320kmに引き上げたことで、当初は考えていなかった海外新幹線の事業につながった」(小縣氏)
 
 
文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

最終更新:9月12日(月)6時9分

アスキー