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はしか、結核、梅毒…忘れ去られた病気はなぜ広がった?

日刊ゲンダイDIGITAL 9月9日(金)9時26分配信

 海外と日本を行き来する人の数が急増している。政府観光局によると、7月の訪日外国人数は229万人。前年同期比19.7%増で過去最高となった。一方、出国した日本人数は142万7000人で、こちらも前年同期比8.9%増となっている。そこで注意しなければならないのは、外国から持ち込まれる「輸入感染症」だ。

 先月発覚した関西国際空港での麻疹(=はしか)感染騒動は拡大する一方だ。6日までに関空従業員を中心に医師や救急隊員ら35人が発症。そのうちの1人は泉佐野市のショッピングセンターを訪ねていたことが判明し、さらなる感染拡大がささやかれている。「日本医師会感染症危機管理対策委員会」委員を務めた熱帯医学専門医で、「おおり医院」(神奈川・足柄上郡)の大利昌久院長が言う。

「日本はかつて麻疹の輸出国として有名でした。ところが、麻疹・風疹混合(MR)ワクチンの2回接種が始まり、患者数が激減。世界保健機関(WHO)も昨年、“(日本は)排除状態にある”と宣言したばかりでした」

 今回、感染が拡大している麻疹ウイルスは、海外から持ち込まれたのは明らかだ。どこから持ち込まれたのか。

 WHO西太平洋事務局によると、今年4月20日現在の人口100万人当たりの麻疹発生率は、多い順に、モンゴル2861.9、マレーシア70.4、中国24.0、シンガポール9.8と続いている。

「詳しい感染経路は分かりませんが、騒動前に発表された渡航歴のある麻疹患者の届け出状況を見ると、渡航先はモンゴルよりインドネシアが多い。今回、関空を利用して帰国し、千葉県内の外国人ミュージシャンのコンサート会場で複数の人に感染させた男性はバリ島に旅行していました」(都内の開業医)

■「多剤耐性結核菌」本格上陸は時間の問題

 輸入感染症といえば、定番は毎年100人近くの日本人が罹患する「マラリア」や「肝炎」「狂犬病」「破傷風」など。ところが、このところ「日本では忘れ去られた感染症」が全国で散発しており、海外からの持ち込みがささやかれている。

 そのひとつが結核だ。欧州で「白いペスト」と恐れられた結核は、抗結核薬の登場で、日本では過去の病気となりつつある。実際、「平成27年結核登録者情報調査年報集計結果」(概況)によると、日本の新登録結核患者数は1万8000人と減少傾向にある。

 複十字病院呼吸器科の元部長で「水谷内科呼吸器科クリニック」(東京・練馬区)の水谷清二院長は言う。

「その多くは高齢になって発症する“内因性再燃”の患者さんです。過去に結核菌に感染し、自身の免疫力によって菌を肺の中に抑えていたが、高齢化や病気などで菌が暴れ出しているのです」

 ところが、世界に目を転じると結核は最も死亡者が多い病気だ。2014年には960万人が罹患、150万人が死亡している。とくに中国や韓国では猛烈な勢いで増えているという。

「韓国では今年結核が流行しており、病院や幼稚園での感染が報じられています。怖いのはどんな薬も効かない多剤耐性結核菌で、2014年には世界で48万人が罹患し、19万人が死亡している。その大半は中国、インド、ロシアの患者さんです。日本への本格的上陸も時間の問題ともいわれています」(前出の大利院長)

 草食男子の増加で、すっかり忘れ去られた感が強い「梅毒」も、要注意だ。国立感染症研究所のデータによると、2011年に827人だった感染者は今年7月に2000人を超え、年内4000人との見方も浮上している。弘邦医院(東京・江戸川区)の林雅之院長が言う。

「感染力の強い新型梅毒が登場したわけではないので、感染拡大は外国から持ち込まれた可能性も否定できません。梅毒は世界的に増えています。いまのように防疫体制が整わないまま人の出入りだけが増え続ければ、日本は感染症が蔓延することになりかねません」

 これからは、忘れ去られた感染症に強いベテラン医師を知っておくことが大切かもしれない。

最終更新:9月9日(金)12時14分

日刊ゲンダイDIGITAL