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老人福祉・介護事業の倒産が過去最多ペース

東京商工リサーチ 9月7日(水)15時0分配信

2016年1-8月「老人福祉・介護事業」の倒産状況

 2016年1-8月の「老人福祉・介護事業」の倒産が62件に達した。介護保険法が施行された2000年以降では、年次集計で過去最多を記録した前年(76件)を上回るハイペースで推移している。
 構成比では、設立から5年以内が46.7%、負債5千万円未満の小・零細規模が70.9%を占め、倒産原因では販売不振が67.7%を占める。安易な起業だけでなく、本業不振による異業種からの参入組やFC加盟社など、小・零細規模で業績不振に直面したケースが多いのが特徴である。
 業界の大きな課題に浮上している介護職員の人手不足が解消されない中、老人福祉・介護業界はここにきて淘汰の波が押し寄せている。
※ 調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。

2016年1-8月の倒産は62件、過去最多を上回るペース
 企業倒産が低水準で推移するなか、2016年1-8月の老人福祉・介護事業の倒産は62件(前年同期比12.7%増、前年同期55件)に達し、年次集計では過去最多ペースで推移している。
 負債総額も69億9,700万円(同45.0%増、同48億2,300万円)と前年同期を上回った。負債10億円以上が2件(前年同期ゼロ)発生し大型化の兆しがうかがえる反面、負債5千万円未満も44件(前年同期比18.9%増、前年同期37件、構成比70.9%)と増え、倒産は広がりを見せている。

デイサービスを含む「通所・短期入所介護事業」の倒産が2割増
 2016年1-8月の老人福祉・介護事業倒産の内訳では、施設系のデイサービスセンターを含む「通所・短期入所介護事業」が最多の28件(前年同期比21.7%増、前年同期23件)発生した。
 また、「訪問介護事業」も25件(同19.0%増、同21件)と前年同期を上回り、有料老人ホームは4件(前年同期2件)発生した。

設立5年以内の倒産が約半数
 2011年以降に設立された事業者の倒産が29件(構成比46.7%)と半数近くを占め、設立から5年以内の新規事業者が目立つ。従業員数別でも、5人未満が42件(前年同期比13.5%増、前年同期37件)と増加し、小規模事業者の倒産が全体の約7割(構成比67.7%)を占めた。このように、小規模かつ新規事業者が倒産を押し上げている構図が浮かび上がっている。
 
原因別、販売不振が前年同期より8割増
 原因別の最多は販売不振の42件(前年同期比82.6%増、前年同期23件)だった。次いで、事業上の失敗が7件、設備投資過大が4件、既往のシワ寄せ(赤字累積)が3件の順。
 販売不振が全体の約7割(構成比67.7%)を占めた。安易な起業だけでなく本業不振のため異業種からの参入(4件)やFC加盟(3件)など、事業計画が甘い小・零細規模の業者が目論見通りの業績を上げられず経営に行き詰ったケースが多い。

形態別、事業消滅型の破産が9割
 形態別では、事業消滅型の破産が60件(前年同期比11.1%増、前年同期54件)と全体の9割(構成比96.7%)を占めた。一方、再建型の民事再生法はゼロ(前年同期1件)で、業績不振に陥った事業者の再建が容易でないことを物語っている。

地区別、9地区すべてで倒産が発生
 地区別では、全国9地区で倒産が発生した。関東の23件(前年同期14件)を筆頭に、近畿12件(同16件)、九州9件(同8件)、東北6件(同2件)、中部6件(同7件)、中国3件(同ゼロ)、北海道1件(同4件)、四国1件(同3件)、北陸1件(同1件)の順。
 前年同期より上回ったのは、東北・関東・中国・九州の4地区。減少は北海道・中部・近畿・四国の4地区、北陸が前年同期同数だった。関東が大幅に増えるなど、地区間で“まだら模様”をみせているが、同業他社との競争も影響しているとみられる。

2016年1-8月の主な倒産事例
 (株)アリーズコーポレーション(TSR企業コード:320834247、法人番号:8040001051246、千葉県)は、書店などを経営していたが業績不振からFCに加盟し、デイサービスセンターを開設した。しかし、初期投資に見合った営業収益を確保できずに5月25日に破産開始決定を受けた。
 (株)松井組(TSR企業コード201003520、法人番号5110001020287、新潟県)は、土木工事会社だったが、建設事業の低迷を補うため介護福祉事業に参入した。最近は介護福祉事業を主力としてきたが業績が改善せず、先行きの見通し難から5月13日に破産を申請した。
 アムール(株)(TSR企業コード:352695595、法人番号1021001047028、神奈川県)は、定員10名のデイサービスセンターを運営し、送迎車2台を稼動させていた。しかし、小規模施設で採算確保が難しく、人件費等の負担も重く1月13日に破産開始決定を受けた。

 2016年の「老人福祉・介護事業」の倒産は過去最多ペースで推移している。2015年4月改定の介護報酬は、基本報酬がダウンした一方、充実したサービスを行う施設への加算が拡充された。しかし、小規模事業者では加算の条件をなかなか満たせないところが多い。特に、新規参入した事業者の多い定員10人以下の小規模デイサービスは基本報酬の下げ幅が大きく、その影響が顕在化しつつあるようだ。
 介護報酬改定から1年を経過し、「老人福祉・介護事業」の倒産は2016年4月以降、5カ月連続で前年同月を上回っている。特に、2016年4-8月累計は47件(前年同期比67.8%増、前年同期28件)と増勢が目立つ。このうち、施設系のデイサービスセンターを含めた「通所・短期入所介護事業」の倒産は23件(同76.9%増、同13件)と際立っている。施設系デイサービスは、利用者の需要が高いため、異業種からの参入や起業する人は多いが、ノウハウ不足や慢性化した人手不足が経営の足かせになっている。
 高齢者の増加で介護分野は今後も市場拡大が見込まれるが、地区別で経営環境は異なっていても一様に厳しさは増しており、事業基盤の脆い事業者を中心に選別の時期を迎えているようだ。

東京商工リサーチ

最終更新:9月7日(水)15時0分

東京商工リサーチ

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