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“重厚長大”な三井住友銀が「デジタル変革の旅路」を語る

アスキー 9月8日(木)7時0分配信

日本マイクロソフト「Microsoft Foresight」2日目基調講演では、三井住友銀行の谷崎勝教氏がゲスト登壇し、同社におけるデジタルトランスフォーメーション推進の背景を語った。
 日本マイクロソフトが企業のビジネスリーダーを対象に開催した「Microsoft Foresight」2日目基調講演では、三井住友銀行とアクアが登壇し、それぞれのビジネスにおける「デジタルトランスフォーメーション」の姿と、その実現に向けた戦略を語った。
 

 まず登壇した日本マイクロソフト 社長の平野拓也氏は、1日目の基調講演のもようを振り返りながら、マイクロソフトが支援できるデジタルトランスフォーメーションは、大きく「お客様とつながる」「社員にパワーを」「業務を最適化」「製品を変革」という4つのカテゴリーに分類できるとあらためて説明した。
 
 以下本稿では、基調講演前半で語られた、三井住友銀行におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組みについて紹介する。ゲスト登壇したのは、三井住友銀行 取締役兼専務執行役員の谷崎勝教氏だ。
 
「働き方を変えなければ、取り残されていく」強い危機感
 三井住友銀行では今年5月、業務効率化やワークスタイル変革を目的として、Windows 10搭載デバイスや「Office 365」「Enterprise Mobility Suite(EMS)」などを導入したことを発表している。それ以前から、育児や家族介護でオフィス勤務に制約のある従業員を対象とした在宅勤務を試行していたが、それをさらに強化する動きだ。前述の4カテゴリーに当てはめると「社員にパワーを」という取り組みである。
 
 同行がこうした変革を推進する背景には、中期経営計画(2014年)において「あらゆる経営目標の達成のためには、ダイバーシティ推進が不可欠である」と明記されたことがあるという。頭取がトップを務める「ダイバーシティ推進委員会」を立ち上げて全社的な取り組みを進めており、その一環として在宅勤務の実現なども位置づけられている。
 
 「金融機関というのは『重厚長大』な企業であり、ITの取り組み1つを動かすにも、ものすごく手間暇がかかるのは否めない事実。また、企業文化としてもやはり保守的だ。それでも、現在の(社会的な)流れのなかで『働き方を変えていかなければならない』という危機感が強くある。変革を進めていくうえで一番大切なことは、経営トップの強いコミットメントではないかと考えている」(谷崎氏)
 
 前述のとおり、三井住友銀行では頭取が先頭に立ってダイバーシティを推進しており、たとえばワークスタイル変革のためのクラウドや新デバイスの活用においても、IT部門だけではなく、総務や人事、法人営業、個人営業など、幅広い部門を巻き込んだ全社的な取り組みになっているという。
 
 「IT部門がITツールをどんどん導入する、というだけでは“宝の持ち腐れ”になってしまうリスクがある」「金融機関という組織では仕事がサイロ化しがち。各部門が同じ仕事をし、しかもそれぞれに部分最適の仕組みが構築されてしまうことで、大きな無駄が生じる。全体最適の観点から、1つの仕組みで効率的にできる方法、さらには部門間のコミュニケーションがよく取れる方法、それを志向しなければならない」(谷崎氏)
 
 こうした観点から谷崎氏は、デジタルトランスフォーメーションに向けたさまざまな取り組みは、やはり経営計画という大きな流れの中できちんと位置づけ、トップ主導型で進めることが大切であるという考えを示した。
 
 「周りが急速に変化しているなかで、働き方を変えなければ、企業はそのまま取り残されてしまう。限られた時間の中で最大のアウトプットを出すにはどうすればよいのか。また10年後、20年後には現在の若手社員や大学生、高校生が企業を担うようになる。その彼らが、これからどのようなワークスタイルを望んでいくかもわれわれはきちんと理解していかなければならない。デジタルネイティブ、ミレニアル世代と呼ばれる人たちが中心となる時代に、今の働き方のままでいいのか。企業のリーダーたちは考えなければならない」(谷崎氏)
 
顧客との関係もデジタル変革、さらにパブリッククラウドの積極的活用も
 谷崎氏はまた、ワークスタイル変革という行内での取り組みの次のステップとして、「『お客様との関係』に、どれだけデジタルトランスフォーメーションの流れを取り入れられるかが勝負になるのではないか」と考えていると語る。平野氏が上げた「お客様とつながる」の取り組みだ。
 
 「たとえば法人営業の現場。現在は、お客様の要望をうかがったら、いったん行内に持ち帰って、いろんなセクションと打ち合わせをしたうえでお客様に提示する。これだと、提示できるまでに1日、2日とかかってしまう。コミュニケーションツールがどんどん進化すれば、客先ですぐに行内の専門部署を交えた話し合いができ、その場でパッと提示もできるようになる」(谷崎氏)
 
 谷崎氏は、現在は行内のコミュニケーションに活用している「Skype for Business」を顧客コミュニケーションにも活用したいと語った。コミュニケーションにおいては特に「リアルタイム性」と「効率性」を重視しており、それらを実現できるチャットやWeb会議なども活用して、「お客様とつながる」をさらに進化させていく考えだという。
 
 「たとえば当行では『住宅ローン事前審査アプリ』を開発した。これを使ってタブレット端末から申し込んでいただければ、15分でローン事前審査の回答メールが返ってくる。これまでは回答までに何日も待っていただいていたが、まったく無駄でしかない。このように、社内だけでなくお客様との間でも、コミュニケーションのリアルタイム性と効率性をどんどん追及していかなければならない」(谷崎氏)
 
 もう1つ、谷崎氏は“第4次産業革命”とも言われる大きな変化の流れを受けて、パブリッククラウドの積極的な活用も考えていると語った。前述した今年5月のOffice 365採用発表の際には、併せて「Microsoft Azure」の採用も明らかにしている(ただし、具体的にどのようなシステムをクラウド移行する/したかについては言及していない)。
 
 「金融機関という性格上、基幹システムの勘定データなどをパブリッククラウドに載せることは難しい。しかし、その一方で、金融機関と言えども一般企業と同じように、パブリッククラウドが持つ数多くのメリットは享受したいと考えている。どこまでをクラウド移行すべきかという議論はあるにせよ、そのメリットをまったく享受せず、放置するというのではもったいない」(谷崎氏)
 
 加えて谷崎氏は、新しい金融サービス、新しい営業スタイルを顧客に提供することを目的として、クラウドに限らず新しいテクノロジーを貪欲に吸収していくスタンスが必要になっていることを指摘した。
 
 「“デジタル”という言葉が経営のキーワードになっているように、テクノロジーはどんどん進化し続ける。われわれもそれに追いついていかなければ取り残される」「われわれ自身は、まだ“デジタルトランスフォーメーションジャーニー(デジタル変革の旅路)”という道のりの途中だと考えており、まだまだやらなければいけないことはたくさんあると考えている」(谷崎氏)
 
 
文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

最終更新:9月12日(月)6時9分

アスキー