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「水路で発電」を低コストに、3人で設置できるマイクロ水車

スマートジャパン 9月8日(木)6時40分配信

 NTNは2016年9月6日、福島県須川市で同年6月から実施している小水力発電機の実証試験の様子を公開した。同社では新規事業の一環として、日本の各地に広がる農業・工業用水路に設置しやすい小型の小水力発電機の開発を進めている。須川市での実証試験は間もなく終了し、同年12月から販売を開始する予定だ。

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 実証試験の場所は、須川市にある「新安積疏水(しんあさかそすい)」。日本三大疎水の1つである「安積疏水」から、新たな開拓地に水を引く幹線水路として1951年に開通した水路だ。

 今回の実証試験では普段農業用水路として利用されている部分に、約100m(メートル)にわたって10台小水力発電機を直列に設置した。実施については政府や自治体への申請の他、水路を管理する安積疏水土地改良区、周辺の農業従事者の協力を得た。

 NTNが開発を進めている小水力発電機は流水でプロペラを回し、それと連動する発電機で発電するというシンプルな構成だ。翼径は60/90/120cm(センチメートル)の3種類を用意する。発電出力の参考値は翼径90cmのモデルで流速が2m/s(メートル秒)の場合で1.0kW(キロワット)。販売時は翼径の種類の他、発電機のグレードなどのカスタムも可能としている。

1台1時間、合計3人で設置可能

 NTNが同社の小水力発電機の大きなメリットの1つとするのが、設置コストの低さだ。小水力発電機の重量は130~150kg(キログラム)。移動式クレーン車1台と3人の作業者のみで、1台当たり1時間程度で設置できるという。

 設置手順は以下の通り。まず発電機とプロペラ水車を支える2本を梁(はり)を、水路をまたぐように取り付ける。この梁は水路左右の基礎部分を挟むようにして固定する仕組みで、水路に対して何か工事を加える必要はない。

 梁を設置した後は、移動式クレーン車で発電機とプロペラ水車の部分をつるし、梁の上に置くだけ。設置のために一時的に用水路の水流をせき止める必要もない。

 用水路で小水力発電を行う場合、水路をせき止めて水位の落差を作り、水が落ちるエネルギーを使って発電する方式もある。こうした方法の場合、設置にある程度の工事費用が掛かる。NTNの開発する小水力発電機は、こうした落差形成のためのコストが必要ない。規模によって異なるが、人件費などを含め5~10万円程度で設置できるという。

 小水力発電機を設置できる水路の幅と水深は、翼径+10cmが目安になるとしている。翼径が60cmであれば、70cmの幅と水深を持つ水路であれば設置できる。販売する際は、設置する水路の幅に梁の長さを合わせ製作し、提供する。なお、設置後の日々のメンテナンスは不要だという。また、水車の回転を阻害しないよう水路内のゴミをろ過する除塵スクリーンもオプション製品として用意する。

さらなる直列設置を可能に

 小水力発電機は複数台を水路に直列に並べて設置することで、全体の出力や発電量を増やすことができる。しかし、流れの上流にある水車が回転すると、下流によどみが生まれる。このよどみによって、下流の水車の回転効率が落ちると、全体の発電効率が下がってしまう。そこでNTNでは実証試験の中で、なるべくよどみが生まれない水車の形状と、最適な水車と水車の距離も検証した。

 まず、水車の形状ではギアボックス部分に砲弾型のカバーを採用した。これにより水車の後方に生まれる水のよどみやうねりを少なくできるという。

 実証試験では水車と水車を10メートル間隔で設置していた。しかし実証を続ける中で、こうした砲弾型のカバーの採用などにより、実際には数m程距離を縮めても問題ないことが分かってきたという。設置できる間隔が短くなれば、水路長に対してより多くの小水力発電機を設置できる。NTNでは2016年12月の販売に向け、今後もギアボックス部分の形状などの改良を続けていくとしている。

1日1世帯分の電力を発電

 では一体どれくらいの電力を発電できるのか。3カ月にわたる実証試験の結果、翼径60cmの水車では1日当たり4.3kWh(キロワット時)、同90cmの水車では1日当たり12.0kWhを発電できることが分かった。90cm水車であれば、1日当たり約1世帯分以上の使用電力量を発電できる計算だ。これはNTNが事前にシミュレーションしていた通りの性能だという。

ターゲットはエネルギーの地産地消

 小水力発電機は系統接続し、再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)を利用して発電した電力を売電することも可能だ。2016年度の小水力発電の買取価格は1kWh当たり税別34円。今回の新安積疎水の実証試験のデータに基づいて簡単に試算すると、90cm水車の場合は1日当たり408円、1カ月当たり約1万2000円、年間14~15万円程度の売電収入になる。

 NTNではより効率を高めるべく改良を続けた上で、小水力発電機を1台当たり130〜150万円程度で販売する予定だ。売電用途での利用も可能だが、NTNが主な用途として想定しているはエネルギーの地産地消だ。

 NTN 執行役員 新エネルギー商品事業部 事業部長の石川浩二氏は「日本には約40万kmの用水路があるといわれているが、その多くはまだ活用されておらず、再生可能エネルギー源として大きなポテンシャルがある。また、既にある用水路を使い、小水力発電機を独立電源として活用したいというニーズはあると考えている。販売前だが既に複数の引き合いがある」と語った。

 このように独立電源として利用して利用するケースを想定し、パートナー企業と提携し蓄電池をセットにした提案も検討する方針だ。また、農業用水路だけでなく、工業用水や排水路、下水道などでの利用も提案していくとしている。

 NTNは2018年度までの中期経営計画において、新規事業の創出を掲げている。その1つがエネルギー事業だ。今回開発した小水力発電機は2016年7月に販売を開始した風力と太陽光で発電する「ハイブリッド街路灯」に続く、第2弾の製品となる。小水力発電機は2025年までに売上高50億円を目指す方針だ。また、2017年春をめどに、再び新安積疎水で小水力発電機の実証試験を再開する予定で、今後も製品改良を続けるとしている。

最終更新:9月8日(木)6時40分

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