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「iPhone 7」日本特別モデルは必然の進化

ITmedia PC USER 9/9(金) 15:41配信

 既報の通り、米Appleは9月7日(現地時間)に「iPhone 7」を発表した。

【SuicaにもなるiPhone 7】

 筆者は2015年に引き続き、サンフランシスコで開催されたAppleのスペシャルイベントに参加したが、歴史をひもといても、これほど「日本」が目立ったiPhoneの発表会はなかった。

●マリオとポケモンがApple製品のキラーアプリに?

 イベントの冒頭では、任天堂の宮本茂氏が「SUPER MARIO RUN」と名付けられた、スマートフォン向けに再設計されたスーパーマリオを披露。通訳を介しての講演ではあったが、全参加者年齢をカバーする幅広いファン層を持つマリオだけに、会場を興奮の坩堝(るつぼ)に巻き込んだ。同アプリは2016年内、iOS向けに先行リリースされる(Android向けの出荷時期は未定)。

 開発元こそNianticとはいえ、日本発のキャラクターが主役のゲーム「Pokemon GO」(以下、ポケモンGO)がApple Watchに対応したことには、「これぞキラーアプリ」との呼び声が高い。Nianticの出自が、Googleの社内ベンチャーだったことを考えるとなおさらだ。

 Apple Watch対応のポケモンGOでは、ポケモントレーナーのステータス管理やタマゴの状態、ポケストップのアイテム取得、それにポケモンを発見した際の通知をApple Watch経由で行える。すなわち、ポケモンを探す際にスマートフォンの画面を見なくても済むよう配慮されている。

 細かな実装については説明されなかったが、このアプリのアナウンス直後にAppleは「Apple Watch Series 2」を発表した。新モデルにはGPSが内蔵されるため、Apple Watch単体でポケモンGOのアプリが走るようになるかもしれない。

●日本モデルのみFeliCaに対応

 そして極め付きはFeliCaへの対応だ。

 iPhone 7とApple Watch Series 2へのFeliCa搭載は、日本市場に出荷されるモデルのみに限られる。対応バンドが同じ海外版のiPhone 7を購入しても、FeliCaは内蔵されていないので注意が必要だ。一方で、それだけ強く日本市場にコミットして、FeliCaへの対応を行ったと考えられる。

 なぜなら、単純にFeliCaに対応できるLSIやアンテナを内蔵したとしても、望み通りに「おサイフケータイ的なアプリ」が使えるわけではないからだ。おサイフケータイの枠組みは日本の携帯電話向けサービスから始まり、極めて独自に発展してきた経緯がある。

 単純に国際標準にのっとって必要なハードウェアをそろえるだけではなく、アプリケーション、サービスを提供する側との密接な協力がなければ実現できない。

●やはり高い完成度を誇るiPhone 7

 発表会を振り返り、そして製品に実際に触れてみて感じるのは、その高い完成度だ。

 これまで指摘されてきた防水、防塵(ぼうじん)機能も含めて弱点をつぶしてきた一方、元より得意分野だったカメラをさらに磨き込んだ。こればかりは実際に撮影してみなければ正確な評価は下せない。

 とはいえ、ハンズオンでの撮影やサンプル写真などから判断するに、低照度時の画質向上、また明所における細かな情報量の増加、立体感の増加、それに明部、暗部に宿るディテールの深さやコクのある発色など「写真を生み出す装置」としての完成度は確実に高まっている。

 イヤフォン端子を排し、Lightningに集約したオーディオ機能に関してもさまざまな議論はある。しかし、電話交換手が使っていた交換機用プラグをアレンジした端子を今後も使い続けるより、デジタル出力やワイヤレスでの接続など、使用感、機能の両面で今後の進化が望める形で実装し直し、空間利用効率が向上したぶんを他の用途に割り振るという判断も筆者は肯定的に捉えた。

 手持ちの高級イヤフォンがアダプター経由でしか使えない、あるいは自撮り棒のシャッターボタンが使えないなど、短期的には大いに不満が出てくるだろうが、恐らく1年後にはほとんど不満の声が出なくなっているのではないか。

