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燃えにくくて軽い太陽電池、電気自動車の屋根や住宅の壁にも

スマートジャパン 9月8日(木)9時25分配信

 産業技術総合研究所(産総研)が新しい太陽電池モジュールを開発した目的は、太陽電池の安全性と信頼性を向上させながら、設置できる場所を広げることにある。そのために燃えにくくて、割れない、しかも軽量で簡単に設置できることを目指した。

 工夫した点は太陽電池モジュールを構成する部材だ。市販の太陽電池モジュールは結晶シリコン(Si)の上に半導体を作って発電する方式が主流になっている。従来は合成樹脂のEVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)を封止材に使って太陽電池を保護したうえで、表面を強化ガラスでカバーする構造が一般的である。

 これに対して新開発のモジュールは封止材に耐久性のあるシリコーンゴムのシートを採用した。信越化学工業が太陽電池モジュール用に開発したもので、太陽電池の素材になるシリコンを化学反応させてシリコーンを製造する。シリコーンはゴムに近い性質があるため、柔軟で燃えにくいことが特徴だ。ただしEVAと比べて製造コストが高い難点がある。

 産総研と信越化学工業は太陽電池モジュール全体のコストと重量を抑えるために、外側のアルミフレームで太陽電池を固定する方法に代えて、アルミ合金板を裏面の素材に使って太陽電池を固定する方法を採用した。封止材に耐久性の高いシリコーンを使うことで、モジュールの表面も厚いガラスではなくて薄い高分子フィルムに置き換えた。試作したモジュールは同じサイズの従来型と比べて重さが約2分の1に軽くなった。

鋼球を落としてもシリコーンが衝撃を吸収

 封止材のシリコーンや表面材の高分子フィルムは燃えにくいため、裏面材のアルミ合金と組み合わせてモジュール全体の難燃性を高めることができる。木製の火種を使って建築基準法に基づく燃焼・飛び火試験を実施したところ、従来型のモジュールと比べて新開発のモジュールは火種の影響が小さかった。

 従来型のモジュールでは表面のガラスが割れたほか、EVAによる封止材や裏面のバックシートまで燃焼した。一方の新モジュールは火種の灰などが表面に付着した程度で、シリコーンの封止材、高分子フィルムの表面材、アルミ合金の裏面材に大きな変化は生じなかった。

 さらに衝撃に対する強度を調べる鋼球落下試験も実施した。重さが225グラムの鋼球を高さ1メートルからモジュールの表面に3回落下させて、太陽電池の出力を測定する試験だ。従来型のモジュールは太陽電池を構成するセルの一部が割れて、出力は87%まで低下した。

 新モジュールには破損がほとんどなく、出力も99%で影響は小さかった。シリコーン封止材が鋼球落下の衝撃をやわらげる効果があったと産総研では評価している。太陽電池モジュールの破損状態を評価するために、外部から電流を加えてセルの発光状態を観測するエレクトロルミネセンスの画像を比較しても両者の違いが明確に出た。

 このほかに荷重試験や高温・高圧試験(温度85℃、湿度85%)を実施した結果、新モジュールは88キログラムの荷重に耐えられる強度があり、3000時間にわたる高温・高圧状態でも出力が低下しなかった。今後さらに信頼性を評価する各種の試験を続けながら、モジュールの構造や部材の最適化を進める予定だ。

 軽量で難燃性と耐衝撃性が高いことから、電気自動車の屋根に搭載する太陽電池モジュールや、住宅の建材と一体型になった太陽電池モジュールの製品化を想定している。

最終更新:9月8日(木)9時25分

スマートジャパン