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誰が困っているのか コンビニ値引きセールの実態

ITmedia ビジネスオンライン 9月7日(水)6時25分配信

 8月25日、ファミリーマートが「公正取引委員会からの下請代金支払遅延等防止法に関する勧告について」という、ニュースリリースを出した。

【新商品はメーカーに協力を仰ぐことも】

 店舗で販売するプライベートブランド商品の製造を委託しているお取引先様との契約に基づき、「開店時販促費」、「カラー写真台帳制作費」及び「売価引き」としてお取引先様から金員を収受していた行為、並びにこれらの金員を当社に振り込んでいただく際に「振込手数料」をお取引先様にご負担いただいたことが、支払うべき下請代金の減額にあたり、下請法の規定(第4条第1項第3号)に違反すると判断されたものです。また、店舗の仕入代金を当社からお取引先様にお支払いする際、振込手数料をお取引先様にご負担いただき控除しておりますが、一部のお取引先様に対する振込手数料の金額を誤り、実際の振込手数料を超過して差し引いていたことについて、下請法の規定(第4条第1項第3号)に違反すると判断されました。本日の勧告において「減じた額」とされた金額は、2年間で総額約6億5000万円です。

(株式会社ファミリーマートのニュースリリースより一部抜粋)

 振込手数料についての記述はともかく、その他の内容については一般の方には少々分かりにくいと思うので解説しよう。ただし、ファミリーマートがどうこうというわけではなく、コンビニ運営の一般的な話として読んでいただければと思う。

●「開店時販促費」と「売価引き」

 コンビニが新規開店するときは、ほとんどの場合オープンセールを実施する。その際、おにぎりやサンドイッチ、日用品の一部をセールの目玉商品にする。ただし、原価の操作なしに単に値引きをすると、店側だけでなく本部の利益も減ってしまう。「いやいや、利益減はダメっしょ」ということで、「販促費」という名目でメーカーに協賛金を求めることがあるのだ。

 多くの場合、原価率はそのままで原価そのものを安くするという方法だ。例えば、売値が100円の商品があるとする。原価が70円なら原価率は70%、30円が粗利益となる。これを、セールで20円引きの80円で売るとしよう。原価70円の商品を80円で売ると、粗利益は10円。フランチャイズ契約では本部と店舗で粗利益を分配することになっており、このままでは両者の取り分が減ってしまうので、店舗は利益率をキープすべくメーカー側に原価を56円にするよう求めるのだ。

 また、売れ残った商品を返品するケースもある。この場合、新規開店の値引きセールというよりは、新商品の導入時に実施することがほとんどだ。

 メーカー側としてはたくさん仕入れてもらいたいが、新商品なので売れるかどうか分からない。店側も、仕入れれば在庫になるので必要以上に多く発注することはまずない。こういうときはどうするのかというと、店に「返品可能である」ことを事前に知らせておくのだ。そうすると、売れなかったら返品できるので、店は多く発注する。その結果、商品の販売量を上げることができ、その実績が今後の発注の目安となるのだ。

 新店舗もしかり。これまでの実績がないので、開店当初から売り上げを最大限にするために全体の発注を多くする。たくさん仕入れて残ったら返品するという支援策を取るのだ。

 報道にあった、売れ残った商品の代金の一部を負担させたというのは、このことを示しているのだと思われる。

●オープンセールでも本部の負担は……

 「売れ残った商品の代金一部を負担させる」ことは、ほとんどのコンビニで当たり前のように行われている。筆者も日常業務のひとつとして行っていたので、「なぜ今さらこれを取り上げるの?」と思う半面、コンビニの現場を離れて久しい今となっては異常に感じる。

 考えてみてほしい。普段、原価70円の商品が、セールだからといって56円になるだろうか? 爆発的なヒット商品なら原材料をまとめて仕入れることができるが、たかが1店舗の開店セールに大きな影響力があるとは到底思えない。

 新商品の売り上げが好調であれば、その後の発注数が期待できるかもしれない。しかし、おにぎりや弁当など通常の取扱商品まで値引きを持ちかけるのはいかがなものか。「あなたたちは新規店舗をいくつ立ち上げているのですか? そのときに、次の店舗のためのデータを取っていないのですか?」と本部に言いたくもなる。

 何より、新店を立ち上げるときに必要なのは、店ではなく本部の投資である。ましてや、商品を供給するメーカーに協力を仰ぐのなら、リターンを明示するべきではないだろうか。

●ポスターやポップは隅々まで見ない

 ニュースリリースに書かれていた文言の中で、一般の方に一番なじみがないのは「カラー写真台帳制作費」だろう。カラー写真台帳製作費とは、本部から配布される新商品のポスターやポップなどの販促用の書類全般のことを指す。

 ポスターのデザイン、ポップのコピーなど、パッと見ただけで「丁寧につくられている」ことがよく分かる。しかし、残念ながら隅々まで読まれれることはない。コンビニでは毎週、数百種類の新商品が発売されるので、すべての情報に目を通す余裕がないのだ。

 いや、新人オーナーであれば、ひょっとしたらすべての文言に目を通しているのかもしれない。しかし、ちょっと慣れてくると「この商品はたぶんダメだろうな」「飲料の棚にちょっと余裕があるから発注しておこうか」といった感じで、採用していく。オーナーは「キャンペーンをすればすべての商品が売れる」とは思っていないので、多くのポスターやポップはチラっと見て、ゴミ箱に捨ててしまうのだ(もったいない話である)。

 こうした「カラー写真台帳」の製作費は誰が負担しているのか。キャンペーン時の費用はメーカーが協賛金を出すケースが多いが、今回のリリースをみるとこのお金も店舗に負担させていただようだ。

 コンビニにはさまざまな取引先がある。通常のメーカーはもとより、そのコンビニだけと取引している会社もある。弁当やおにぎりなどの食品製造の会社は、特定のコンビニだけと取引していることも珍しいことではない。

 「Win-Win」という言葉がある。お互いにメリットや利益があるという意味だが、コンビニはいくつものWin-Winに囲まれて運営されていることを、本部は忘れているのではないかと思えてならないのは筆者だけだろうか。

(川乃もりや)

最終更新:9月7日(水)12時19分

ITmedia ビジネスオンライン

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