ここから本文です

銀行が「積立投資」を勧める本当の理由 ドルコスト平均法は気休めに過ぎない

ZUU online 9/7(水) 17:10配信

「一度にまとまった資金を投資するよりも、時間を分散する方が有利ですよ」銀行の金融商品販売の窓口では、日常的にそんな説明が行われている。

ドルコスト平均法は投資の世界ではお馴染みの言葉である。同一の投資対象を、定期的に一定金額で購入する「積立投資」のことだ。銀行はさかんにこの方法で投資信託を購入することを勧める。

銀行員の手許にあるパンフレットにも「ドルコスト平均法」のメリットが記載されており、ご丁寧にイメージ図まで示されている。多くのお客様はこの説明に「なるほど」と納得する。

だが、銀行が「ドルコスト平均法」「積立投資」を勧めるのには理由がある。「表向き」は、お客様にとって有利な投資法とされているが、本当の狙いは別のところにあるのだ。

■そもそもがナンセンスな比較なのだ

そもそも、何に対して有利だというのだろう。もちろん、一括購入に対してなのだが、一括購入とドルコスト平均法での投資を比較すること自体がナンセンスだということに多くの人は気付いていない。

窓口で話を聞いている投資家だけではなく、銀行員自身もそれがナンセンスだとは気付いていないのだから、タチが悪い。

両者は金額と時間が異なる運用の結果を無理矢理比較しているのだ。大ざっぱではあるが、全体が下げ相場であれば、一括投資は不利だし、逆に全体が上昇相場なら一括投資が有利なのは、よくよく考えれば小学生でも分かることだ。

■銀行にとって都合の良い「都市伝説」

ドルコスト平均法が有利であるーーそれはまるで都市伝説のようなものだ。

問題はなぜこの種の都市伝説がこれほどまでに浸透したかである。銀行は投資家のために「積立投資」を勧めているわけではない。「積立投資」が銀行にとって好都合な理由があるのだ。

周知の通り、投資信託の販売手数料は銀行にとって大きな収益源である。しかし、忘れてはならないのは信託報酬という投資家が負担するコストだ。投資家にとっては間接的にコストを負担している信託報酬も銀行にとっては大きな収益源となる。

投資信託を大口で一括購入する投資家がいれば、銀行は短期的に大きな手数料収益を得ることができる。これはこれでありがたいことなのだが、大口の一括購入の投資信託は、利益確定により解約されるのも早い。しかも、必ず再投資してもらえるとは限らない。

それよりも長期間、確実に多くの投資家から手数料と信託報酬を取り続ける方が、安定収益の確保という面から銀行にとっても都合が良い。銀行がドルコスト平均法、積立投資を盛んに勧める理由がそこにある。

■運用会社にとっても都合の良い販売方法

運用会社の立場で考えても積立投資はありがたい。投資信託の運用者は一度に大きな資金が集まることを嫌うからだ。

人気が出て短期間で巨額の資金が集まった方が良いのでは? と考えがちであるが、実はそうではない。

一度に巨額の株式の買付を行えば、株価をつり上げることになってしまうし、利益確定をするにも、自分の売りで株価を下げてしまうことになりかねない。かといって、投資せずに現金を積み上げておくわけにもいかない。

中小型株に投資する投資信託ならなおさらである。人気の過熱はありがた迷惑な話なのだ。高い評価を得たものの、巨額の資金が集まったことでかえって運用成績が悪くなった投資信託はいくつもある。

ドルコスト平均法、積立投資は「表向き」はお客様にとって有利な投資法とされている。多くのFPやマネー雑誌もそのメリットを紹介し、この方法が有利だと推奨する。

だが、「本音」ベースでは銀行と運用会社に都合の良い販売方法に過ぎない。ご丁寧にイメージ図を載せたパンフレットまで用意しているのは、そういうことなのだ。

■自分で考え、行動できない銀行員にも問題がある

私が残念に思うのは、最前線で金融商品を販売している銀行員の多くが自分で物事を考えることを放棄してしまっていることだ。だから、こんな誤解を招くような販売がまかり通るのだ。

「今、どんな商品を売れば良いんですか?」
「何がよく売れていますか?」

毎日こんな質問ばかりだ。
方向感の定まらない相場で自信を持てない時があるのは誰だって同じだ。将来の相場のことなど誰にも分からない。

しかし、だからといって自分が理解できない商品を「売れ筋だから」「上司が勧めるから」といった理由でお客様に販売するなど、愚の骨頂だ。

納得できなければ、自信が無ければ、お客様に販売しなければ良い。「それでは営業ノルマは達成できない」という反論が聞こえてきそうだ。ならば、理解できるまで自分で勉強すれば良い。それを放棄し、簡単に自分が納得できる解決法を探そうという姿勢が問題なのだ。

銀行という組織には、現場の人間がそれぞれに考え、行動することを許さない雰囲気がある。本部が販売の中心となる金融商品を選定する、本部がセールストークを指示する、本部がセールスで使用する資料を作成し利用を指示する。

その結果、現場には考えることを放棄してしまった銀行員がどんどん増えている。それが、銀行員の質の低下を招いている。嘆かわしいことだ。(或る銀行員)

最終更新:9/7(水) 17:10

ZUU online