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ワイヤレス充電で走るEVバス、課題の「妨害電波」の抑制に成功

スマートジャパン 9月7日(水)14時10分配信

 東芝は2016年9月、EV(電気自動車)バス用のワイヤレス急速充電システム向けに、妨害電波を抑制する技術を開発したと発表した。EVバス用のワイヤレス急速充電システムの実用化課題である無線通信を妨害する不要な電磁波の抑制が可能になった。

 現在のEVは、車両に充電器を挿して充電するのが一般的だ。しかし高頻度の充電を行う必要があるバスなどの場合、一日に多くの充電作業が必要になり、運用に手間が掛かる。そこで現在東芝は早稲田大学と共同で、こうした充電の手間を解消できるワイヤレス急速充電システムを採用したEVバスの実証走行を進めている。

 東芝が開発したワイヤレス急速充電システムは、周波数として85kHz(キロヘルツ)利用し、44kW(キロワット)の電力伝送を行う(図2)。こうした10kHz以上の高周波を利用する場合、電波法における高周波利用設備としての許可が必要となる。その申請においては、装置から放射される電磁波の大きさを、放送や他の無線通信を妨害しない許容値以下まで落とす必要がある。

 しかし東芝のワイヤレス急速充電システムから放射される電磁波の大きさは、送電電力に伴って大きくなるため、44kWの電力を送電すると許容値を10倍上回ってしまうという課題があった。

送電量を損なわずに法基準をクリア

 こうした電磁波の課題を解決するため、東芝はワイヤレス急速充電システムにおいて、送受電パッドを22kWの2系統の装置に分け、2カ所から逆相で送電する方法を採用した。送受電パッドを2つに分けることで、それぞれが放射する電磁波が打ち消し合い、不要な電磁波を抑制するという仕組みだ(図3)。

 ただし、2系統のパッド間で干渉結合があると、放射される電磁波の大きさと位相がずれ、打ち消し効果が低減してしまう。これを防ぐため東芝は2系統のパッド間の干渉が小さくなる最適な位置関係を検証。2系統のパッドの相対位置を平行に回転させたとき、パッド間の干渉結合の方向が反転する性質があり、干渉結合の方向が反転するときに干渉結合が必ずゼロになる点に着目した。そして不要結合がゼロになる相対角度を電磁界シミュレーターで割り出し、パッド間で生じる干渉の抑制を実現した。

 この技術により、距離が10メートル離れた位置における電磁波の大きさを約10分の1に抑制することに成功。送電量を44kWから損なうことなく、高周波利用設備としての許容値を満たすことが可能となった。

 開発した妨害電波の抑制技術は、既に実証走行中のEVバスのワイヤレス急速充電システムに適用している(図4)。この実証走行は2016年末頃まで実施予定で、東芝では終了後にその結果を踏まえて技術の課題を抽出し、早期の実用化を目指す方針だ。なお、開発した妨害電波の抑制技術の詳細は、米国ミルウォーキーで開催される国際学会「IEEE ENERGY CONVERSION CONGRESS AND EXPOSITION」(ECCE)にて、同年9月19日(現地時間)に発表する。

最終更新:9月7日(水)14時10分

スマートジャパン