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『F1 2016』の魅力を語る【第4回:ポルノ鈴木】――“本物”と“遊び”の境界線を悠々と飛び越える究極のF1ゲーム

ファミ通.com 9月9日(金)17時1分配信

文:ライター ポルノ鈴木

●遊ぶ人次第でイージーにもハードコアにもなる
 ビデオゲームは、シミュレーターの産物だ。弾道ミサイルやロケットの軌道計算を行う“本気”のコンピューターを使って、オペレーターたちが“遊び”のために作ったプログラムが、その始まりだからだ。つまりビデオゲームも物理シミュレーションも、同じ演算装置から生まれた兄弟みたいな存在であり、どちらも装置の進化と歩んで来たのだ。

 そしていま、レースの世界ではシミュレーターを使うことが当たり前になっている。シミュレーターによる練習が、実際のレースにも“効く”ことが証明されているからだ。グラフィックの解像度やフレームレートの向上、実測データを基に幅や高低差まで再現されたコース、タイヤのインフォメーションが伝わるステアリングコントローラー、挙動を体感できるムービングシート、そしてマシンの空力、四輪のグリップ力、サスペンションの動き、クルマに伝えられる駆動力と、車体に関わる全てをシミュレートしたそれは、実際の様なGこそ掛からないだけで、言葉通りの“仮想現実”を作り出している。

 そして“本気”のレーシング・シミュレーターがそこまで進化したということは、“遊び”であるレースゲームも進化したということ。特定の目的のために専用設計されたシミュレーターに対し、基本的にマルチパーパスで設計されるゲームマシンがどこまで本気の領域に近づけるかという話でいえば、『F1 2016』は相当なレベルにいっていることを実感した。 

 去る8月30日、『F1 2016』のプロモーションを行う生放送が行われ、そこでゲストの片山右京さんと同席させていただいた。昨年『F1 2015』が出たタイミングでも同様の生放送を行われ、すべてのアシストをオフにしたマシンで右京さんが鈴鹿をスムーズに走り抜ける様を観て、プロドライバーがいきなり違和感なく運転できるという『F1 2015』の完成度の高さに驚いたのだが、今年の放送でも右京さんの発言に驚かされることがあった。

 「フロントのダウンフォースが抜けてハンドルが軽くなった」。「ブラインドスポットにいる相手の“圧”を感じる」。これらの発言は、実際のレース時の発言でも、数百万円するシミュレーターで走った後の感想でもなく、7980円[税抜](※)であなたのお手元のPS4、Xbox Oneで遊べる、ゲームを遊んでの話なのだ。
※プレイステーション4のダウンロード版は7100円[税抜](7668円[税込])

 まず前者を解説しよう。これはレース中、衝突によってフロントウィングを破損した後の発言だ。レーシングカーのフロントウィングというのは、走行時に車体に掛かる空気抵抗を利用し、車体を地面に押しつける力(ダウンフォース)を発生させてフロントタイヤのグリップ力を上げる役目がある。それが破損したため、空気の力でフロントタイヤが押しつけられなくなったので、結果ハンドルが軽くなり、グリップ力も低下した、ということなのだ。くり返して言うが、これは7980円[税抜]であなたのお手もとのPS4、Xbox Oneで遊べる、ゲームを遊んでの話だ。

 この右京さんの発言は、本作のシミュレーターとしての物理演算のすごさの、その一端を感じさせてくれる。1台のマシンに対して、エアロパーツの物理的存在、そこに掛かる空気抵抗、タイヤのグリップ力、サスペンションの動き、そしてそれをプレイヤーにハンドルコントローラーを介してインフォメーションする、そのすべてがちゃんと計算されていることの現れだからだ。フロントウィングひとつが壊れただけでこれなのだから、本作のいわゆる挙動面がマシン全体でどれだけ作り込まれているのかがおわかりいただけるだろう。

 そしてじつはもっとすごいのは、後者の発言。これはもはや物理演算云々を超えたレベルの話だからだ。前作でも感じたことだが、本シリーズの相手ドライバーのAIはよく出来ている。ただ単に速く走ろうとするAIではないので、走行ラインがクロスするような事態になってもうまく抜き合い、差し合いが可能になる展開が多い。つまり相手もちゃんと考えて走っているので、キチンとレースができるし、相手を抜く、もしくは抜かれる場面でも、まるでテレビ中継を観ているような、実際のレースさながらの“あり得る”シチュエーションが展開される。

 つまりレースゲームは、どれだけ物理演算を極めてクルマの挙動がリアルになっても、CPUドライバーのAIの出来がよくなければレースにならない。プログラム通りに動くのは無機質であるレースマシンだけでよく、それを操作するドライバーには、さまざまな状況変化に対応出来ることが求められる。このAIの考える力のチューニングこそが、今後のレースゲームに求められる部分なのだが、本作は実在のF1ドライバーが登場するゲームと言うこともあり、そこの作り込みも際立っているのだろう。その表れのひとつとして、元F1レーサーがAIレーサーから“圧”を感じてしまうのだから、これを7980円[税抜]で(略)。

 我々はシミュレーター的な物を“本物”、ゲーム的な物を“遊び”と認識しがちだが、『F1 2016』はそのカテゴリーを悠々と跨いでいる存在だ。マシンの走行アシスト機能を多用し、ライバルのAIレベルも下げればこれはコントローラーで気軽に遊べるアーケードライクな“ゲーム”になるし、走行アシストを減らし、ライバルのAIも上げ、ハンドルコントローラー、ペダル、シートを用意して遊べば、これは“シミュレーター”と呼べるレベルになる。本作から追加されたキャリアモードも、遊ぶ人次第でイージーにもハードコアにもなる。実際のF1レースと同じ周回数でフリー走行、予選、本戦を走ることも可能なので、F1のグランプリウィークを丸ごとシミュレートできるといっても過言ではない。

F1ゲームといえば昔からレースゲームの花形だったが、いまこうして公式ライセンスを受け、『F1』を名乗れるレースゲームはこれだけだ。そしてそれが決して伊達ではないことを、ぜひ手に取って実感してほしい。なんせこれが798(略)。

【バックナンバー】
・『F1 2016』の魅力を語る【第1回:ばしを】――“キャリアモード”の復活でF1ドライバーのバトルをよりリアルに追体験
・『F1 2016』の魅力を語る【第2回:座談会】――レースゲームはここまで進化した
・『F1 2016』の魅力を語る【第3回:座談会】――細かな演出が追加されてよりリアルに
・『F1 2016』の魅力を語る【片山右京氏インタビュー】――本物に近い駆け引きが味わえる

F1 2016
メーカー:ユービーアイソフト
対応機種:プレイステーション4 / Xbox One
発売日:2016年9月8日発売
価格:各7980円[税抜](各8618円[税込])
ジャンル:レース



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※画面は開発中のものです。

最終更新:9月9日(金)17時1分

ファミ通.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。