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3セクの駅間再開発「青森アウガ」経営破綻、官主導の再開発は限界なのか

ZUU online 9/8(木) 8:10配信

青森市の第三セクター「青森駅前再開発ビル」が運営する複合商業施設「アウガ」が事実上の経営破綻に陥っている問題で、副市長2人の相次ぐ辞職など市政の混乱が深刻化している。市はアウガから商業施設を撤去し、公共施設化する計画を持つが、市議会の一部は鹿内博市長に辞職を申し入れており、収拾の気配は見えない。

アウガは2001年、空洞化したJR青森駅前ににぎわいを取り戻すためオープンし、コンパクトシティの先進例ともてはやされた。しかし、開業当初から赤字に陥り、経営危機が続いてきた。身の丈に合わない開発と甘い収支見通しが招いた典型的な失敗例といえそうだ。

■コンパクトシティの先進例として青森駅前に建設

青森市によると、アウガは青森駅前の新町商店街にある鉄筋コンクリート地下1階、地上9階建てで、延べ床面積約5万5000平方メートル。地下は新鮮市場とレストラン、1~4階に若者向け衣料、雑貨を中心とした商業テナント、4階の一部から8階に市民図書館、男女共同参画プラザなど公共施設、9階に市民図書館の書庫が入る。

市の中心商店街に当たる新町商店街は郊外型ショッピングセンターに押されて空洞化が進んでいた。この現状を打開するとともに、将来の人口減少を見越してコンパクトシティを実現するために、市中心部の集客拠点として185億円かけて建設されたのがアウガだ。

しかし、市の思惑は初年度から外れた。売り上げは当初予測52億円の半分以下にとどまる23億円。賃貸料収入が当初計画を大幅に下回り、慢性的な資金不足に。そこへ借入金による多額の金利負担が加わり、三セク会社の経営を圧迫した。

三セク会社は再三、経営改善計画をまとめて増収策に乗り出したが、思うような効果を出せないまま。市は2008年、金融機関の債権23億円余りを約8億5000万円で買い取って三セク会社の金利負担を軽減したほか、2010年に2億円の融資や5億6000万円の増資などを実施した。

さらに市は有識者らによるアウガ経営戦略委員会を設立し、再生計画見直しを進めたが、経営状態は一向に改善せず、2015年度決算で約24億円の債務超過に陥った。2016年7月末の現預金は実質残高が約5800万円。もはや三セク会社の法的整理は時間の問題だ。

市は2月、商業施設としての再生を断念し、全館を公共施設にする考えを明らかにした。鹿内市長は商業施設撤去時期を2017年3月としていたが、9月市議会一般質問への答弁で「撤去時期は三セク会社やテナントと協議して決めたい」と撤回した。

■売り上げ低迷で、市は商業施設としての再生を断念

アウガの売り上げが低迷したのは、郊外のショッピングセンターなどに客を奪われただけでなく、テナント構成が若者に偏り、中高年層が買いたい商品がないとの指摘が早くから出ていた。アウガが中心商店街に人を集める効果を発揮していないわけだ。

その結果、空き店舗が相次ぎ、来館者数も2006年の637万人をピークに減少を続けている。買い物客数は2013年から100万人の大台を割った。店頭売上高も年々下がり、2014年は約16億円足らず。当初予測の3割でしかない。

市の経営戦略委員会は最終報告で「集客力がある核テナントがない」、「フロアごとのコンセプトが不明確」などと厳しく指摘していた。大都市圏に比べて人口が少ない青森で利用客の数は限られる。きちんとした戦略や方向性を打ち出せなかったことが影響したことは間違いないだろう。

収支見通しの甘さも批判されている。建設当時、全国で三セク会社の赤字が問題になっていた。それなのに、大型施設を建設することばかりに目が行き、稼ぐための議論がおろそかになったと指摘する声もある。

小手先の対応で撤退の決断を先送りしてきたことも、負債を大きくする要因となった。8月に入って副市長2人が次々に辞職したのは、こうした責任を取ったものとみられる。

■官主導の開発事業、全国で失敗が続出

甘い収支予測や身の丈に合わない開発が原因となり、自治体が負の遺産を抱えることになった例は青森市だけではない。失政のつけは自治体の財政にはね返り、住民が払うことになる。

今年1月には、山梨県南アルプス市の観光農園運営会社「南アルプスプロデュース」が経営破綻した。市が筆頭株主として5億円以上を貸し付け、2015年6月から観光農園を営業したが、開業早々から赤字が続き、わずか7カ月で行き詰った。

負債総額は約7億4000万円。農園カフェや地場産品直売など他県の成功例を模倣しただけのメニューしかなく、集客できなかったわけだ。甘い収支見通しが負の遺産を生んだ例といえる。

身の丈に合わない開発の失敗例は大阪にある。大阪市が1200億円もの巨費を投じて1995年に開業した「大阪ワールドトレードセンタービルディング」は、空きフロアが相次いで早々と経営破綻した。今は大阪府に買い取られ、咲洲庁舎となっている。

地下3階、地上55階の高層ビルを建てたのは、市の中心部から遠く離れた住之江区の人工島。バブル崩壊で周辺の開発が進まず、進出するオフィスが少なかった。

稼ぐためのノウハウに乏しいのは自治体の弱点だ。事業計画を先に作り、帳尻合わせの収支予測を後から策定する古い手法もいまだに生きている。こうした考えを捨て去らない限り、アウガのような負の遺産が今後も後を絶たないだろう。アウガの破綻は官が主導した再開発の限界を見たような気がする。



高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:9/8(木) 8:10

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