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手治療の専門家 ばね指・腱鞘炎は仕事しながらでも治せる

日刊ゲンダイDIGITAL 9月7日(水)9時26分配信

 ばね指や腱鞘炎に悩む人が増えている。痛みでパソコンを使えず、仕事に支障が出るなど、日常生活への影響は大きい。

 50代後半のHさんは、5年以上もばね指に悩んできた。パソコンを極力使わないようにすれば痛みは軽減するが、使い始めるとぶり返す。整形外科は腰痛患者や膝痛患者でごった返しており、行く気がしない。だましだましやってきた。

 しかし、とうとう痛みが我慢できない段階に。プロのピアニストも訪れる「さかい整形外科」(東京・江古田)を受診した。

 日本最初の音楽家専門外来を設立した酒井直隆院長(写真)は、「手」治療のエキスパート。音楽家は腱鞘炎など手の疾患に悩まされることが多いが、音楽家への治療法は当時ガイドラインなどもなく、試行錯誤を経て、現在の治療法を確立した。

 ばね指は、腱鞘炎のうち、炎症部分にひっかかりが生じるものを指す。

 腱は手足の骨と骨の周りの筋肉をつなぐ組織で、腱鞘は、その文字に使われている「鞘」のように腱を包み込み、手足の関節をスムーズに曲げ伸ばしする役割を持っている。ここに炎症が起こるのが腱鞘炎だ。
「腱鞘炎は鞘が細くなることが原因といわれてきましたが、加えて腱のむくみが大きな原因になることが最近明らかになりました」

■パソコンを使っても大丈夫

 むくみは、手・指の使いすぎ、気圧の変化などが関係するとみられている。一般サラリーマンでは、どちらかというと前者の影響が強い。そのため、「パソコンを使わない。安静に」と医療機関で指示されがちだが、それでは仕事にならない。

「すぐに症状を取りたい患者さんには、注射を提案します。腱の中に直接、0.5㏄ほどの微量のステロイド薬と麻酔薬を注入し、むくみを取ります。コンサートを目前に控え、練習を休めないピアニストにも行っており、即効性が高い治療法です」

 ただ、注射は的確な場所に打つことが必要で、そうでなければ「注射を打ってもらっても、期待したほど症状はよくならない」ということになってしまう。

 また、早期対策が治りを早くするのは、ほかの疾患と同様だ。

「症状が出て1カ月くらいで治療を受ければ、1回から数回で症状は消失します。しかし、年単位で患っている場合は、関節が硬くなっているため、長い治療期間を要します。注射は最低限にして、抗炎症剤の服用、炎症部分を温めて血行をよくする温熱療法、硬くなった関節の屈伸運動の指導をします」

■洗面器のお湯で温めるのはNG

 屈伸運動では、痛みのある指の関節を屈伸させて柔らかくする。パソコン作業の前後にやるとよい。この運動を行うと痛みが出るが、痛みが出るほど屈伸しないと関節は柔らかくならない。自己流でやるとその加減が難しく、少なくとも最初のうちは専門医の指導を仰ぐべきだ。

 温熱療法は、自宅なら湯船で行う。

「洗面器にお湯をためて温めても、すぐに湯温が体温より下がるので、熱を奪われて温熱療法にはなりません」 

 なお、ばね指の治療は手術もあり、整形外科医がまず最初に取り組む手術といわれるほど比較的簡単なものだ。しかし、酒井院長は積極的には勧めていない。腱鞘を切るので、一度切ると再生不能になり、後に不都合を感じても「やり直し」ができないからだ。

 最後に酒井院長から一言。ばね指、腱鞘炎が治れば、ゴルフの飛距離も伸びるかもしれない。

最終更新:9月7日(水)9時26分

日刊ゲンダイDIGITAL