●新しいiPhoneの始まり

 こうした例を含め、さらに製品全体の整え方をあらためて俯瞰(ふかん)して感じるのは、「“iPhoneが変えた10年”に合わせて再調整された新しいiPhoneの始まり」ということだ。

 筆者はiPhone 7発表前のタイミングで、「iOS 10はiPhone自身が変えてしまった世の中に合わせ、基本ソフトであるiOSを再設計、再調整したものだ」というインプレッションを書いたことがある。

 この再調整の範囲はmacOSにも及んでいる。iPhoneがコンピューティングの在り方を変えたがゆえに、あらゆるパーソナルなコンピュータの在り方に微調整が必要な時期になっているということなのかもしれない。

 例えば、iOS 10の写真管理では顔識別による人物写真の管理が用意されている。これまでもパソコン側の顔識別機能やクラウド側の顔識別機能と連動させることで管理する機能は一般的だったが、iOS 10はデバイス単体で顔識別を行うようになった。

 こうした写真の自動分類は撮影場所でも可能だ。Siriで「ビーチ」と言えば砂浜が写った写真を、バースデーケーキと言えばそれらしき写真を探し出す。「山」と言えば山の風景が出てくる。これまで思い出せなかった写真まで見つける再発見をもたらす機能だ。

 しかし、見方を変えれば携帯電話のカメラが進歩し、補助的な使い方から思い出を記録する、ライフスタイルを演出する重要なツールになったうえ、ユーザーが以前よりもカジュアルに大量の写真を撮影するようになったことで、デバイスそのものに写真の自動分類や顔識別機能を求めるようになった……ともいえるだろう。

 写真の分類だけならば、「たまたま今回搭載された」といえるだろうが、上記のような視点でiOS 10を俯瞰すると、iPhone自身がもたらした時代の変化に合わせ、iOSの設計や思想が古くなりつつあった部分を再調整、再設計して作り直したという印象を持った。

 メッセージアプリの改良も、さまざまなメッセージ交換ソフトが持つ機能を取り入れただけにも見える一方、スマートフォンの普及によってアニメーションスタンプなど、リッチなメッセージ交換を誰もが使うようになり、結果的にiOS標準のメッセージに取り込まれたともいえる。

●それは必然の進化か

 スマートフォンの発展はiPhoneがリードしてきたが、Appleが必ずしも全てのジャンルを先導してきたわけではない。いろいろなアプリ開発者や周辺デバイスの発明者のアイデアなどが、繰り返し次のiPhoneが進む方向を示し、それに応じてきたことで今のiPhoneがある。

 全てが計画的ではないぶん、世の中の変化、ユーザーの社会における行動の変化への追従、あるいは社会インフラとの密接な連携などが、2017年で10年を迎えるiPhoneにも求められるようになったのだと思う。

 このようにして見ると、かつて世界中で1つのモデルしか用意されていなかったiPhoneが、日本市場向けの特別なモデルを提供したり、Apple Payに限らず社会インフラと密接につながる製品やサービス、ソフトウェアの枠組みを目指すというのは必然だろう。

 そこにはジョブズ時代のような革新者としての魅力は薄いかもしれないが、一方で完成度を高めるという意味では必要なことでもある。Apple自身が「熟成を重ねた」結果が、今のスマートフォン時代であるのなら、徹底して完成度を高め、今の時代に合わせて再調整を図った新しいiPhoneとiOSは、最も買い時といえるのかもしれない。

 もちろん、従来の使い方の範囲を逸脱するほどの大手術が行われているという意味ではない。しかし、どんなに新しい先進的な提案も、時代が変化し、ユーザーを取り巻く環境が変われば、いつしか古さを感じるようになるものだ。Appleの場合、自身が生み出した商品や技術によって世の中を変えたのだが、それが結果的に自らの提案を過去のものにしている。

[本田雅一,ITmedia]

最終更新:9/9(金) 15:41

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