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ついにiPhoneでSuicaが利用可能に――AppleとJR東日本が協力して生み出したSuicaの新しい姿

ITmedia PC USER 9月8日(木)20時52分配信

 既報の通り、iPhone 7とApple Watch Series 2はFeliCaチップを搭載し、Suicaの利用が可能になるが、これは日本で購入したiPhoneだけの特徴だ。

【Apple Watchをかざして改札を通る風景】

 10月下旬のある日、突然、iPhone 7やApple Watch Series 2の画面に、Suicaが使えるようになったことを伝える通知が表示される。そしてその日を境に、駅の数にして4710、バス3万台、そしてお店の数にして35万店舗以上で採用される世界最大の電子決済サービス、Suicaが両デバイスで利用可能になる(この数字は3年前から始まった他の交通系ICカードとの相互利用を含む)。

 これは10年前の2006年に誕生し、現在では400万人近い利用者がいる携帯電話版Suicaの「モバイルSuica」とはまた別のサービスであり、Appleと東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)が協力して一から作った全く新しいサービスである。

 同サービスの仕様などに関する詳細は、現時点でまだ詰めているものも多く、不明な点が多い。ただ、JR東日本の取締役 副会長でSuicaの普及に邁進(まいしん)してきた小縣方樹氏に話を伺うことができたので、そこで得た情報も含めて、現時点で分かっている事柄を可能な限り詳細にまとめてみた。

 「(今回の製品発表会は)本当に素晴らしかった。我々どもが協力したSuicaというサービスが講演の中でしっかりと表現されていたのもうれしかったし、Suica以外にも日本に関わる発表が非常に多かったことをうれしく思っている」と振り返る小縣氏。

 iPhoneに搭載されるSuicaは3年前から始まった他の交通系ICカードとの相互運用のおかげで東京だけでなく日本全国に恩恵をもたらすサービスとなっており、「電車やバスに乗るだけでなくショッピングもできるので24時間幅広い利用ができる」と小縣氏は語る。

 「特に強調したいのは――」と同氏は続ける。今回のiPhoneやApple WatchのSuica対応が、「Appleと私どもの連携でSuicaというものを機能としてもユーザーエクスペリエンスとしても最初から作り直したこと。新しいSuicaの体験を一から作り上げたこと」だという。

 一日に1700万人が利用するサービスを提供するJR東日本と、世界で累計10億台出荷したiPhoneを発売するAppleは、どちらも非常に多くの顧客を抱える責任ある企業として共通点が多い、と小縣氏は言う。

 特に「セーフティー、セキュリティー、クオリティ(品質)、そしてカスタマーサティスファクション(顧客満足)、こういうところを求めているところが両社の共通項。どちらの会社も厳しいもの同士ではあるが、今回は連携を密にしてここまで来れた」と話す。

 我々もiPhoneやApple Watchが大好き、と小縣氏は自らのiPhoneやApple Watchを見せながら「日本人が潜在的に大好きで国内で非常に人気が高いiPhone。でも、これまでは会社から支給された定期券をSuicaで使いたいが両方を個別に持ち歩かなければならなかった。今後は迷いなくiPhoneに定期券を入れて毎日会社に通えるようになるので、我々の期待値や想像を超えて喜んでもらえると思う」と胸を張る。

●日本だけの独自サービス

 iPhoneとApple WatchのSuicaは、Apple Payを通して利用することになる。実際の利用イメージは、アップルジャパンの特設サイトに動画をはじめとする利用イメージなどが出ているのでそちらを参照してほしい。これを見れば分かるように、iPhoneやApple Watchで利用できるSuicaは、Appleの電子決済技術、Apple Payに組み込んで使う形になる(この記事では便宜上、“Apple Pay版Suica”と呼ばせてもらうが、これはAppleやJR東日本が認めた呼称ではない)。

 Suicaの話題で隠れてしまいがちだが、AppleはiPhone 7とApple Watch 2でついに日本でもApple Payのサービスを展開する。小縣氏も語っていたように、今回行われたiPhone 7の発表では、10の特徴の1つとして「Apple Pay」を取り上げている。その際、スクリーンに日本の国旗を大写しにし、Apple Payサービスがついに国内で始まることを紹介した。その機能の1つとしてiPhoneにFeliCaを搭載し、Suicaが使えるようになると発表した。

 なお、FeliCaを搭載するiPhoneは日本で発売されるモデルのみで、それ以外の国で購入した型番の異なるiPhoneにFeliCaは搭載されていない。つまり、海外でiPhone 7を買った人が日本国内のSuicaのサービスを利用することはできない。

※記事初出時、「日本で購入したiPhoneを海外のApple Payの支払いに使うことはできない」と説明を受け、そのように記述しておりましたが、その後「利用できる」との連絡を受けました。おわびして訂正します。

