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好調 アルプス電気の「これから3年」を聞く

EE Times Japan 9月7日(水)11時42分配信

■新たな3カ年中期経営計画がスタート

 アルプス電気は今期、2017年3月期から電子部品事業で売上高5000億円達成などの数値目標を新しい3カ年中期経営計画をスタートさせた。前期まで3カ年にわたった旧中期経営計画では、スマートフォン向け部品の急成長などがあり、当初目標を大きく上回り、過去最高の売上高、営業利益を達成した。しかし、次の3カ年は、これまで成長を支えたスマートフォン市場の成長鈍化が見込まれ、新たな成長けん引役の育成が必要になる。

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 アルプス電気は電子部品事業において、どのような成長戦略を描いているのか。同社取締役で経営企画などを担当する気賀洋一郎氏にインタビューした。

■リーマンショック後の低迷からV字回復

EE Times Japan(以下、EETJ) 2016年3月末までの3カ年取り組んでこられた第7次中期経営計画では、数値目標として掲げた電子部品事業売上高3500億円、同営業利益240億円を、それぞれ4340億円、407億円で大きく上回って達成されました。

気賀洋一郎氏 われわれは、2016年3月末までの第7次中計の1つ前、2013年3月末までの第6次中計期間は非常に厳しかった。2008年のリーマンショック後、特に電機業界、とりわけ国内は非常につらい状況になり、2011年には東日本大震災、さらに、タイの大規模な洪水災害も起こり、業績は低迷した。そうした中で、当社は、2013年以降、とにかく売上高を確保すべく、「Get the Business」、略して「GTB」を社内スローガンを掲げた。ちょうどその頃から、業界全体に薄日が差しつつあった良いタイミングでもあり、業界の再成長に合わさって、うまく第7次中計を進めることができたと考えている。

 加えて、2016年3月期は、為替の良い影響があったことも(第7次中計の数値目標を上振れ達成できた)要因だと分析している。

■為替で足元弱含みも

EETJ 足元の業績、2017年3月期第1四半期(2016年4~6月)業績を見ると、前年同期比減収減益となりました。

気賀氏 (前年に比べて円高に進んだ)為替影響が大きく、需要自体が低迷しているわけではなく、堅調だ。

 ただ、2015年末あたりから、スマートフォン市場での需要伸長は低迷気味であることも事実だ。

■自動生産でシェア拡大中

EETJ スマホ向けでは、タクトスイッチ、フィルムセンサー型静電容量式タッチパネル、磁気/気圧/温度センサーなどを展開されている中で、特にカメラ向けアクチュエーターが好調です。

気賀氏 カメラ向けアクチュエーターは、数年前から本格的に強化してきた事業だ。

 アルプス電気は10年ほど前から、アクチュエーター以外に、イメージセンサーやレンズなどを含んだカメラモジュールビジネスを展開してきた。しかし、カメラモジュールの主役はイメージセンサーであり、そこに大きな価値があった。イメージセンサーなど社外から多くの部材を購入しなければならないビジネス形態では利益率は上がらなかった。

 そこで2012年あたりからビジネスモデルを改め、アクチュエーターに特化するようになった。

EETJ カメラ向けアクチュエーターでシェアを獲得できた要因は?

 これまでアクチュエーターのメーカーは、多くの人手を使った人海戦術で生産能力を確保してきた市場だった。それに対して、われわれは、アクチュエーターに特化を決めた時点から自動生産有りきで事業を立ち上げてきた。

 さまざまな自動生産に関わる試行錯誤を行い、2015年あたりから本格的な投資を実施し月産500万~600万個対応の自動生産体制が整った。大手顧客は、それなりの供給能力を求める。そうした中で、自動生産を用い供給能力を備えたことがシェア獲得につながったと考えている。

EETJ 2017年3月期第1四半期における用途別売り上げ比率を教えてください。

気賀氏 二十数パーセントがスマホ向けだ。この比率は足元、若干だが下がっており、その分、車載向け売上高比率が上昇し、60%程度になった。

■中国など、まだまだ成長余地

EETJ 今期、2017年3月期から3カ年の新しい中期経営計画をスタートされました。電子部品事業で3年後売上高5000億円の数値目標とともに、“脱スマホ”も掲げておられます。現行のスマホ向け売り上げ比率は高すぎるとお考えですか。

