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ダイハツの新型軽自動車が狙う、「親と同居する30代以降の独身女性」の市場とは

MONOist 9月8日(木)6時25分配信

 ダイハツ工業が2016年9月7日に発売した新型軽自動車「ムーヴ キャンバス」は、軽自動車市場での女性シェアを回復する役割を担う。同社は2010年時点、未婚/新婚/子育て中の女性市場で40%超のシェアを握っていたが、2014年にはシェアを約10ポイント落としている。

【ムーヴキャンバスのフロントフェイスなどその他の画像】

 子育てに向けたモデルは「タント」が車名別販売順位で上位にランクインするものの、未婚や子どものいない女性に向けた「ムーヴ コンテ」(2008年発表)や「ミラ ココア」(2009年発表)はフルモデルチェンジを1度も実施しておらず、鮮度が低下していた。

 そのような中、ムーヴ キャンバスは女性の中でも、親と同居する30代以降の独身女性をターゲットに絞り込み、手薄になっていた女性向けラインアップを強化する。

●“親と同居する30代以降の独身女性”の市場規模

 ムーヴ キャンバスが対象とするのは、価格よりも利便性や所有の満足感を優先できる環境の女性だ。

 ダイハツ工業の調査によると、親と同居する女性は親の意向を聞くことで購入資金の全額もしくは一部を親に負担してもらうケースが過半数を占めており、購入予算に余裕があるといえる。また、親元で暮らす未婚女性は、平均購入額が全体より8万円高い144万円で、「多少無理をしても気に入ったクルマを選ぶ」という人が65%を占める。

 このような親と同居する独身女性は一定の割合を占めている。まず、女性の未婚化や晩婚化が進んでいるため、離婚や死別も含めると40代までの女性の49%が独身だ。特に30~40代の女性は未婚者数が増え、2016年の見通しでは1995年の2倍近い394万人まで増加するとされている。さらに、40代までの未婚女性で、親と同居する人は30%を占める。

 こうした女性の中でも軽自動車ユーザーに着目すると、未婚女性のうち親と同居する人は78%まで増える。年代別に見ると、軽自動車ユーザーで親と同居する未婚女性は30代と40代以降が年々増加する傾向にある。また、親娘でクルマを共用する比率も高い。

 ムーヴ キャンバスは、こうした女性をターゲットとして気に入って選んでもらえるデザインを目指すとともに、親が購入資金を支援することを決められるような機能性も持たせた。

●既存の女性向けラインアップとは食い合わない

 モデルライフが長くなっているとはいえ、女性向けという点ではムーヴ コンテやミラ ココアといったモデルと食い合いになりかねない。これに対し、ダイハツ工業 ブランド・DNA室 主査の北野恵睦氏は「ムーヴ キャンバスは両側スライドドアを採用した点で、(2モデルとは)ターゲットが違う。また、ムーヴ キャンバスは、“テイスト系”でシンプルなコンテとは異なり、狙うユーザーを絞り込んでいるので、食い合わない」と説明する。

 また、同社のデザイン担当の説明員は「ミラ ココアを若い女性に向けたエントリーモデルと位置付けているのに対し、ムーヴ キャンバスは親娘ともに大人が使うことを踏まえたデザインとした」と話す。

●30代女性とその親世代にこのデザインはどう見えるか

 ムーヴ キャンバスのデザインは、「ナチュラル」「愛着」「アクティブ」をキーワードにしている。ファッションでナチュラルさやシンプルさが重視される傾向や、“自分への投資”として積極的に外出するターゲット女性から着想を得ている。また、シンプルで奇をてらわないデザインとすることで、親世代も含めて長く愛着を持ってもらうことを目指した。

 外観は「角がない丸い印象で可愛らしい雰囲気を演出し、ファンシーにならないようにした。可愛すぎるのは、ターゲットとする女性本人や購入を援助する親からも毛嫌いされるからだ」(ダイハツ工業の説明員)。

 しかし、「アクセサリーをイメージしたヘッドランプのキラキラ感や、光源をランダムに配したリアランプ、ドリンクホルダーの色使いなど、“このクルマのここがお気に入り”と思ってもらうための工夫を用意した。購入の決定打にはならないかもしれないが、購入意欲を刺激できるのではないか」(同社の説明員)と女性の心をつかもうとしている。

 また、社内で「やりすぎだ」と否定的な声も上がった2トーンの「ストライプスカラー」も用意し、ユーザーが個性にこだわれるようにした。「(ベースとなった)タントは家族で乗るクルマだが、ムーヴ キャンバスは1人か2人で乗るパーソナル感を重視している。無難なクルマがほしい人は他の選択肢に行くだろうが、個性を大切にするターゲット女性に応えるためだ。車体の上下を大きく分ける配色にすることで、ピンクや黒など主張するボディーカラーの見え方が変わってくる。例えば、ピンクは可愛すぎず、黒も男性的になりすぎずに見えるのでは」(同社の説明員)。

●燃費では競わない

 デザイン担当の説明員は「意匠にこだわる“テイスト系”を増やしていき、他社の軽自動車にはない、ダイハツとしての独自性につなげたい」と述べた。

 また、同社 上級執行役員 開発本部担当の上田亨氏も「お客さまには、燃費は30km/lもあれば“十分良い”と評価していただける。その次の段階では嗜好性や用途に合うかどうかが焦点になる。他社と30km/l以上の燃費改善を競うよりは、コンセプトに合った意匠や機能を盛り込んでいく方が競争力を高められる」と燃費競争には乗らない姿勢を示した。

最終更新:9月8日(木)6時25分

MONOist