●1カード1端末の原則と、1端末複数カードの利便性

 Apple Pay版のSuicaは、iPhone 5以降とペアリングをしたApple Watch Series 2でも利用は可能だ。

 現在、Suicaのカードを使っている人は、iPhone 7やApple Watchを、そのカードに接触させればSuicaの情報がすべて機器側に取り込まれて、Apple Pay版Suicaが使えるようになる(それと同時にプラスチックカード側のSuicaは使えなくなる)。

 ちなみにSuicaのカードを入手(貸与)した際に支払った500円は、iPhoneやApple WatchにSuicaを移行すると自動的にSuicaの残額として加算される。余ったプラスチックカードは手元に置いて保管して欲しいと小縣氏は語る。

 Suicaのカードには番号が記載されているが、この番号のSuicaは1つのカードまたは端末でしか利用できない。つまり、iPhone 7とApple Watchの両方でSuicaを使いたい場合には、それぞれに別のSuicaを登録する必要がある。

 これはAppleの仕様と言うよりは、JR東日本が、世界で最も高速な決済処理を可能にすべくFeliCa/Suicaで採用した仕様で、複数端末で使って残額が狂ってしまうといったことが起きないようにするための防止策だ。

 逆に1台のiPhone、あるいは1つのApple WatchのApple Payに、私用と仕事用。通常のSuicaとSuicaの定期券など2枚以上のSuicaを登録して使い分けることもできる。

 1台の端末に複数のSuicaを登録した場合は、使用するSuicaをApple Payの機能で切り替えられる。Apple PayにはExpressモードという機能があり、一番頻繁に使うSuicaを1枚Express設定しておくと、何も設定を変えずに改札などにタッチした場合はそのSuicaが利用される。

 なお、今回の発表を受けて、SuicaのカードにタッチするだけでiPhone 7にSuica登録情報を取り込めるという手軽さの半面、iPhone 7を使ってSuicaのスキミングができるのではないか、と心配する声があったが、その心配はない。登録の際にはタッチ後に、記名Suicaの購入時に登録した生年月日であったり、Suica番号の下4ケタといった情報を手入力して本人確認の操作が必要だからだ。ちなみに、これまでモバイルSuicaを使っていた人は、モバイルSuicaの機種変更に近い操作でSuica情報を移行できる。

●Appleと共に再創造した新しいSuica

 Suicaへのチャージは、Apple Payに任意のクレジットカードが登録されていればそれを使い、同様の手順で定期券の更新なども行える。

 iPhoneやApple Watchに登録したSuicaのカードは、Walletアプリに登録されて呼び出しが可能になるだけでなく、それとは別にSuica用のアプリも用意されており、このアプリを使って定期券やグリーン乗車券、新幹線などの特急券の購入も可能だ。

 名前などの個人情報を登録していない無記名のSuicaは、仮に紛失してしまうとそのままチャージしてあったお金をあきらめなければならなくなるが、iPhone 7に登録したSuicaであれば、「iPhoneを探す」機能を使って、位置情報を表示したり、音を鳴らして探したりすることもできるし、もう戻ってこないと判断したらApple Payごと無効にしてしまうこともできるので、これまでのSuicaやクレジットカードより安全といえる。

 さらにiCloudを使ったクラウドの同期を使って、新たに買い直したiPhoneには、すぐに登録していたSuicaの情報が復元され、残額も元通りに戻るという。

●将来の国際対応に期待

 小縣氏は「Appleのこの素晴らしいiPhone、それからApple Watch。それに我々が張り巡らせている自動改札、コンビニの電子マネー端末といったインフラの連携は必ず大きな花を咲かせる」と自信をのぞかせる。

 今回の発表は、筆者にとっても感慨深い内容だ。筆者は長年、iPhoneにFeliCaを搭載し、Suicaが使えるようにしてほしいと考え、新型iPhoneの記事を書く度、Appleの開発陣や経営陣に届けとばかりに、Suicaに対応して欲しいという旨の一文を記事中に盛り込んできた。

 2008年ごろには、サードパーティとの協力体制で、それを実現するための“幻の製品開発”に関わったこともある。ラッシュアワーの東京で駅の改札をさばくことができるSuicaの品質は今なお世界に誇れる技術であり、最近、海外で採用が進んでいるNFCでの改札サービスなど、後発のサービスと比べても圧倒的に素晴らしい。この技術に海外の人が触れる機会が増え、その価値が認められれば、このSuicaの決済方法だけでなく、改札なども含めた日本の技術を海外に輸出することにもつながっていくかもしれない。

 いずれは、ぜひともそうなるようにがんばって欲しいと小縣氏に伝えると、Appleとの関係はまだ始まったばかりだが、長期的なものになるとした上で、JR東日本としてももちろん、そうした方向を目指している、と語ってくれた。

 東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、世界から日本を訪れる人たちもSuicaの便利さに触れてもらえることを期待しながら、まずは両社の協力の第一弾として、10月下旬、再創造されたSuicaがiPhone 7とApple Watch Series 2で利用可能になる日を楽しみに待ちたい。

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最終更新:9月9日(金)14時22分

ITmedia PC USER