気賀氏 用途別売り上げ比率はビジネスの結果であり、良い悪いは考えていない。よく“スマホ偏重”といわれるが、現状の民生機器市場を見ると“偏重”は仕方ないと思っている。これまでの民生機器の機能、カメラやPC、それまでの携帯電話機、そしてゲーム機までをスマホが集約している。結果、スマホ偏重はやむを得ないわけだ。

 スマホの需要成長が鈍っていることは確かだが、今すぐに需要がなくなるわけではない。今中計の最終年度である2019年3月期に向けても、これまでよりは緩やかながら成長は続く。実際、2017年3月期第1四半期も、中国向けなどは伸びた。

 中国もスマホ市場全体でみれば、成長は減速し厳しいが、これまで低価格機種だけだった中国地場のスマホメーカーが中高級機種を手掛けるようになり、中高級機種向けの部品を展開するアルプス電気としての市場は広がりつつある状況だ。ここ数年、中国での拡販活動を強化してきたこともあり、中国スマホ市場向けの売り上げが伸びている。

 ただ、スマホ需要は、今中計以降の将来を見通せば、減少に転じる可能性があり、それに備えていく。備えの1つとして、現時点で柱の事業となっている車載向けビジネスを強化する。

■最大の柱をより強化へ

EETJ 車載向けビジネスの状況を教えてください。

気賀氏 自動車メーカーに直接納品する、いわゆる“ティア1”としてのビジネスとして行っている車載モジュールビジネスと、電子部品、通信モジュールなど単体を“ティア2”“ティア3”として提供する車載デバイスビジネスの2つで構成している。

EETJ 車載ビジネスでは今回の中計で売り上げ規模を2000億円から3000億円へ引き上げる目標を掲げています。車載モジュール、車載デバイスそれぞれの強化策を教えてください。

気賀氏 車載モジュールビジネスは、全ての自動車メーカーに納品しており、これ以上、シェア、数量をアップさせていくよりも、効率、収益性を高めていく方針だ。

 カメラモジュールビジネスがそうであったように、車載モジュールビジネスも、半導体チップなど外部から購入する部材が多く、デバイス単体の事業よりも収益性は低い。しかし、自動車メーカーと直接、取引し、メーカーのコンセプトを具現化する立場でビジネスが行える利点がある。

 車載モジュールビジネスの伸びは緩やかになるが、質の高いビジネスをやっていく。その一方で、収益性の高い車載デバイスビジネスをさらに伸ばし、モジュールとデバイスのバランスをよくしながら、成長させていく。

■パワー/駆動系向け製品を拡充

EETJ 車載デバイスビジネスの強化ポイントは?

気賀氏 これまでは、インテリアのところで実績を積んできたが、今後はパワー、駆動系を増やしたい。既に二輪系では、パワー/駆動系での採用実績が増えてきている。

 商材としては、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)、センシング、コネクティビティ(通信)というアルプス電気のコア技術を生かした製品展開を行うという方針は変わりない。

 センサーであれば、GMRヘッドで培ったテクノロジーを生かしたさまざまな磁気応用センサーや光センサー、温度センサーなどだ。コネクティビティでは、V2X用無線モジュールを2015年に製品化するなどしている。

■独自の付加価値で差異化

EETJ センサーや通信モジュールを強化するメーカーは多くあります。アルプス電気としての強みはどのように打ち出されていきますか。

気賀氏 センサーは、センサーデバイスだけでなく、検知したデータから何が読み取れるかというアルゴリズムの部分が重要になってくる。自社での開発も行うが、大学やベンチャー企業とコラボレーションを行って、アルゴリズムという大きな価値を付加した状態で提供していきたい。

 通信モジュールについては、RFやプロトコルソフトウェアの面で強みを持っている。スマートフォンなどの民生機器向けに、小さく通信モジュールを作り込むことを得意にしたメーカーなどと異なり、アルプス電気は相互接続性が担保され、かつ、車載品質で安定的に動作する通信モジュールを提供できる数少ないメーカーだと思っている。

