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Appleの新しいカスタムチップ3種を考察

EE Times Japan 9月9日(金)10時48分配信

■「A10 Fusion」「W1」「S2」

 Apple(アップル)が2016年9月7日(米国時間)に、新製品「iPhone 7/iPhone 7 Plus」「Apple Watch Series 2」「AirPods」を発表した。同社にとって初となる無線SoCをはじめ、新型チップを少なくとも3品種搭載するという。同社の半導体チップ製造能力が一段と強化されていることが分かる。

 Appleにとって、iPhone用アプリケーションプロセッサの開発は、やはり最大かつ最も困難な取り組みだったようだ。「iPhone 7」と「iPhone 7 Plus」に搭載される64ビットの「A10 Fusion」プロセッサは、33億個のトランジスタを搭載するという。

■CPUコアはbig.LITTLE処理構成で4コア

 またA10 Fusionは、ARMのbig.LITTLE処理を採用する。「iPhone 6」の「A9」SoCと比べて40%の高速化を実現する高性能コアを2個と、同じくA9比で消費電力量が5分の1となる高効率コアを2個使用している。さらに、6コアGPUを搭載し、A9のグラフィックスコアに対して50%の高速化を実現するという。

 Appleのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるPhil Schiller氏は、「MediatekやSamsung Electronicsなどのように、8コア以上のアプリケーションプロセッサを手掛けるメーカーもあるが、A10 Fusionは、最強のスマートフォン向けチップだといえる」と主張する。

 Appleは、チップレベルの詳細についてはほとんど明かしていない。このため、A10 Fusionコアは全て独自開発によるものなのか、または一部はARMなどのメーカーから供給を受けているのかということの他、適用されている製造プロセスや、データ伝送速度など、多くの疑問点が残る。

 Appleが最も強調したのは、電力効率の大幅な向上を実現したという点だ。iPhone 7では、iPhone 6と比べて電池寿命を平均で約2時間延長することが可能だという。ただし、デュアルカメラを搭載するiPhone 7 Plusでは、電池寿命の延長は1時間にとどまるようだ。

 また同社は、電池寿命の数値を作業負荷ごとに分けて示している。例えばiPhone 7の場合、フル充電の状態で、インターネット利用は、Wi-Fi使用時最大14時間、LTE使用時最大12時間だという。

■近距離磁気誘導方式?

 今回の製品発表イベントにおける最大のサプライズは、イヤフォンの中にあった。Appleの新型ワイヤレスイヤフォン「AirPods」と、ワイヤレスヘッドフォン「Beats」3品種は、いずれも独自開発チップ「W1」を搭載する。Appleは、W1チップがどのような機能を制御するのかについては詳細を明かさなかったが、表向きは音声再生機能と無線受信機能をサポートするとしている。

 ただ、「Bluetooth」については、Schiller氏の説明や資料の中でも全く触れられていない。ある情報筋は、近距離磁気誘導方式が採用されているのではないかと見ているようだ。これは、過去10年にわたって補聴器に使われてきた成熟技術である。現在は、NXP Semiconductorsの半導体チップにおいて、少なくとも2台のデバイスを同期させるために採用されている。

 Schiller氏によると、AirPodsではBluetoothのようなデバイスペアリング処理が不要だという。

 AirPodsには加速度センサーと光学赤外線センサー、ノイズキャンセリング機能用マイクが搭載されている他、柄(シャンク)には1回の充電で5時間の再生が可能なバッテリーが内蔵されている。充電はインターコネクト規格「Lightning」を介して行う。また、付属の充電ケースを用いて複数回充電すれば、24時間の連続使用も可能となる。

■「S2」も性能向上

 AppleはAirPods以外にも、「S2」と呼ばれるシステム・イン・パッケージ(SiP)を採用した「Apple Watch Series 2」を発表した。S2には、現行モデルに比べ処理速度がそれぞれ1.5倍、2倍となったデュアルコアCPUとGPUが搭載されている。

 Appleは、ある天体観測アプリのデモを披露した。このアプリは、S2を採用したことで従来の5倍(60フレーム/秒)のフレームレートを実現し、より詳細な画像を映し出せるようになった。2016年7月に米国カリフォルニア州サンタクララで行われた「Linley Mobile & Wearables Conference 2016」では、前世代SiPの「S1」がSiPのトレンドの方向性を示す例として取り上げられた。縦26mm×横28mmというサイズのS1には、複数のパッケージング技術が用いられ、30個もの部品が組み込まれている。

 Series 2のディスプレイ輝度は1000カンデラ/m2まで高まったため、直射日光の下でもより快適に使用できるようになった。また、Series 2には初めてGPSが内蔵された。

■ISPの処理能力も2倍に

 Appleは、SoC「A10 Fusion」に用いられることを示唆する形で、新たな画像信号プロセッサ(ISP)について言及した。Schiller氏によると、このプロセッサの処理能力は従来のISPに比べ2倍となり、最大で毎秒100億回の演算を実現するという。Schiller氏はこのISPを「画像のためのスーパーコンピュータ」と評した。

 このISPは、iPhone 7 Plusに新たに追加された機能や撮影モードの実現に貢献した。iPhone 7 Plusでは、搭載した2基のカメラを用いた顔認識や深度図の構築の他、プロ仕様のカメラに匹敵する背景ぼかしができるようになった(ただし、背景ぼかしについてはAppleが2016年10月に発表するソフトウェアを用いる必要がある)。新しいISPはこれらの機能・モードで重要な役割を果たしている。

最終更新:9月9日(金)10時48分

EE Times Japan