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なぜUAE戦の先発は大島僚太だったのか?W杯最終予選序盤の苦戦を招いたハリルホジッチ采配

GOAL 9月9日(金)17時58分配信

序盤にオマーンとヨルダンに連勝し、その貯金が最後に利いた2014年ブラジル・ワールドカップ最終予選同様、今回の2018年ロシア大会最終予選も最初の2連戦でスタートダッシュを見せたかった。

ところが、日本代表は肝心のホーム初戦のUAE戦(1日=埼玉)を1−2で落とすという最悪の出だしを余儀なくされた。続く第2戦のタイ戦(6日=バンコク)は地力の差を示し、原口元気(ヘルタ)と浅野拓磨(シュツットガルト)の得点で2−0で勝利したものの、現段階では勝ち点3のグループB3位にとどまっている。10月には勝ち点6で首位に立つオーストラリアとのアウェー戦も控えていて、全く息が抜けない状況だ。

98年フランス大会から5回連続でワールドカップ本戦への出場権を確保している日本にとって、最終予選初戦での黒星というのは過去にない出来事だ。その間、初戦で敗れたチームが本大会への出場権を獲得した例もアジアでは皆無ということで、いかに重大なミスを犯したかよく分かる。

初戦の敗因をカタール人のアルジャシム主審の不安定なジャッジに求める声も少なくないが、2失点した場面は日本のミスがきっかけになっている。その2つの場面にヴァイッド・ハリルホジッチ監督が抜擢した新戦力・大島僚太(川崎)が絡んだことも、見逃してはいけない点だ。

■大島起用への疑問…大舞台でスタメン抜擢の是非

そもそも「指揮官はなぜA代表未経験の大島をスタメンに選んだのか」という疑問は、今も残る。

2015年3月の就任以来、ハリルホジッチ監督は新戦力の起用に慎重な姿勢を貫いてきた。岡田武史監督(現FC今治代表)時代の2010年1月のイエメン戦(サナア)でA代表デビューを果たし、アルベルト・ザッケローニ体制時代に出場歴のある柏木陽介(浦和)を昨年10月のシリア(マスカット)、イラン(テヘラン)の2連戦で呼び戻した時も、イラン戦の後半26分から送り出して様子を見るところから始めた。

大島と同じリオデジャネイロ五輪世代の浅野拓磨(シュトゥットガルト)も比較的プレッシャーの少ない昨年8月の東アジアカップ(武漢)でテストし、今年6月のキリンカップ(ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ)でも起用して、能力を確かめてから定着させた。「私の代表には序列がある」という発言に象徴される通り、彼は実績のない選手をごぼう抜きで先発に据えることを好まなかったはずだ。

にもかかわらず、極めて重要なUAE戦で大島の起用に踏み切った。1つの理由は柏木の負傷だろう。初戦を先行逃げ切りの形に持ち込むため、長谷部誠(フランクフルト)のパートナーに攻撃の起点になれるタイプを置きたかったのではないか。そこで柏木をファーストチョイスにしていたが、彼が左内転筋痛でプレー不可能となり、大島が急浮上した。リオ五輪本番で鋭い縦パスから攻めのスイッチを入れ、所属の川崎フロンターレでも前線の大久保嘉人、小林悠らを堂々と動かしている彼なら十分やれると判断し、指揮官はピッチに送り出した。

けれども、いきなりの大舞台は、やはり大島には重すぎた。コンビを組む長谷部にとっても、一度も公式戦でプレーしていない選手とベストパフォーマンスを見出すのは困難だ。2人が揃って前へ前へと行き過ぎた結果、日本は守備のリスクマネージメントが疎かになり、UAEにスキを与えてしまった。

■混乱を招くハリル監督の発言

大島に代わってタイ戦で先発した山口蛍(C大阪)は、再三にわたるボール奪取と的確なポジショニング、攻撃のスイッチを入れる小気味いいパス出しで中盤の安定化に大いに寄与した。長谷部も「蛍に関しては、とにかくボールを奪いに行く力があるし、今日はそこでかなりチームに貢献していた」と絶賛するほど、絶大な存在感を示していた。このパフォーマンスを見るにつけ、「初戦は山口でよかったのではないか」という意見も数多く聞かれた。

ハリルホジッチ監督がそうしなかったのは、山口のJ2復帰という決断に対し、自身が苦言を呈したことが引き金になったのではないか。

25歳のダイナモがわずか半年でドイツ・ハノーファーから古巣・セレッソ大阪に戻った際、指揮官は「今の状況ではA代表の先発になるのは難しい」とバッサリ切り捨てた。そこまで酷評した選手を舌の根も乾かないうちに最終予選の初戦でスタメンに据えれば、「あの監督はブレている」と言われかねない。そんな計算もどこかにあって、山口を送り出せなかったと見る向きもある。

金崎夢生(鹿島)をチームから外した一件でも、わざわざ「あの態度は許せない」と8月25日のメンバー公式会見で語気を強めたが、それも不要なコメントだ。ハリルホジッチ監督は選手や関係者を混乱に陥れるような不要な発言は慎んだ方が身のためだろう。

いずれにしても、勝負のかかった重要な局面で大島を使うつもりがあったなら、少なくともキリンカップでテストしておくべきだった。タイ戦でゴールという結果を出した浅野にしても1トップでの先発は全く初めて。何とか得点したからよかったものの、チームマネージメントとしては非常にリスキーだった。

こうした選手起用を1つ1つきちんと検証して、周囲を納得させられるような采配をしなければ、今後も同じような混乱が起きる可能性は大いにある。年内の残り3戦で2位以内に浮上しなければ、中東でのアウェー戦が続く2017年の残り5試合は相当厳しくなる。もはや失敗は許されないことを、ハリルホジッチ監督には肝に銘じてもらいたい。

取材・文=元川悦子

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最終更新:9月9日(金)17時58分

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