EETJ 通信モジュールメーカーは、半導体メーカーを買収するなどして垂直統合ビジネスモデルを敷くメーカーが増えています。

気賀氏 半導体は進化が急で、トレンドもすぐに変わる。自前で持つことで大きな負担になる可能性がある。今のところ、半導体メーカーを買収することはない。ただし、既に複数の半導体メーカーとコラボレーションは行っており、今後も積極的に進めていく。

EETJ 3年後、車載ビジネスで売上高3000億円という目標達成見込みはどの程度ありますか。

気賀氏 車載市場のデマンドは堅調だ。3000億円の計画は、よほどのことがない限り、達成可能だとみている。

エネルギー・ヘルスケア・インダストリー・IoT

EETJ 今中期計画では、車載、スマホに続く、事業の柱として「エネルギー・ヘルスケア・インダストリー・IoT(モノのインターネット)」の“EHII事業”を立ち上げるとされています。

気賀氏 EHII事業は、これまでも仕込みを行ってきた事業であり、これからの3年間で、600億円分の売り上げにつながる仕込みを行おうとしている。

 エネルギーについては、アルプス・グリーンデバイスの設立時(2010年)から強化を進め、ヘルスケア分野でも、HMI関連製品で実績を着実に伸ばしてきた。インダストリーは、エネルギーに近いがエネルギーマネジメントシステム(EMS)やファクトリーオートメーション分野をターゲットにしている。IoTについては、エネルギー、ヘルスケア、インダストリーにも共通する概念であり、“EHII事業”として強化する。

■汎用性高い共通基盤構築が「カギ」

EETJ 大手メーカーで構成されるスマホ/民生機器市場や自動車市場と異なり、EHIIの各市場は、少量多品種生産を行うメーカーで構成される市場です。これまでとはビジネスの進め方を変えるのですか。

気賀氏 少量多品種に対応できるように、モノづくりや調達などを変えていく必要があるだろう。もちろん、自動機で大量生産する技術を残しつつになるが。

 重要なことは、これまでもアルプス電気の強みの1つであったカスタマイズ力を、少量多品種生産の用途で、どのように効率的に提供することができるかだと考えている。100通りのカスタマイズを依頼されても、実際にカスタマイズする種類は50通り、30通りで済むような汎用的な共通基盤、プラットフォームをどのように構築するかが勝負になるだろう。

 これまでも、スイッチの大部分の構造は同じだが、小さな変更で、スイッチのフィーリングを顧客ごとにカスタマイズするというプラットフォームが構築できてきた。今後は、ソフトウェアだけでカスタマイズが自由にできる無線モジュールなど強い基盤をそろえていく。

■デバイス+αの追求

EETJ IoTなどの市場に向け、少量多品種対応以外に、アルプスとしてどのような強みを発揮されていきますか。

気賀氏 IoT市場では、チップや小型モジュールをそのまま使いこなしたいと思う顧客は少なく、ソフトウェアなどを含めたすぐに使えるモジュールとして提供し、クラウドまでのサポートを求めるだろう。その辺りでも、アルプスの強みを発揮したい。

 余談だが、昔は、汎用部品だけを提供してビジネスが成り立った。その頃は、顧客が部品の使い方を知っていた。しかし、今は、部品を組み合わせ仕上がった状態で提供して欲しいといわれる。自動車向けにスイッチを提供し始めたが、次第にスイッチ以外の+αを付けた車載モジュールが求められるようになったのがその一例だ。こうした+αを付けて付加価値を提供できる点がアルプス電気のユニークな部分だと自負している。

 今、現在も、そこまでは仕上がったものは要らないから部品だけ欲しいという顧客もいるのも事実。しかし、そうした顧客のほとんどは、その部品に価値を見いだしてはおらず、そこに大きな利益は望めない。

EETJ 付加価値を高めた製品作りには、これまで以上に他社との連携が必要になるかと思います。他社との連携強化策はありますか。

気賀氏 コラボレーションは、とにかく人間関係の構築が大切だと考えている。ただ、企業間でコラボレーションを図ることは、世の中のほとんどの企業が考えていることで、われわれ以外の企業もどこかの企業と連携しようとしている。そういった風潮の中でコラボレーションを図っていくことは特段難しいことではないだろう。

最終更新:9月7日(水)11時42分

EE Times Japan

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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