ここから本文です

D・ルイス、チェルシー帰還の裏側とチームにもたらす変化とは?3バック挑戦と情熱注入への期待

GOAL 9月9日(金)21時45分配信

突然訪れた“アイドルの帰還”は、スタンフォード・ブリッジの住人たちを心底驚かせた。移籍マーケット閉幕間際まで話題にすら挙がらなかったチェルシーへの復帰が実現した背景とは何だったのだろうか? 彼の加入によって訪れるチームの変化とは?

現地在住の“チェルシー狂”がレポートする。

■“アイドル”の帰還

移籍マーケット最終日に念願だったセンターバックの獲得が実現した。だが、彼が“帰ってくる”ことを予想できた者は、ほとんどいなかったはずだ。

チェルシーは8月31日、パリ・サンジェルマンからブラジル代表DFダビド・ルイスを3年契約で獲得した。移籍金は明らかになっていないが、『BBC』の報道によると、3400万ポンド(約48億円)前後。2年前に惜しまれながらブルーズを去っていったアイドルが、早くもスタンフォード・ブリッジに戻ってきた。

この発表に多くのファンが驚かされた理由は、移籍の可能性がマーケットの締め切り直前になって突然報じられたからだ。「センセーショナル」と見出しを付けられた唐突な報道は、数あるゴシップネタの一つに過ぎないと考えられていた。

しかしながら、“帰還”は現実になった。移籍市場の閉幕間際、再びブルーのユニフォームを手にし、笑顔を浮かべるルイスの姿が、世界中を駆け巡ったのだ。

■もともとターゲットではなかった

どのような経緯で今回の移籍劇が生まれたのか? 兼ねてからセンターバックを獲得する必要があると訴えてきたアントニオ・コンテ監督もまた、この展開は予期していなかったようだ。

レオナルド・ボヌッチ、マルキーニョス、カリドゥ・クリバリ、アレッシオ・ロマニョーリ……。移籍市場開幕直後から、あるいはもっと早い段階から多くの獲得候補が紙面を賑わせた。とりわけクリバリには複数回、オファーを出したと伝えられている。中にはフェルナンド・トーレスを獲得した際に投じた5000万ポンド(約70億円)を上回る額を掲示する可能性を報じたメディアもあった。コンテにとってセンターバックの補強は、それほどの最重要課題だったわけだ。

しかし、肝心のオファーは次々と破談。「クレイジー」と表現した今夏のインフレ傾向を前に、さしもの闘将からも諦めに近い様子がうかがえた。

それでもルイスの代替案が最終盤まで出てこなかったのは、「PSGが売却すると思えず、リストに名前すらなかった」(デイリー・メール)からだ。チェルシーが具体的な動きを見せたのは、実に移籍マーケット閉鎖の48時間前だった。

かくして土壇場で大きな交渉を実らせたチェルシーと、チャンピオンズリーグ出場権がないにもかかわらず古巣への復帰を決めたルイスには、それぞれファンから称賛が集まった。

■3バック挑戦への期待

ルイスの加入によってどのような変化が期待できるのか。多くの現地メディアが着目するのはやはり、「3バックを試すのではないか」という点だ。

周知の通り、コンテはユヴェントスでもイタリア代表でも3バックを軸に戦ってきた。その際に最終ラインの絶対的な主軸となったのが、ボールの扱いに長け、高精度のフィードを供給でき、かつ対人戦に強いボヌッチだった。しかし、チェルシーには同様の役割を担う適任者が見当たらなかった。それどころか十分な数のセンターバックがおらず、4バックを採用せざるを得ない状況にあった。

コンテが頑なに、強く、速く、そして足下の技術に優れた万能タイプのセンターバックを欲していた理由はそこにあると見られる。

急転直下の移籍だったとはいえ、ルイスはそれぞれ求められる能力を高水準で備えた選手だ。彼の加入により、いよいよ3バックを試す準備が進められるのではないだろうか。今シーズンのチェルシーは公式戦全勝ながら、ビルドアップの遅さや精度の低さを指摘されていただけに、最後方から攻撃のスイッチを入れられるルイスを組み込むことで状況の改善が期待される。

また元イングランド代表のダニー・マーフィーが強調するのは、彼の突出したユーティリティ性。ルイスは4バック、3バック時のセンターバックに加え、中盤でもプレーが可能だ。監督としては様々なオプションを手元におくことができ、戦術の幅を広げられる。同じく移籍期限間際に加わったマルコス・アロンソの存在もあり、不足していた守備陣の選手層は大きくグレードアップしたと言えるだろう。

■NEXT テリー?

そしてルイスはもうひとつ、「強烈なパーソナリティ」という際立った特性を持っている。移籍決定を受けて、元イングランド代表のマーティン・キーオンは次のような見解を明かした。

「前回の在籍時、彼は人気こそあったが、安定感の低さから頼りになる存在とはみなされていなかった。その印象が強すぎて、どれだけ影響力を持った選手だったか、あっという間に忘れ去られてしまった。しかし、思い出してほしい。彼は最終ラインの真のリーダーだった。今度こそは安定感を発揮しなければならないが、私はパリで過ごした2年の月日が彼を成熟させたと考えている。成長した姿を示すことができれば、ジョン・テリーの正当な後継者として次のキャプテンになることだってできる」

移籍市場閉幕後の初めての土曜日、スタンフォード・ブリッジを訪れ、30人のファンにこの話について聞いた。現状はやはり、守備の安定感への不安からキーオンの意見に対して否定的な声が大半だった(同意3人、不同意25人、分からない2人)。

ただし、振り返るとテリー本人がルイスを自身の後継者候補として挙げたことがある。今回インタビューしたファンも精神的主柱という意味ではルイスを絶賛しており、ピッチ内外で大きな影響力を持つことは誰もが知る事実だ。次のキャプテンになるかどうかはさておき、彼が持つ独特のカリスマ性をチームに注入できることこそ、獲得した最大の利点なのかもしれない。

多くのファンが予想していなかったラストピースは、今シーズンのチェルシーにどう影響していくのか。安定感を欠くルイスはコンテの理想とするタイプでないと見る記者も少なくないが、それらを跳ね除けて最終ラインの屋台骨となることができれば、昨シーズン10位に終わったチームは大きな変貌を遂げられる。想定外の移籍だからこそ、今後の動向から目が離せない。

文=小松 輝仁

GOAL

最終更新:9月9日(金)21時45分

GOAL

スポーツナビ サッカー情報

海外サッカー 日本人選手出場試合