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【広島】「万年Bクラス」カープが巨人を破り初優勝…1975年後楽園で赤ヘルフィーバー

スポーツ報知 9月10日(土)10時2分配信

◆巨人0―4広島(1975年10月15日・後楽園球場)

 広島の25年ぶりのセ・リーグVが迫ってきた。数年前から“カープ女子”なる言葉がはやり、地元・マツダのみならず、東京D、神宮、横浜と首都圏の球場の外野席も、広島戦開催時は真っ赤に染まっている。今から41年前、現在を上回るほどの赤ヘルフィーバーが日本列島を席巻した。球団創設26年目での初優勝。歓喜の瞬間は1975年10月15日、後楽園球場での巨人戦で訪れた。万年Bクラスと揶揄(やゆ)された広島が巨人を破って決めた一戦を改めて振り返る。

【写真】祝勝会で古葉監督は山本浩二ら選手からビールを何度もかけられた

 夕闇迫る後楽園球場。時刻は午後5時18分だった。広島のマウンドに立つのは金城。左打席に入った巨人・柴田が流し打った打球が、左翼の水谷のグラブにおさまる。ついに、ついにこの瞬間が来た。

 三塁ベンチを飛び出した古葉監督の背中にシェーンが飛び乗る。先発した外木場が、先制適時打の大下が、そして、主砲の山本浩、衣笠が抱き合い、肩をたたき合う。さあ、胴上げだ。ワッショイ、ワッショイ! 古葉監督の背番号72が宙を舞う。外野席からなだれ込んできた赤ヘルファンが、今度は山本浩を胴上げだ。

 「うれしいです…」

 お立ち台に上がった古葉監督は、こう言うと言葉を詰まらせた。

 「広島からたくさんのファンの方が応援に来てくれて…全国のファンの方が…」

 大拍手、絶叫を背にしながら、それだけを言い残して、指揮官はお立ち台を下りた。時に午後5時26分だった。

 ▼試合前

 巨人V9の舞台であった後楽園球場。しかし、この日は赤ヘル応援団に埋め尽くされた。1年前の74年10月14日。この球場で“ミスタープロ野球”長嶋茂雄の引退試合が挙行された。その長嶋が監督となった巨人は、この年、球団史上初の最下位に沈んだ。この日は完全に広島の引き立て役。「巨人はなんぼ勝っても優勝できんのやから、拍手してつかあさい。巨人は来年優勝すりゃあいいんじゃけえ」。広島の応援団が、こう言って巨人ファンに頭を下げた。

 打撃練習では、選手のバットから快音が響く度に、三塁側、左翼席の広島ファンがしゃもじを打ち鳴らした。こいのぼりや吹き流しが何本もスタンドで揺れる中、午後2時のプレーボールを迎えた。

 ▼1回

 巨人先発は新浦。大下、三村、ホプキンスが三者凡退。広島は自身のシーズン20勝をかけて外木場が先発。巨人も柴田三振、土井遊ゴロ、淡口三振に終わる。

 ▼5回表

 先頭・水谷が左飛。1死後、道原が失策で出塁。打球は三塁を守るジョンソンのグラブをすり抜けて、左翼線に転がっていった。巨人は長嶋監督、王、土井が「今のはファウルだ」と三塁の岡田塁審に抗議したが、判定はそのままだった。続く外木場は右飛に倒れて、打席には大下が入った。2ボール2ストライクから、左翼の淡口を襲うライナー! フェンス直撃の二塁打で道原がかえり、先制点を挙げた。

 ▼6回裏

 一塁側の2階席で広島、巨人ファンの小競り合いが発生。G党が「大きな顔するなよ」と声を掛けたことからつかみ合いが始まったが、警備担当の警察官が割って入った。

 先頭・柴田が右前安打。1死後、淡口が右中間に二塁打。王敬遠で満塁となった。しかし、続く末次は二―遊―一の併殺。絶好機を潰してしまった。

 ▼8回表

 巨人は倉田を投入。衣笠三振。6番・シェーン右前安打。古葉監督は代走に深沢を送り、次打者・水谷との間でヒットエンドランを敢行したが、右飛となり、帰塁できなかった深沢もアウトで追加点を奪えなかった。

 ▼9回表

 広島の1―0という緊迫した展開のまま、ついに最終回に。巨人は倉田から小川邦にスイッチ。先頭・道原左飛。次打者は8回途中から外木場に代わっていた金城。右前にポトリと落ちる安打で出塁した。大下は初球を一塁線にバント。王、小川邦ともに意表を突かれたのか、打球処理ができずに一、二塁となった。

 「あのバントはサイン。一塁側にやれ、と(古葉)監督に言われたんだが、なぜ、一塁側にやるのか分からなかった。セーフになって初めて、王さんが下がって守っていて、バントに無警戒だったことが分かった。こんな熱気の中でも、監督が冷静に戦況を見ていることを教えられた」。大下は試合後、こう振り返っている。

 続くは3番・ホプキンス。左打者に対して、長嶋監督は左腕の高橋一を送り出す。簡単に2ストライクを取ったが、そこからボールを連発してフルカウント。投じた1球はど真ん中に入り、ホプキンスはこれを右翼スタンドに運んだ。これで4―0。本塁に戻ってくるホプキンスに山本浩、シェーン、古葉監督が抱きついて出迎えた―。

 胴上げの後、山本浩はロッカーに戻り、声を上げて泣いた。すると、雑賀マネジャーから「グラウンドでインタビューがある。行ってくれ」と声を掛けられた。グラウンドに出て、お立ち台の上に立ち、三塁側スタンドに向かって両手を上げた。涙が止まらない。「コウジ! コウジ!」。赤ヘルファンの大合唱に、何度も両手を上げて背番号8は応えた。

 【参考】報知新聞(1975年10月16日付紙面)別冊週刊ベースボール「赤ヘル軍団栄光のV1」(75年12月1日発行)「オフィシャル・ベースボール・ガイド1976」

最終更新:9月10日(土)10時30分

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