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人を動かす隠れたテクニックとは?

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月7日(水)8時37分配信

 昨年、筆者は動物保護施設から子犬を引き取り、「スカウト」と名付けた。7歳になる甥っ子のザッチーは、この子犬と関わりたがらなかった。スカウトはあまりにやんちゃで、ザッチーに飛びついて顔をなめようとしたりした。

 ザッチーにはスカウトと仲良くしてもらいたかったので、スカウトはあなたが大好きなのと説明した。私はザッチーを「子犬のトレーナー」と呼び、スカウトの訓練を手伝ってくれる人が必要で、ザッチーには特別な能力があると言った。

 私は「オルターキャスティング」を実践していたのだ。心理学者やコミュニケーションの専門家は、他人を自分の思うように動かすために、その人を特定のタイプの人間として位置づける説得のテクニックを「オルターキャスティング」と呼ぶ。

 今ではザッチーは私の家に来るとすぐにスカウトを探し、どうやったらスカウトが言うことを聞くか知っていると誇らしげに話す。

 人は良かれあしかれ、誰もがこの技術を使っている。残業して報告書の校正をしてほしいと同僚に頼みたいのなら、「あなたは文章がうまいし、このテーマをよく知っている」と言えばいい。夫にガレージを片付けてもらいたければ、「夫としてとても頼りにしている、妻の幸せを願ってくれていることは分かっている」と伝えればいい。

 上記のケースで共通するのは、頼みごとをする前に相手にある役割を与えていることだ。専門家によると、この方法がうまくいくのは、一般的に人間には、難しい局面で力を発揮したいという気持ちがあるからだという。

 オルターキャスティングは1960年代初め、ユージーン・ワインスタイン氏とポール・ドイチュバーガー氏という2人の社会学者が構築した理論だ。テーマごとに実験室で再現するのにあまりに人手がかかることもあって、これまであまり多くの研究は行われていない。ただ心理学者によると、現実の世界では広告関係者や資金調達者、親、教師、配偶者、セラピストなどによって幅広く利用されている。

 オルターキャスティングには2つのやり方がある。1つは、自分は態度を変えず、相手にある役割を率直に伝える方法、もう1つは何も言わずに自分の態度を変えて、相手に期待する役割をほのめかす方法だ。

 例えば、夫に夕食の用意をしてもらいたい時はどうするか。前者なら「あなたは料理がとても上手よね。今晩、夕食を作ってくれる?」と言う。後者なら、探している材料が見つからないふりをしながら台所で動き回り、夫が声をかけるのを待つといったところだろう。

 社会心理学者でアリゾナ州立大学の心理学とマーケティングの名誉教授であるロバート・チャルディーニ氏は、オルターキャスティングは種を植える前に土を耕すようなものと思えばいいと話す。「プロの庭師は土壌を整えて種子を最適な状態で迎えられるようにしておかなければ、どれほどいい種子であっても関係ないことを知っている」。

 これは他人を操ることになるのだろうか。それは、相手をだます気持ちがあるかどうか、相手が働きかけをどのように感じるかによる。

 心理学者でミシガン州立大学メディア・情報学部教授のデービッド・イウォルドセン氏によると、「相手が『操られている』と感じたらオルターキャスティングは大きな悪影響を及ぼすことがある」が、相手のためを思っているのであれば、説得力のあるテクニックとして効果が期待できるそうだ。

オルターキャスティングを実践するためのヒント

相手を知る

 相手が自ら望む役割を与える。ミシガン州立大学のコミュニケーション学教授、フランク・ボスター氏は「相手の価値観にとってどのような役割が重要かを考える」ことを勧めている。

自分と相手の関係を強調する

 働きかけてきた人間との関係を考えると、大いにやる気になることがある。ほとんどの人は人間関係において良きパートナーになりたいと思っている。相手に対して感謝の気持ちを表現することも効果的だ。

きちんと説明する

 相手にどんな役割を担ってほしいか、それはなぜかを相手に説明する。ミシガン州立大学のイウォルドセン氏によると、透明性を確保することで、あなたが相手を操作しようとしているとの見方を取り除くことができるはずだ。

自己中心的にならない

 米コミュニケーション学会の最高情報責任者(CIO)のジム・パーカー氏は、自分がそう望むからという理由だけで相手に役割を押し付けるのは搾取だと指摘している。

By ELIZABETH BERNSTEIN

最終更新:9月7日(水)12時5分

ウォール・ストリート・ジャーナル

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。