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競歩初の銅に尽力 元陸連強化委員長語る“メダルへの軌跡”

日刊ゲンダイDIGITAL 9月8日(木)9時26分配信

 リオ五輪の日本選手団は41個のメダルを取った。50キロ競歩で日本初のメダルを獲得したのが荒井広宙(28)だ。レース終盤、カナダ選手を振り切り3位でゴール。直後の失格騒ぎなどもあって話題を集めた。競歩の発展に尽力した関係者はあまたいるが、元日本陸連選手強化委員長の澤木啓祐氏(72=順大特任教授)もそのひとり。国内競歩の軌跡と、それとは対照的に衰退している国内マラソンについて聞いた。

――リオで競歩が、やっとメダルを取りました。

「国内競歩のパイオニアといえば斉藤和夫さん(故人=元陸連競歩強化部長)です。長距離から転向し、1964年の東京(25位)、68年メキシコ五輪(17位)の50キロに出場した選手です。メキシコ大会は標高約2300メートルでの開催だったのですが、高地トレーニングに対する取り組みが未熟だったことで、思うような結果につながらなかった。そこから競歩は、メキシコでの高地合宿を繰り返すことになったのです」

――それから50年近く経っていますね。

「科学的、医科学的な数値を出しても、現場の指導者は競歩の経験値を優先し、トレーニングの知識やノウハウが少なかった。科学的なデータと現場がうまく融合しなかったのです。私が2001年に強化委員長になってから、競歩の指導者にはもっと幅広く勉強をしてもらいたいと伝えた。指導者は誰もが専門バカなんです。バカにならなければいい作品(選手)はつくれないんだが、世界と戦うわけですから、いろいろな知識があった方がいい。その第1弾が、今の陸連競歩部長を務めている今村文男君の海外研修です」

――今村さんは現役時代、91年の世界陸上東京大会50キロで7位、97年(アテネ大会)にも6位になっていますね。

「今村は日本オリンピック委員会(JOC)の海外研修制度で、05年にイタリアのサンドロ・ダミラノ氏の下でコーチ研修を受けた。行く前には私のところ(順大)の大学院生として2年間、アスリートの血液についてなど、スポーツ医科学を学んでもらった。サンドロには双子の弟がいて、その一人マウリツイオは、モスクワ五輪20キロで金メダル、84年ロス、88年ソウルで銅、91年世界陸上東京大会で金メダルを取っている。今村がサンドロのところにいる間に、谷井孝行、森岡紘一朗、鈴木雄介らが、イタリアに合宿に行き、技術のレベルを上げたのです」

――それが第1弾とすれば、第2弾は何をやったのですか。

「競歩は歩型が重要だが、それまでの選手は筋力や持久力が不足していた。そこで、93年世界陸上女子マラソンで金を取った浅利純子や92年バルセロナ五輪代表選考会で優勝した小鴨由水を育てたダイハツの鈴木従道監督の力を借りた。彼が定年になったので、競歩のトレーニングコーチとして呼んだのです。私と鈴木さんとはメキシコ五輪に出場した仲でね。ひと肌脱いでくれとお願いしたわけです。そして競歩の指導者に、マラソンの練習に比べて、競歩の練習がいかに質と量が劣っているかを実感してもらい、マラソン流のトレーニングを広めたのです」

――マラソン流のトレーニングとは、どんなものですか。

「起伏のある場所で走り込んだり、練習での歩行距離を延ばした。サロマ湖100キロマラソンで100キロ競歩に挑戦させ、1カ月に1200キロになることもあったようだ。鈴木さんは山崎勇喜に厳しいトレーニングを課し、北京五輪で7位(入賞)の結果を出した。あれが男女を通じて競歩の日本勢としては初の五輪入賞でした。山崎の後には、森岡紘一朗(富士通)が11年世界選手権50キロ5位。東洋大の松永大介は14年世界ジュニア10キロ優勝。昨年は20キロで鈴木雄介(富士通)が世界新記録を樹立し、世界選手権50キロで谷井孝行(自衛隊)が3位で日本初のメダルを獲得。荒井(自衛隊)も4位に入った。ちなみに、全日本能美大会で出した鈴木の世界新は懐疑的だな。厳しいようだが、あそこは記録が出るコースなので、世界大会では何の役にも立たない」

▽さわき・けいすけ 1943年、大阪府出身。順天堂大学4年時に箱根駅伝2区で区間賞、初優勝に貢献。65、67年ユニバーシアード5000メートル優勝。67年同1万メートル優勝。メキシコ、ミュンヘン五輪5000メートル、1万メートル代表。1500メートル、5000メートル、1万メートル、20キロなど7種目の日本記録を樹立する。74年から母校・順大で指揮を執り、箱根駅伝では4連覇を含む9度の総合優勝を果たす。元日本陸上競技連盟選手強化委員長、専務理事、副会長を歴任。現順大大学院スポーツ健康科学研究科特任教授、日本盲人マラソン協会理事長、医学博士。

最終更新:9月8日(木)9時26分

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