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ノラ・ジョーンズ、芳醇な歌声で包んだ東京の夜 新作への想いも

MusicVoice 9/8(木) 21:01配信

 グラミー賞11回受賞の米ジャズシンガーのノラ・ジョーンズが7日、ブルーノート東京で「スペシャル・ショーケース」を開催した。これは、10月5日にリリースする通算6枚目アルバム『Day Breaks』の発売を記念しておこなわれたもの。この日の観客はアルバムの購入予約者から抽選によって招待された。ニューアルバムからリードシングルである「Carry On」を含む5曲と、1stアルバム『Come Away With Me』から「Don’t Know Why」の全6曲を披露。「Don’t Know Why」では作曲者であるジェシー・ハリスがサプライズ登場し、ギターを演奏。心地良いジャズサウンドで訪れた観客を魅了した。

■ルーツに戻りながらも新しいベクトルに向かった作品

 新作『Day Breaks』は、前作『Little Broken Hearts』から4年ぶりとなるフルアルバム。9曲のオリジナル書き下ろしと、3曲のカバーを含めた全12曲を収録。本作のプロデュースにはノラ・ジョーンズをデビューから手掛けたイーライ・ウルフとノラ本人が共同でおこなった。レコーディングにはジャズ界の巨匠達が参加、サックス奏者のウェイン・ショーターやオルガン奏者のドクター・ロニースミス、ドラマーのブライアン・ブレイドらを起用している。

 東京・南青山には、抽選で当選した幸運な人たちが、ノラ・ジョーンズの歌声を楽しみに続々とブルーノート東京に集結。お洒落なジャズサウンドをBGMに、アルコールの入ったグラスを片手にノラの登場を待ちわびていた。開演時間を少々過ぎたところで、本日の司会を務めるクリス・ペプラー氏が登場、ノラをステージに呼び込んだ。
 
 ここで、ノラ本人に新作についてのインタビューがおこなわれた。今まではギターで作曲をおこなうことが多かったが、今作はほとんどの曲をピアノで作曲、今までとは違う制作方法を採用したことを話した。なぜ、今まではギターでの作曲だったのかという問いにノラは、「ギターは上手く弾けないんだけど、流暢に弾けない方がクリエイティブになれる」と作曲への意外な方法論を明かした。

 さらに、「今作は1stアルバム『Come Away With Me』のようなジャズの要素が強いアルバムに仕上がっていますがどうでしょうか」という質問に対し、ノラは「ルーツには立ち戻ったと思うけど、1stアルバムとは全然違うと思います。1stはギターで作曲したものも多く、全体的に曲の良さを披露した感じで、今作はもっと前向きな作品に仕上がったと思います」とルーツに戻りながらも、原点回帰を目指したわけではなく新しいベクトルに向かったアルバムだと趣の違いを述べた。

 アルバム参加のミュージシャンを決めたポイントに関しは、BlueNoteレーベル75周年のイベントでウェイン・ショーターやブライアン・ブレイドと演奏して、すごくインスピレーションを受けたことがきっかけで、もう1回共演したいという思いが今作のアルバムにも表れているとも語った。

 そして、作曲には約2年間くらい、レコーディングに6日間と制作期間についても明かした。さらに、二児の母となったノラに、母親とアーティストとしての両立について尋ねると、家庭のことをおこないながらも、「インスピレーションが降りてきたときに作曲している」と述べ、育児とアーティスト活動を上手く両立していることを語った。

■『Day Breaks』から5曲を披露

 そして、ここからライブセクションへ。ステージ真ん中に置かれたグランドピアノの前に座るノラ。貴重なライブは、ニューアルバムのリードシングルである「Carry On」で幕を開けた。ピアノのサウンドに寄り添うようにノラの温かい歌声が、優しくブルーノート東京を包み込んだ。ノラから放たれる、観客の心に寄り添うサウンドによって会場の空気感が目に見えて変わっていくようだった。

 続けて、「It’s A Wonderful TIme For Love」を披露。グルーヴィーなサウンドに、客席のテーブルに置かれているキャンドルがリズムに合わせて揺れているようにも見えた。エンディングのピアノのソロパートでは歌と寄り添っていたピアノが、自己の意志を持った生き物ように、躍動感のあるフレーズで美麗なハーモニーを奏でた。観客もいつまでも聴いていたくなる心地良いサウンドに身を委ねているようだった。

 3曲目は「Tragedy」。前半では叙情的で切ないノラの低音を堪能することができ、後半では押さえつけていた感情を解放したかのようなファルセット(裏声)で、伸びやかな歌声が会場の隅々までに広がった。

 そして、スローバラードの「And Then There Was You」を披露。ピアノ、ウッドベースサウンド、そして、パーカッションが絶妙に絡みつき、時間がゆっくりと進んでいくような心地よい空間が流れた。彼女が織りなす歌声とサウンドは時間軸までもコントロールしているような錯覚を与えさせた。

 バラードから一転して、なんともリズミックな「Flipside」を披露。先ほどまでとは違い、力強いフォルテな歌、そして、シリアスでスリリングなピアノの和音で、アルバムの多彩な世界観の一端を聴かせた。

 ここでノラは、米歌手のキャンディス・スプリング(Kandace Springs)とともに来日している、「Don’t Know Why」の作曲者、ジェシー・ハリスをステージに呼び込む。ギターを抱えるジェシーとともに始めたのは、1stアルバム『Come Away With Me』からの代表曲「Don’t Know Why」。二児の母となり包容力を増した芳醇なノラの歌は、更にこの楽曲を新たな次元に進化させていた。ライブならではの歌のフェイクも音源とはまた違った味わいを醸し出し、母親の胎内で包まれているような、安心感のある甘い歌声で観客を魅了しライブの幕は閉じた。

 ショーケースは全6曲。アルバムへの期待感をさらに高める夜だった。新曲たちからはノラも話していたように、ルーツを感じさせながらも前向きな現在のノラ・ジョーンズサウンドで満ちていた。今作も名盤となりえるポテンシャルを存分に秘めた心地の良いサウンドは、この日訪れた人の最後の拍手の大きさが物語っていた。(取材・村上順一)
 
■セットリスト

ノラ・ジョーンズ スペシャル・ショーケース
9月7日 ブルーノート東京

01.Carry On
02.It's A Wonderful TIme For Love 
03.Tragedy 
04.And Then There Was You 
05.Flipside 
06.Don't Know Why

最終更新:9/8(木) 21:01

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